岩石砂漠
「……で、なんでこんなことになってるんです?」
マーメイドクイーンさんのおかげで強い水属性の武器が手に入った。……のはいいのだが。
岩石砂漠に挑むパーティーメンバーが武器を渡した人たち……タイガさん、アルテミスさん、タケルのランカー3人なのもいい。
だけどなんで俺までパーティーに入ってるの?! レベル差があり過ぎる!
「さすがにこんな凄い武器を渡されて、初踏破にコウを入れないのはよくないよな」
「うむ、儂もそう思う。コウ殿のレベル上げにもいいだろうしな」
「大丈夫です、コウさんは私がお守りしますので」
いや、生産職と言う後方支援担当だから、武器やアイテムを提供するのも仕事のうちなので……。
と言って断ろうとしたが、せっかくのマーメイドクイーンさんの水属性ハンマーを使う人が俺以外にあまりいないらしい。確かに防御の低いワームとかには有効な武器ではあるんだよね。
それに、俺としてもレベル上げができれば最大HPとMPが上がって、ものづくりがより長くできるようになるからありがたいのだけども。
……ということで、結局は俺も同行することになったのだ。
あの後に追加で魔石を納品して、予備の加護武器も持ってきているので準備は万端だ。
なお、今回の同行ペットモンスターはブラウン。レベル上げでスキルレベルも上がり、下記の通りになっている。
【気配消しLv2(パッシブスキル):敵のターゲットにされづらい】
【効果増幅Lv2(アクティブスキル):アイテムの効果が15%アップする。消費MP30】
【威力増幅Lv2(アクティブスキル):武器攻撃の威力が8%アップする(加算)。3回まで重ね掛け可能で、最大24%アップする。消費MP20 効果時間:1分】
これらのスキルが攻略にとても相性がいい。ブラウニーをペットモンスターにしているプレイヤーもまだ少なく、こういった面からでも役には立てそうだ。
ちなみにタケルはクロウ、タイガさんとアルテミスさんは魔女となっている。クロウは風属性なので火属性と相性は良くないのだが、上空から戦況を見極められるため連れてきているとか。
確かに増援が到着したり、シャーマンのリザードマンが伏兵にいたりすると厄介だし、サポートしてもらえるのはありがたいな。
魔女は全属性の魔法が使えるため、水属性の魔法での援護ができるのが強みか。それに、水属性の杖を持ってもらえば威力の底上げも可能だし。
……よし、俺もできる限りのことはしよう。
**********
「……うわあ、やることが……やることが少ない……」
さすが水属性の補正値が+120の武器たちだ。今まではせいぜい+30が限度だったので、その4倍だもんなあ……ブラウンの威力増幅を3積みしたタケルが動き回って敵をなで斬りにしていってるよ……。
アルテミスさんは弓の補正値に更に矢の補正もかかるので、こちらもほぼ一撃でモンスターを屠っている。そして、敵の射程外からの攻撃のため、アルテミスさんにヘイトは貯まるものの、押し寄せる敵はタイガさんが盾で受け止め、そこを後ろからタケルが切り刻んでいく。
もうあの3人だけでいいんじゃないかな……。
俺はほぼブラウンの減ったMPを回復させる係になっている。
威力増幅の消費MPが20、3積みで60、それを3人にかけて180だ。
ブラウンのMPはまだ300なので、MPを200回復させるEXマジックポーションでこまめに回復する。
ブラウンの魔法発動時、ブラウンのMP回復時にモンスターのヘイトがこちらに向くものの、アルテミスさんが寄ってくる敵をことごとく1撃で射貫いている。……ほんと、女の子モンスターが関わっていなかったらかっこいいな……。
そしておよそ15分後、なんと3人で周りの200体ほどのモンスターを壊滅させてしまった。
あの……マーメイドクイーンさん、なんか本当にヤバい武器造ってませんか? 今まで攻めあぐねてたマップを即攻略って……。
しかも初踏破達成のウィンドウで出てきたので、本当に3人だけでクリアしてしまったようだ。マジか。
ちなみにアルテミスさんはラミアには手を出せなかった模様。……アルテミスさんが手を出す、って言ったら別の意味に聞こえかねないが……まあ気にしないことにしよう。
「おい、この武器すげえな……ブラウンの威力増幅3積みしてるとはいえ、敵が本当に紙のようだったぞ」
「こうなると威力増幅無しの場合と比較してみたくなるな……」
「ええ、しかし問題点もあります」
「問題点……ですか?」
