妖精たちと
「……よし、これでいいかな」
妖精たちと出会えた翌日、約束通りの色を揃えて、一つずつ手作業で俺はリボンを作っていた。
……妖精たちにばかり作っているとライアたちに嫉妬されそうなので、ライアたち女性陣にはコサージュを作っている。リボンよりも手間がかかって見栄えもいいので、喜んでくれるはず……。
ウルフのスコールには尻尾に付けるタイプ、男の子のブラウンには……この前アトラスさんの造った七支刀を見た時に興奮していたので、七支刀っぽいアクセサリーを……。剣が好きなあたり、男の子だなあ。
「そういえば、鉱石喰らい撃破パーティーの時にお肉を美味しそうに食べてたので、食事でも何か作ってあげたいけど……」
俺、家で食べてるのは基本的に冷凍食品とか漬物とかの、そのまま食べられる系ばっかりなんだよなあ。
これを機に、ちょっと勉強でもしてみようかな……今度サイト見ながら作ってみよう。
「みんなー、アクセサリーができたからつけてみるー?」
俺はコサージュなどを持ってホームの庭に出ると、みんなが駆け寄ってくる。
そして、一つずつ順番に服に付けてあげて……と。
「きゅ! きゅっきゅ!」
「るー!」
付けてあげるとすぐにお互いのものを自慢し始める。
ライアには髪と同じ色の緑のコサージュ、レイには花と同じ色のピンクのコサージュ……と言った感じに、その子の象徴的な色を使って作っている。
これなら片付けて混じった時にも分かりやすいしね。
そうやって和んでいると、アテナさんからメッセージが届く。
どうやら服を作るのが終わったようだ。……えっ? 俺が5人分のアクセサリー作ってる時間で妖精たちの服を……?
アテナさんの手の速さに驚きながら、俺は次にフォーリア森林に行く日時を相談するのだった。
ちなみに、妖精たちと出会えた時の動画はまだ公開していない。
というのも、どうやれば妖精たちと会えるのかまださっぱり分かっていないからだ。今回のも偶然みたいなものだし……。
とりあえず、次にフォーリア森林に行った時に何か分かればいいんだけど。
**********
「お待たせしました、それでは行きましょうか」
次の土曜日の朝、俺たちは再びフォーリア森林を訪れることにした。
今回も前回と同じメンバーで行くことにした。妖精たちも、見慣れないメンバーがいると戸惑って出てきてくれないかもしれないと思ったからだ。
今回は俺がリボンを、アテナさんが新しい服を、レックスさんが絵柄を描きなおしたトランプと妖精サイズのトランプを、それぞれ妖精へのプレゼントとして持ってきた。
そしてアトラスさんは……。
「おれはこれだ」
「これは……ハリセン……?」
「ああ、普通の武器じゃ面白くないからな。人間に悪戯するときにも使えるだろ?」
「確かに森をさまよってる時に頭にスパーン! とハリセンの音と感触がしたら悪戯になりそうですね」
「ちなみに人間サイズも持ってきてるぜ。ここで装備していくかい?」
「→はい。とりあえず使ってみましょうか」
「いいぜ、やってみな」
俺はハリセンを持って、アトラスさんに一撃をお見舞いしてみる。
すると、見事にスパーン! といい感じの大きな音がする。しかも全く痛くないらしい。職人技だ……。
これなら妖精たちも喜んでくれる……かな?
**********
「わー、赤と青のリボン! ありがとー!」
「おお……ひらひらした服……かわいい」
「あ、このトランプ私が描かれてる!」
「えっと……これは何……? え? そうやって使うの……? それじゃ……」
スパーン! とアトラスさんの頭に当たったハリセンの音が森に木霊する。
「……楽しい!」
「あ、私にもやらせて私にも!」
「ははは、たくさんあるから全員持っていけばいいぜ」
「ありがとう!」
「よーし!(チャキ)」
妖精たちがお互いや俺たちをハリセンで叩き、その音がどんどん森に木霊する。
……それはそうと、さっきハリセンを構えてた子、ロボットアニメでよくある剣の構え方してたような……。
「今日も色々ありがとー! ……ええと、ちょっとここで待っててくれる?」
「大丈夫ですよ。それではトランプでもしながらお待ちしてます」
「……ねえ、ボクたちにはそんなに丁寧に話さなくてもいいよ?」
「え、ええと……こういう口調が俺としては楽なだけでして……」
「ふーん? でも、ボクとしては気になるんだけどなあ。ま、いっか。それじゃあちょっと待っててねー」
……これは、相当仲良くなれたと思っていいのだろうか?
