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星の守り人  作者: quo


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深い夢、昔の記憶

ルナヴェールは深い深い暗闇の底へ落ちていった。


目を開けると暗い部屋の中。それは暗闇に包まれた館の一室。本が高く低く、所狭しと積まれた部屋。そこに居るのはルナヴェール。テーブルには枯れた一輪の花が横たわっていた。


黒く長い髪は手入れをされることなく床まで流れている。泣きはらした目が赤い。彼女は固いソファーに腰かけて膝を抱いてじっと前を見つめている。それはぼんやりと光を放つ虚ろな鏡。そこには枯れた大地。砂塵を巻き上げる風。濁った川の流れ。太陽を隠す黒い雲。そこから逃れようとする人々が映し出されている。彼らは知っている。行きつく先に何もないことを。



まだ世界が平穏だったころ。彼女は星が生み出す、力の管理者の一人として存在していた。

彼女は三人の管理者の中で一番若く幼かった。黒く艶やかな長い髪と白く美しい肌。幼いながらも整った顔立ちの彼女は、人々から可愛らしい管理人と言われたが、内気で人見知りな彼女は人を見ると直ぐに隠れてしまった。

彼女は本が好きで、世界中の本を集めた屋敷を作った。館の庭には大好きな花を植えた。その花に語り掛けながら世話をし、庭はいつも花が咲き誇っていた。そんな花に囲まれて本を読むのが好きだった。いつも一人だったが本と花があるから寂しくはなかった。


彼女はたまに輝ける星の力を使って風にのって舞い上がった。彼女は夜空も大好きだった。何処までも広く深く広がる星の海。髙く高く舞い上がると、無垢な瞳で吸い込まれそうな深い深い藍色の空を漂う。その空に浮かぶ月を星をいつまでも見ていた。


あの星は消えた。でも、あの星は現れた。星には寿命があるのかも。

この星も同じなのかも。どうすれば分かるのだろうか?


そんなことを考えながら、夜空に浮かんでいた。



管理者の仕事は、星の力を人々に平等に分配する事。大きな星の力を扱う事が苦手な彼女はしばしばそれを放り出し、他の二人に怒られては、泣いて本の屋敷に逃げて籠ってしまった。内気で本好き。心優しい幼い彼女。そして、怒ればすぐに泣いてしまう。憎めないその姿に二人は、ナヴェールを「泣き虫のルナヴェール」とよんで可愛がった。



ルナヴェールの背後で扉が開いた。白い衣。輝くような銀髪。瞳は青を静かに湛えていいる女性。彼女の手には銀で出来た錫杖が握られている。


「入るよ。」


錫杖の女は部屋に入ると、本に埋もれていた椅子を引き出し座った。ルナヴェールは彼女を見ようともしない。錫杖の女はテーブルの枯れた花を見ると溜息をついた。そして、ルナヴェールに言った。


「お前が正しかったよ。星の力は有限だ。そして、星は一つの生命体で意識を持つ。」

「今、起きていることは”彼女”復讐だ。」


錫杖の女は部屋の天井を仰ぎ見る。いつもは自然に照らしてくれる光のガラスは、星の力を失ってから用を成さなくなった。


「”彼女”の中には血管のように力が通っている。それが大きく動いているのが、この変動の要因だ。」

「鎮める為に力の流れる道に杭を打ち込む。そして、これで杭を制御する。」

「”彼女”には申し訳ないが、この杭をもって”彼女”の力を鎮めて我々の世界の終わりを止める。」


彼女はそう言うと手に持つ錫杖を鳴らした。ルナヴェールは彼女には見向きもせず、移ろいゆく外の情景を映す鏡を見ながら言った。


「彼はどうしたの?」


錫杖の女は首を振った。


「あいつは先に逝ったよ。自分の力を出来るだけ外の人々に分け与えた。」

「これからこの星で、この過酷な環境の中で生きてゆくために、人々が順応できるようにね。」

「何世代かかるか分からない。人の形でいられるか分からない。色々な環境で暮らすのに、色々な形の人々が生まれるだろう。」

「”星と共にあれ”。あいつの信条だ。それに殉じる。いいじゃないか。彼らしい。」

「でもね、思うんだ。色々な形になった人々が互いに畏怖し憎しみ合い、争うんじゃないかって。」


そして、手に持つ錫杖を愛おし気に撫でた。


「彼は人の生きる力を信じている。でもね、私は私たちの叡智を信じる。”彼女”を支配下に置くのさ。こいつでね。」

「これは鍵。私の全ての力を注ぎ込んで、打ち込んだ杭が抜かれない様に鍵を掛ける。二度と”彼女”が暴れないようにね。」


彼女はルナヴェールの傍らに腰かけ、彼女を抱き寄せ言った。その声は涙に濡れている。


「お前には損な役割を押し付けてしまったね。」

「だけど、これは必要な事なんだ。一人が残って人々を守らなければならない。」

「星の力から切り離されたお前にしかできない事。長い長い年月を生きる事になるだろう。」

「生き残った人々が同じように、終わりの時代の扉を開けようとするなら、助けなけらばならない。それが管理者の仕事。」


彼女はそう言って涙を拭うと、立ち上がりまた錫杖を鳴らした。そして「もう行くよ」と言ってルナヴェールの頭を撫でると、彼女は部屋の扉に手をかけると立ち止まった。そして振り返りルナヴェールに聞いた。それは、今までルナヴェールに聞けなかった事。ルナヴェールの考えを否定し続けた彼女には、聞くこと出来なかった事。


「”彼女”と対話したって言っていたね。」

「”彼女”は何て言っていたんだい?」


ルナヴェールぽつりと言った。


「出て行けって。」


錫杖の女は「そうか」とだけ言うと部屋を後にした。部屋には暗闇と静寂が戻った。


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