「はい。マーメイドクイーンさんの加護があるので、その……マーメイドクイーンさんが傍にいるように感じられて、ついつい鼻血が出そうに……」
「いえ、それアルテミスさんだけですからね?」
「えっ、そうなんですか?????」
アルテミスさんが『そんなことはあり得ません』と言いたそうな感じの不思議な顔をする。どうやら俺たちもそういうのを我慢しているのではと思っていたらしい。ないない。ありません。
『おお……すっげ……』
『これがランカー+たらしさんの力か……』
「いえ、俺ほんとうに何もしてませんからね?」
『普通の人はそんなにEXマジックポーションが潤沢ではないのよ』
『そうそう、それがたらしさんの強いところ』
あー……まあ確かに素材のアルラウネの蜜はレイが提供してくれるし、それを使ってエファがEXマジックポーションに必要なフェアリーシロップにしてくれるし……生産環境は本当に恵まれてるな……。
『それでは採掘班、いっきまーす!』
『掘ってやる! 掘ってやるぞ!』
そして、モンスターがいなくなった岩石砂漠には鉱石採掘班がやってくる。中にはアトラスさんの姿もある。鉱石といえばアトラスさん、って感じはあるしね。クォルトゥス鉱山でめちゃくちゃ鉱石を掘ってたし。いや、今も現役らしいけど。
「よし、それじゃあおれも行ってくるぜ」
「俺は周りを警戒しておきますね。いつ敵の増援が来るか分かりませんし」
「おう、よろしく頼むぜ」
しかしその後モンスターの増援はなく、採掘は順調に進んで行った……のだが、ここにはお目当ての鉱石はなかったようだ。
……それなら何でこんなに戦力を集めていたんだ……? 鉱石とは別のものが……?
「……あ!」
「ん? どうしたのだコウ殿」
「いえ、もしかしたらと思いまして……」
俺はペットモンスターをブラウンからスコールに切り替える。
そしてこっそりアテナさんに頼んでおいた水属性の手袋で、砂漠の熱い地面からスコールの手を保護する。
「スコール、この岩石砂漠の地面を掘ってくれる?」
「がう!」
「……なるほど、ウルフのユニークスキルの穴掘りか!」
「そうです、もしかしたら地下に鉱床があるのかと思いまして」
ダンジョンでも特定の場所で穴掘りをすることによって、隠し階層に行けることがあるのだ。もしかしたらここでもその可能性が……。
『その手があったか!』
『それならオレも協力できそうだ! うちの子を連れて参戦するぞ!』
その後、ウルフがペットモンスターのプレイヤーが続々と穴掘りに集って30分後……。
『あったぞ! 地下への入口!』
『でかした!』
ついに地下への入口を掘り当てることに成功する。
これでお目当ての鉱石が……!
**********
「……よし、出たぜコウ!」
地下にはクォルトゥス鉱山のように採掘ポイントが各所に設置されており、そこで延々と鉱石を掘り続けること1時間……。
ようやくアトラスさんが初の特殊鉱石を掘り当てたようだ。
「しっかし、ハイポーションをがぶ飲みしてようやく1個とはな……これ、使った体力とGに見合った見返りなんだろうか……」
「実際の効果を見てみないと何ともですね……ちなみにどんな鉱石だったんです?」
「ああ、これだ」
「これは……」
アトラスさんが取り出したのは虹色に光る鉱石。以前クイーンドリアードさんに頂いた虹色の鉱石よりも透き通っていて、中で光が乱反射しているのか不思議な光り方をしている。
これはまるで……。
「……ソシャゲでよくある石みたいですね」
「コウもそう思うか……」
『分かるー』
『人やモンスター召喚できそう』
どうやらリアルタイム配信を視聴している人たちも同意見のようだ。
……さておき、鉱石の説明文を見ておきたいところ。
「アトラスさん、アイテムの詳細を表示して頂いても大丈夫ですか?」
「ああ、こんな感じだな」
【属性反射鉱石:ランクB、虹色のように光るのはすべての属性を反射するためだと言われている。魔力を鉱石に籠めることで、鉱石を中心とした一定範囲に無属性以外の属性魔法を反射する結界を張ることができる。……が、反射できる魔法は、籠められた魔力以下の魔法かつ、魔法を反射するたびに籠められた魔力は減っていく。そのため、格上の使う魔法には効果がないに等しい。こういうものって、普通はボスとかの格上戦といういざという時にこそ使いたい秘密兵器なのに、格上には効果がないって……誰だよそういう仕様にしたの】
いや、あなたたちでしょ!?