とりあえず、残った妖精たちと一緒にトランプで遊んでおこう。
今回は神経衰弱をやろうかな。
「お待たせー!」
しばらくの後、妖精たちが戻ってくる。手には木で作った容器を持っているようだが……。
「はいこれ! ボクたちが花の蜜から作るフェアリーシロップ! おいしいんだよ! 食べて食べて!」
「あ、ありがとうございます。それでは……」
俺は差し出されたフェアリーシロップを指に付け、それを舐めとる。行儀が悪いけど、あいにくスプーンとか持ってないので……。
「……ほんのり甘くて、身体から何かが湧き出てくるような……」
「ボクたちの魔力が混ざってるから、MPが回復するんだー! 凄いでしょ!」
「確かに……」
MPを回復すると言えば、純水と魔草で作るマジックポーションが一般的なのに、これは単品でMPが回復するのか。
果たして回復量は……?
「このフェアリーシロップ、ステータスを見ても大丈夫ですか?」
「いいよー」
「それでは失礼して……」
【フェアリーシロップ:ランクC、飲む……というか、舐めるとMPが100回復する。妖精たちが花の蜜から作ったもので、ほんのり甘い香りと味がする。これだけ少量なのに回復量がマジックポーションより多いとか、マジックポーションの立場が危うい気がする。ちなみに、採取した蜜によって効能が変化するので、毎回この説明文とは限らないので注意して欲しい。確認は大事】
そんなに?!
ランクがCとはいえ、ハイマジックポーションと同等のMP回復アイテムかあ……。
「これは凄いですね……」
「へへー……」
妖精がドヤ顔でえっへんと胸を張る。
ここまで凄いアイテムとなると、果たして対価は充分に払えているだろうか……。
「ところでさ、ボクたちは蜜を集めてるんだけど、いい蜜は持ってない?」
「ええと、それなら……」
俺はレイにペットモンスターを変更し、レイの花の蜜を妖精たちに見せる。
すると、妖精たちから歓喜の声が湧いた。
「アルラウネの蜜だ! しかも進化してるアルラウネの!」
「ねえねえ、ちょうだいちょうだーい」
「ええと、レイさん……ですか? よろしければ私たちに蜜を分けて欲しいのですが……」
妖精たちに囲まれるレイ。10人もいて一斉に話しかけられてるから困惑しているようだ。聖徳太子でもないので聞き分けられないもんね……。
「レイ、ちょっとだけ分けてあげられる?」
「るー」
「やったー! それじゃあ今度これで作ったフェアリーシロップあげるね!」
「え? いいんですか?」
「うん!」
「それでは遠慮なく……」
レイの蜜でこれなら、上位種であるアルラウネさんの蜜なんて見せたらどうなるんだろう……。反応もだけど効能も気になる。
でも、今はレイの蜜に夢中だから、それはまた今度にしよう。
「……ねーねー、コウー」
「どうしました?」
「ボクもコウについていっちゃダメ? この蜜で毎日フェアリーシロップ作りたいんだけどなあ」
「そうですね……それならレイ、レイはこの子がついてきても大丈夫?」
「るっ」
「いいって言ってる! レイお姉ちゃんありがとー!」
妖精がレイの顔に抱き着く。お姉ちゃんと言われたレイはまんざらでもなさそうだ。
「あー、エファちゃんだけずるい!」
「それなら、私の所に来ますか?」
そういえばアテナさんとこの子も進化してたな……と思っていると、アトラスさんもアルラウネにペットモンスターを交代して……。
「うん! アタシはアテナのとこ!」
「じゃあ私はアトラスのとこ!」
……こうして、3人の妖精がそれぞれの所に来ることに。
レックスさんはこれ以上仲間が増えると資金繰りが大変とのことなので、辞退するらしい。
他の7人はレイの蜜を持って妖精の里に帰っていった。
そういえば、この妖精たちはペットモンスター扱いになるんだろうか?
