属性反射鉱石
「にゃっ! そ、それは……!」
俺はホームに戻ると、加工屋に加工してもらった属性反射鉱石をフィーリアに見せる。
予想通りとても驚いてくれた。それもそのはず、岩石砂漠を守っていた部隊はかなりの数だったからだ。
「はー……やっぱりコウは凄いにゃあ」
「いや、俺が凄いんじゃなくて、マーメイドクイーンさんの加護武器と、それを使ったランカーたちが凄いだけだよ」
「いや、マーメイドクイーンという上位種とつながりがあるのも、強い人間たちとつながりがあるのも、コウの人脈という力だと思うにゃー」
「そうかな……?」
「普通、そういった人たちとはそうそう知り合えないにゃ」
「そうかも……」
タケルはリア友だったから置いといて、タイガさんは偶然だったし、そこからアルテミスさんと知り合って、クイーンドリアードさんと続いて……。
いやはや、現実は小説より奇なりとは言うけど、本当に偶然の連続って怖い。
「コウには人を惹きつける何かがあると思うんだけどにゃー。ちょっとお人好し過ぎる感じはあるけど、にゃーはそういうとこが好きにゃ。……ん? どうかしたかにゃ?」
「……いや、面と向かって好きって言われるのはちょっと照れるので……」
「ふーん……ま、ここにいるみんなは全員コウが好きでついてきてるから、誇っていいと思うにゃ」
「あ、ありがとう……」
うーん、そんな160キロの直球をど真ん中に投げられるとこそばゆいな。
ここは話題を変えていこう。
「──ところで、この属性反射鉱石って加工しづらいと思うんだけど、フィーリアたちはどうしてたの?」
「んー…………まあ、いいかにゃ。コウは木を加工できるスキルを持ってるじゃないかにゃ?」
「ああ、『チェンジプラント』のことかな」
「それと同じようなスキルがあるから、それを使って加工してたにゃ。コウの鉱石を加工した人も、たぶん同じスキルを持ってるんじゃないかにゃ?」
なるほど、加工屋さんは手作業じゃなくて、スキルで鉱石を加工していたのか。
中には手作業でやる人もいるかもしれないけど、スキルで加工するのが一般的なのかな。
「なるほど、今度聞いてみるよ。ありがとう」
「お礼はちゃんとモノで欲しいにゃぁ。……にゃーんて……」
「ふふふ、そう言うと思って……」
「にゃっ!」
俺がアイテムボックスからエインズの町で買った食べ物を出すと、フィーリアの尻尾がピーンと直立して驚きを現している。
ちなみに、今回はパンにソーセージを挟んだ、いわゆるホットドッグだ。
そして、その美味しそうな匂いに釣られたのか、他のみんなが集まってくる。
「……もちろん全員分用意してあるから、ケンカしないで仲良く食べてね」
「きゅー♪」
「あ、ボクは食べきれないから、その分はコウが食べてくれる?」
「もちろん。あ、スコールにあげてもいいかも」
「がうー!」
……さて、みんなとの食事が終わったら話を聞きに行ってみようかな。
俺も鉱石を加工できるようになったら、いろいろ試したいことがあるし。
**********
「どうも。かなり盛況なようですね」
「ああ、まさかこんなに属性反射鉱石が見つかるなんてな……しかも、採掘場所を発見したのはお前さんたちって言うじゃねえか」
「ま、まあ偶然ですけどね」
「おかげ様でどんどん属性反射鉱石の加工ができて楽しいぞ。順番待ちになるほど持ち込まれてるしな。……これは何か礼をしないとな……」
「……あ、それでしたら……」
渡りに船。俺は鉱石の形を変えるスキルについて、加工屋さんに聞いてみることにする。
「んー……なるほどな。ちょっと親方に聞いてみるから、待っててくれ」
あれ? この人が親方ではなかったの……?