『お前が言うな定期』
『効果が強すぎるのも考えものだな』
確かに格上に使えたら魔法中心のボスが楽に倒せちゃうしなあ……バランスを取るのが難しいか。
無制限だったらそれこそクイーンドリアードさんやマーメイドクイーンさんも……いや、あの人たちは普通に物理で殴ってくるか。魔法が効かなければ物理で殴ればいいじゃない、って言いながら。
さておき、一度特殊な鉱石が出たという事実によりみんなが活気づき、視聴していた人たちまで参加しての大賑わいに。
更に掘り当てた鉱石の統計も取られ始め、なんと特殊な鉱石が手に入るだけでなく、属性鉱石の発掘率がクォルトゥス鉱山よりも高いという事実が判明した。
そして更に1時間が経過し……。
「よっしゃあ! 出たぞ!」
「特殊鉱石は出ないけど、属性鉱石がかなり手に入ったから武器開発が捗るな……ククク」
「特殊鉱石が出たけど、これも属性反射か……産地が決まってるのか?」
などなど、喜びの声も多数。
気になるのは、今のところ属性反射鉱石しか出ていないところか。まだ敵を倒せてない岩石砂漠があるので、そちらで掘ることができるのかも。
ちなみに俺もこっそり発掘に参加し、1個だけ掘り当てることができた。
これをアイテム研究に使わせてもらおう。
「よう、盛況なようだな」
「タケルか。そりゃあ初の特殊鉱石だから、お祭り騒ぎになるよな。外は大丈夫なのか?」
「ああ、不気味なほどに静まり返ってるぞ。だから、掲示板ではある憶測が飛び交ってる」
「憶測?」
「ああ。モンスターやプレイヤーを操るスキルは膨大な魔力を使うから、リポップしたモンスターを再び操る際に大量の魔力が必要なため、そうそうこちらに再度軍勢を送り込めないんじゃないかってさ」
「なるほどな。それなら今、他の岩石砂漠が手薄になっている可能性もあるか」
「ただ、マーメイドクイーンの武器は強い代わりに使用回数が少ないなら、連戦は避けたいってのが現実かな」
あー……確かに加護付きの武器って籠められた魔力の影響か、普通の武器より使用回数が減ってるんだよね。
俺のハンマーの場合、元の使用回数は300程度で、マーメイドハンマーは120とかなり少なくなっている。
タケルたちの武器も同じ感じで、今回の攻略で使用回数が半分を切っているものもちらほら。このまま次の岩石砂漠に行くと、途中で武器が壊れて撤退する羽目になりかねない。
一応予備があるとはいえ、特殊鉱石が採掘できる一角が陥落したのだ。守備を増強している可能性は考慮すべきだろう。
「なるほど、それなら加護武器の補充が必要だな」
「ああ、よろしく頼むぜ」
「次は俺がパーティーに入らなくてもいいように、もっと多く造っておくよ」
こうして、俺は再び後方支援のためのアイテム開発に戻ることにしたのだった。
……これで大手を振って属性反射鉱石を研究できるな。
**********
「ふーん、なるほどな……」
魔力を籠めると、直径およそ5メートルの範囲に結界が広がるのだが……。
「……なんか、歪だよなあ……」
フィーリアたちが使っていた結界は丸かったのに俺の結界は凸凹で、下手をすれば範囲を見誤って魔法を受けてしまう恐れがある。
もしかして、形が関係するのか……? 確かフィーリアの使っていた鉱石は丸かったはず……。
「よし、加工屋に頼んでみよう」
俺は属性反射鉱石を持って、エインズの町の加工屋を訪れることにする。
「おお、久しぶりだな。今日はどういった用件だ?」
「ええ、実はこれを丸く加工して頂きたくて……」
「これは……よし、30分後にまた来てくれ」
……なんか目が輝いてたけど……クイーンドリアードさんの時の虹色の鉱石とはまた別の反応だな。
ただ、実力は確かな人なので、きっといいものを作ってくれるはず。
「よし、できたぞ」
「ありがとうございました」
「まさか貴重な属性反射鉱石を見られるとはな。これは形によって結界の範囲が変わるんだ。丸ければ全方位に、先を尖らせれば前方に……と言った感じでな」
「なるほど……」
「今回は丸く加工したので使いやすい感じになってると思うぞ。ただ、どうしても誤差は出てしまうから、使う時は気を付けてくれ」
「重ね重ねありがとうございます。またお持ちしますね」
「……ん? また……?」
うん、だって色んな人が大量に採掘してるし、俺もまた掘りに行くから。
……その後、加工屋から嬉しい悲鳴が聞こえるようになったという噂を聞くことになるのだった。