……と思っていると。
【INFO:NPCの妖精を仲間にしたプレイヤーがいるため、ヘルプに『NPCの仲間』の項目を追加しました】
えっ、妖精って名指しで知らせたら……。
俺は急いでウィンドウを開き、掲示板を見ると……。
『おい、妖精を仲間にしたプレイヤーが出たって?!』
『ペットモンスターとしてじゃなくて、NPCとして仲間になる扱いなのか。ペットモンスターもNPCと言えばNPCだと思うけど』
『となると、エルフやドワーフももしかして仲間になるのか?』
『分からん……っていうか、妖精を仲間にする方法を知りたいんだが?』
『それはそう』
『もしかしてたらしさんかな……そうなら動画がアップされそうな気がするが……』
『方法が確定してない可能性があるな。座して待て』
……まあそうなるよね。
しかし、レイの蜜を見せただけでこんなことになるとは……ん? ということは……。
俺は今回来ていない他のメンバーにメッセージを送る。1時間後ぐらいにギルドに集まって欲しいというものだ。
これが確かめられたら、他のプレイヤーも妖精と知り合いになれて、仲間にできるかもしれない。
さて、それまでは……。
「俺たちも帰りますか。エファさんの寝る場所を造らないとですし」
「えっ、ボクに造ってくれるの? やったー! コウ好きー!」
……最初に出会った時の印象とはだいぶ変わるなあ。
というか、そんなにストレートに言われるとちょっと照れてしまう。
「るー……」
「あ痛っ」
エファの発言に嫉妬したのか、レイが俺をつねってくる。
……ホームに帰ったら、ライアたちにも同じことされそうだな。
「相変わらずいちゃいちゃしてるなあ、コウは」
「私たちも妖精さんの寝床を造らないとですね。それでは一旦帰りましょう」
こうして、俺たちは時間までそれぞれのホームで、チェンジプラントで妖精の寝床を造ることにしたのだった。
**********
その後、ギルドに集まったみんなに『フォーリア森林に進化したアルラウネを連れて行って、フェアリーサークルのあたりで待機したら妖精に話しかけられないか』を検証してもらうことにした。
もし、蜜がそれほどまでに妖精にとって重要なら、向こうから話しかけてきそうだが……それとも、こっそり蜜だけを持っていくかなあ……。
とりあえず、フェアリーサークルの位置をみんなに教えて、それでダメだったらまた考え直しかな。
「……さて、結果が出るまではヘルプを読んでおこうか」
俺はヘルプを開き、NPCの仲間の仕様について調べていく。
どうやら、NPCはペットモンスターとは別枠で、パーティーに1人まで入れられるようだ。
プレイヤー1人旅なら自分、ペットモンスター、NPCで3人が最大人数になり、プレイヤー3人とほぼ変わらない連携が取れそうだ。
また、デスペナルティはプレイヤーなどと同様、HPが1、MPが0の状態でホームに戻されるようだ。
そして、一度ホームに戻された場合、自分がホームに戻らないと連れ出せないのか。戦闘不能にならないように気を付けないとな。
ちなみに、戦闘中の戦闘不能は復活アイテムで復帰できるが、戦闘が終わるとホームに転送されてしまうらしい。この辺も気を付けよう。復活アイテムはまだまだレアなようだが……。
とりあえずはこんなところか。
「コウー! ここすっごくいい! 他の子にも同じの造ってあげたい!」
エファがチェンジプラントで造った木の洞から顔を出す。どうやら気に入ってくれたようだ。
そして他の子にも造ってあげたいという発言から、優しい子だって分かるな。
「でも、俺は妖精の里の場所を知らないしなあ」
「それなら次に行った時にボクが案内するよ!」
「え? いいの?」
まさかそんなにあっさり妖精の里の行き方が分かるなんて。
……あ、ちなみに口調は仲間ということでライアたちと同じ話し方がいいと言われたのでそうしている。
果たしてどんな所なんだろうか。今から楽しみだ。
……それからしばらくして、アルラウネの蜜を見せることで、妖精たちから話しかけられることが判明する。これが妖精に会う正攻法だったのか……?
そこから仲良くなっていくとおそらく仲間になってくれるのかな。うちのギルドメンバーはまだ仲間にできていないが、時間の問題だろう。
こうして、妖精たちとの交流が行えるようになるのだった。