熟練の職人、って感じだったんだけど。
しばらく店頭で待っていると、奥から白髪の男性が出てきた。
親方と言われていたので鋭い眼光の人を想像していたんだけど……柔和そうなご老人だ。
ただ、人は外見では分からないからな……。
「初めまして、俺はコウと申します。こちらの加工屋さんにはよくお世話になっております」
「うむ、よぉく聞いておるよ、珍しい鉱石をよく持ってくる面白い客人がおるとな」
「そ、そうなんですか」
確かにクイーンドリアードさんからもらった虹色の鉱石だったり、深水の鉱石だったり、今回の属性反射鉱石だったり……よくよく考えたら本当に色々持ってきてたな……。そりゃ噂にもなるか。
「……さて、コウ殿。お主は何のために鉱石加工のスキルを欲する?」
「それは……」
単純に属性反射鉱石を加工したい、というのもあるのだけど。
鉱石を自由に変形できるのなら、更にものづくりの幅が広がるのが大きい。
今までは木がメインだったけど、それに石も加えることができるからね。石垣を造ったり、日本庭園っぽいものを造ったり……滑り台を石で造れば強度も上がりそうだし、本当に色々と応用ができそうだ。
「もっと、ものづくりを楽しみたいから、ですかね」
「……」
「…………」
あ、あれ? 2人とも黙っちゃった?
俺、ヘンなことでも言ったのだろうか。
「はっはっは、冒険者のコウ殿がそう言うとは思っておらんかったわい。より強い武器を、より強い道具を……などと言うと思っていたが……」
「そういえばこどもたちに遊具を提供してくれたのもお前さんだったな。なるほど、お前さんらしい答えだ」
「……よかろう。それでは儂がスキルを教えてやろう……と言いたい所なんじゃが、属性反射鉱石の加工待ちの行列が絶えなくてな」
「オレたち総出で対応しても足りなくてな……1日で加工できる量も限られてるのに、加工待ちはどんどん増えているんだ」
……あー、はい。俺たちのせいですね。
そりゃあ珍しい鉱石が見つかった直後はみんな掘りに行くよね。俺だってそうする。
なんとか解決してあげたいところだけど……。
「加工スキルの消費MPがかなり高いんですか?」
「まあそれはあるな。オレの場合、MPは1000ほどあるんだが、消費MPは加工素材によって違うし、属性反射鉱石は1回の加工で50消費するんだ。親方はもっとMPがあるんだが……それでも足りてないな」
「なるほど、ありがとうございます」
……なんかケタの違うMP量なんだけど……。
もし、イベントのエインズの町防衛戦をプレイヤーが失敗した場合、こういう町人の中でも強者の人たちによって守られてたのでは……と考えてしまう。
……さておき、MPが4桁にもなると、普通のマジックポーションでは回復が追いつかないし、ベッドで8時間休んでの自然回復が主になるだろうな。そもそも、アイテムを使っていたら儲けが出ないだろうし。
それなら……。
「では、これを提供させて頂きたいのですが……」
「これは……MPが400回復するEXマジックポーション?!」
「それにこっちは……最大MPの35%を回復する……じゃと?!」
「これらを使えば回転率が高くなると思うのですが……いかがでしょうか?」
「いやいや、確かにそうだが……お前さんに利益がないだろう?」
確かにEXマジックポーションは貴重なんだろう。でも、俺はスキルはそれ以上に貴重だと思う。
「いえ、貴重なスキルをご教授頂けるんです、これぐらいはさせてください」
「ふふ、スキルにそこまでの価値を見い出すか……よかろう、一日でも早く終わらせて伝授すると約束しよう」
「あ、もし足りないようでしたら在庫がそれぞれ20ぐらいありますので、お声がけください」
「「は……???」」
俺の言葉に2人が固まってしまう。……やっちゃったかな……?
