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星の守り人  作者: quo


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大きな魔力

魔法顧問と言われた男は一枚の紙を持って来た。とても細かい刻印が描かれている。中央には円が幾重にも書かれている。


男は聖王国が強引に魔法使いを僧侶として教育する前の、純粋な学問として研究していた時代に学んだ人間だった。学院を離れてからは独自の研究を行った。それは魔道具だ。人が魔法を使える域まで達するには適性と時間がかかる。しかし、魔道具には便利な機能が二つある。触媒として魔力を引き出すものと、それ自体が魔力と魔法をため込み、魔力を引き金に、その役割を放つもの。


男は、その研究に没頭していた。特に後者の原理。つまりはただの道具が魔法使いと同様の振る舞いをさせる事に興味をもった。それが材料なのか魔法使いの魔法そのものなのか分からない。色々な研究をしているところに、グレン商会の目にとまり、魔道具の鑑定を任され魔法顧問となった。商会が稀に取り扱う事になった魔道具の真偽と、その効力から価値を測るために。


彼が持つ札は触媒として魔法を使う場合の特性を応用したものだ。魔法を発現させるために使う魔力を注ぎ込むときの強さを記録する単純なものだ。これで、幾人もの大口を叩く小物の魔導士を見破ってきた。男はマリエルに札を渡した。そして、札を通して何か魔法を使う様に言った。札は魔法の流量で中央の円の色が変わる。小さければ淡い赤に。強ければ深紅に染まる。


マリエルは渡された札を見ながら、何の魔法を使うか迷ったがルナヴェールの(いかずち)の魔法なら安全だと思った。あの時、鬼人がルナヴェールに触れようとした瞬間に鬼人が雷ではじけ飛んだ。誰かが触ろうとしても、自分の魔力なら火傷もしないだろうと。


マリエルはルナヴェールが鬼人を弾け飛ばした時の場面を強く思い出した。一気に飛び散る肉片、目が眩むよな閃光、立ち上る焼け焦げた匂い。感じたあらゆる現象を思い出し強く念じると、マリエルは体の中へ、何か暖かいものが流れ込む感覚と、それが小さく凝縮されて体の中で一気に放たれる感覚を覚えた。

その時、マリエルの視界が真っ暗になった。誰かが背中から覆いかぶさるような感覚。そして、札を持った手は痛いほどに握り締めらられている。体に凝縮される感覚が霧のように消えてゆく。


気付くと少し眩暈がした。みんなが札を見ている。札の円は淡い赤色になっていた。


「大したことは無いのね。まあいいわ。役に立たない事もないでしょう。」

「私がやって欲しいことは、相手のマルス商会を叩く事。」

「他の商会にお金を配っているわ。お金を渡しているところを押さえて官憲に突き出すの。」

「それと、私を襲った連中を探し出すのもお願いね。」


エリスは簡単でしょうと言った。ヴェルシダは「マルス商会」といいう名前を聞いて驚いた。あの、ボウガンで襲った張本人が入っていったのが、その商会の倉庫だ。それに「お金を配っている」と言う事は、資金源があるはずだ。マルス商会が如何程のものかは分からないが、少なくとも自治派と張り合えるほどの資金が、単独で用意できるとは考えにくい。恐らくは聖王都のが協力に後押ししているに違いない。


ヴェルシダは、このお嬢様が如何に世間知らずかが分かった。


「今日は用事があって動けない。回答は後日にさせてもらう。」


妙な事に巻き込まれてはたまらない。ヴェルシダは部屋から出ようとするとエリスが言った。


「偏屈な薬屋と仲が良そうじゃない。」

「薬屋に薬草を卸さないってことも出来るわ。」


この娘は自分で何を言っているのか分かっているのか。グレン商会のが仕返しをしないから自治派の結束は固くなっているのに、自ら相手を刺激することで自治派の力がそがれる事が分からないのか。

しかし、ヴェルシダにとっては知った事ではないがマリエルがどう考えるのか。それ次第だ。マリエルは札を持ってから、ぼんやりとしている。魔力を使って疲れているのか。ヴェルシダは再度、答えは後日と言い残すと、マリエルの手を引いて部屋から出て行った。



エリスは、機嫌が悪そうに何も言わずに部屋を出た。部屋には魔同顧問が残った。彼は札を見つめている。マリエルが何か魔法を使おうとした時、強大な膨れ上がる魔力を感じた。見えたのは全員が黒焦げになる光景。動けなかった。そして、さらに強大な魔力を持った者が現れて、その力を丸呑みにした事。もしかすると、あの娘には悪魔か天使が憑いているのかもしれない。我々を黒焦げになるところを救ったところを見ると、娘は魔力を制御しきれていはいない。背後にいる何かが庇護しているのか。


男は研究をもっと深化させねばならいと部屋を出ようとしたが違和感を感じた。見渡すと時計が止まっている。魔力が漏れ出たせいだろう。男は長年、エリスに見下され、ただの使用人扱いをされてきた。商館長に拾ってもらった恩義でここに留まっているだけだ。エリスが泣き叫ぶ姿を想像してほくそ笑むと、部屋を出て行った。


ヴェルシダが屋敷から出ると、アーガソンが馬車の荷台に座ってあくびをしていた。


「どうだった。お嬢様は元気だったかい。」


ヴェルシダはアーガソンを荷台から引き下ろすと右手で首を掴むと力いっぱい締め上げた。首の骨が軋む音がする。アーガソンの顔色が見る見るうちに紫色に変わってゆく。


「私たちの事を調べたな。いや、違うな。流れ者の中で使えそうな人間を探していたな。」

「うまい事、襲撃の現場に誘い込んだな。お前たちが仕組んだのか。」


アーガソンは声が出せない。一層、ヴェルシダが首を締め上げると、それまでかろうじて出来ていた息も止まった。ヴェルシダは手を離すとアーガソンは倒れ込んで咳き込みながら新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込んだ。


「待ってくれ。あの嬢ちゃんの命令だ。目をつけていたところにあんたらが現れたのは偶然だ。」

「俺たちも必死なんだ。グレン商会専属で護衛として長く雇われている。商会が無くなれば俺も仲間も職を失う。」

「マルス商会を潰す話が出ただろう。俺たちには荷が重い。だから、あんた達に手伝ってもらおうと思ったんだ。」

「悪いとは思っている。だから十分な報酬を約束する。」


ヴェルシダは引き留めるアーガソンの声を後にして屋敷を出て行った。マリエルが度々振り返って、アーガソンの首の事を気にかけていた。ヴェルシダが無視をしていると、マリエルが急に立ち止まった。


「私の話もちゃんと聞いて。アーガソンさんの事も心配だし、カエロさんの事も心配なの。」

「なにか、力になれないかと思う。」


ヴェルシダはマリエルの真直ぐな目を見て、声が出なかった。マリエルの事をないがしろにしてしまったと思った。


「ちょっとやり過ぎたかもしれない。あの男の骨が折れてないか見に行くか。」


アリエルは頷くと、未だに地面に転がっているアーガソンの下へ走った。マリエルはふと思った。ヴェルシダは首の骨を折るつもりだったんだと。

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