「……そこまでされちゃあ1日で終わらせるしかないな。なあ、親方」
「ああ、もちろんじゃ」
……その後、本当に2人は加工待ちを1日かからずに終わらせてしまったそうな。
親方さん、いったいどれだけのMP持ちなんだろう……。
**********
「……さて、それでは鉱石の加工スキルを伝授しよう」
「よろしくお願いします」
「それでは儂と掌を合わせるがいい」
「こうでしょうか?」
俺は親方さんと掌を合わせると、親方さんの魔力が俺に流れ込んでくる。
そして……。
【INFO:スキル『チェンジオーア』を習得しました】
「……どうじゃ? 習得はできたか?」
「はい、ありがとうございます! こうやってスキルを伝授することができるんですね」
「うむ、儂も先々代の親方から伝授されたんじゃよ。ただし、伝授するにもいろいろと条件があってな……ま、それは気にしなくともよい。これからコウ殿がどのようなものを造るか、楽しみにしておるぞ」
「はい!」
そういえば以前、バイスさんもノッカーにスキルを教えてもらったって言ってたけど、こうやって教えてもらってたんだな。もう少し話を詳しく聞いていれば、もっと早くスキルの習得方法が分かってたかもしれないな……今後はもっと注意して話を聞くようにしないとね。
さて、こうして俺は鉱石の加工スキルを手に入れたのだが……。
【INFO:NPCからスキルを伝授されたプレイヤーの方が出たため、ヘルプの項目に『伝授スキル』を追加しました】
……あ、全体通知だ。……これ、絶対に掲示板がざわつくやつだな……。
まあ、今はスルーしてホームでいろいろとものづくりをしよう!
**********
「さて、まずは属性反射鉱石を弧のように加工して……と。その次に魔力を籠めて……おおっ!」
今回加工したのは『(』といった感じの弧なのだが、そのままの形の結界が出現するようだ。
自分中心ではなく、前方に結界が出現するのも丸い属性反射鉱石とは違うところか。
同じように『<』という形でも『<』の形の結界が前方に展開し、四角ければ四角い結界が自分中心に展開される。……こういう検証、楽しいよね。
「……あ、それならこういうのは……?」
俺は鉱石を加工して、ドーナツ状にする。今までの傾向からしたら、中心部分に穴のある結界が展開されそうだけど……。
「やっぱりそうなるよね……」
予想通り、中心部分に穴のある結界ができた。
これ、もしかして結界内から穴部分に魔法を放ったら……。
「……ウォーター!」
俺が放った水魔法は結界内から飛び出していく。
そして、次の結界の境目で反射され、俺の所に戻ってくる……のだが、更にそこからも反射され……。
その後、勢いが弱まって地面に落ちるまで、結界内を縦横無尽に飛び回るのだった。
「なんか凄い……けど、使い道が分からない……」
マンガとかで跳弾を敵に当てる凄腕の銃使いがたまにいるけど、そういうことができる人なら使いこなせるのかも……?
その後もいろいろな形を試したが、結局は丸い形が一番使いやすいという結論に至る。……やっぱり、シンプルイズベストなんだなあ……。
そして、俺がホームで検証をやっているうちに他の岩石砂漠が何か所か攻略され、補助魔法を弾く結界が造れる鉱石と、お目当てだった状態異常を弾く結界が造れる鉱石が見つかったようだ。
これでピラミッドの攻略も進むかな? と思って掲示板を覗くと……。
『ようやく状態異常が防げるアイテムが手に入ったな』
『これでピラミッドの攻略が進んで、操られているモンスターが解放できれば……』
『ああ! ラミアちゃんをペットモンスターにできる可能性が……』
『俺としてはリザードマンもいいと思う。2人で前衛やるもヨシ、前衛と後衛を分担するもヨシだしさ』
『夢が広がりんぐだな……ただ、今は鉱石の加工が順番待ちだから、もう少し先になるかな』
『いや、順番待ちなら1日経たずに解消されたぞ?』
『え?』
『もし鉱石の加工にスキルを使ってるなら、MPの回復手段ができたってことか?』
『でもマジックポーションとか使ったら利益が出なさそうだが……』
『じゃあプレイヤーの誰かが待ち解消のためにアイテムを提供したとか?』
『そんな聖人……誰たらしさんなんだ』
『EXマジックポーションの第一人者だしなあ』
『もしたらしさんだったら、それがきっかけで伝授スキルをもらってそう』
『ははは、確かにあり得そう』
……なんでみんなそんなに勘がいいんだよ!
と、ツッコミを入れながらも、俺は鉱石での遊具づくりを始めるのだった……。




