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星の守り人  作者: quo


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手合わせ

ヴェルシダは旧聖堂にいた。天井はなく空が見える。あるのは壁だけだ。解体された部分の瓦礫が庭を埋め尽くしている。好んで中に立ち入る者はいないだろう。ヴェルシダは辺りを見回した。


いいじゃないか。邪魔は入らない。


ヴェルシダが指に鉄の輪をつけて準備していると、扉の外された入り口からセフィルが現れた。鎧を身に着けている。皮の鎧。急所には鉄板を仕込んである。チェーンメイルを着こんでいるから動きやすさと防御力を両立している。両手持ちの大剣を短剣並みに扱うつもりだろうか。


「お待たせ。決闘じゃないよね。」


相変わらず軽い奴だ。ヴェルシダは何も言わずにローブを脱ぎ捨て、ルナヴェールから貰った「魔法を斬る剣」を、その上に放り投げた。両手の拳を構えた。指にはめた鉄が月の光を浴びて鈍く光る。セフィルは闘拳の構えをするヴェルシダに戸惑った。接近戦はナイフ使いとしかしたことが無い。今までローブで見えなかったが、ヴェルシダの腕は細いが余計な肉がなく、それでいてしなやかだ。華奢だが体全体が普通の女性と明らかに違う。戦うために鍛え上げられた体だ。


「もしかして、本気でやるの?危なくないかな。」


セフィルは身の丈ほどの大剣を抜きながら言った。


「大丈夫だ。マリエルを守れるだけの強さがあれば怪我はしない。」


ヴェルシダは言い終わると、セフィルに向かって一気に駆け出した。セフィルは懐に入られる前に大剣を横一閃に振り抜いた。大剣とは思えない速さで迫る切先を姿勢を低くして躱したヴェルシダは、一気にセフィルの懐に飛び込もうとしたが、本能的に後ろに飛びのいた。今までヴェルシダの頭があった場所を大剣が縦一閃に振り抜かれた。


横に振られた剣を一瞬で縦に切り落とす。セフィルの足元の埃は複雑な足運びを描いている。大剣の柄は握りの間をいっぱいに取ってある。大剣はその長さに似合わず、小回りが利くようだ。容易に懐には入れない。


ヴェルシダは面白いと思った。大剣など硬い鎧を砕くだけの武器だ。それを三日月剣の様に扱う。だが、そう言う相手にはそれなりの戦い方がる。


ヴェルシダは、また飛び出しセフィルとの間合いを一気に詰める。その素早い動きに大剣は遅れはとらない。ヴェルシダは翻ると横一閃に迫る刃めがけて拳を叩きつけた。拳の鉄の輪が大剣を弾き飛ばす。セフィルは体勢を崩したが、迫るベルシダの拳を躱すと、低く構えなおして大剣を体ごと回転しながら振り抜いた。ヴェルシダは両足で飛んで躱したが、セフィルの大剣が頭を砕く軌跡を描いて迫る大剣を、寸でのところで拳で弾いた。ヴェルシダは衝撃で吹き飛ばされたが、倒れることなくセフィルの間合いから飛び出て構えなおした。


大剣は異常な軌跡でヴェルシダを襲う。ヴェルシダはそれを拳で弾き飛ばし、その隙を突いて襲いかかる。セフィルの大剣の刃は所々欠けている。ヴェルシダの拳の鉄の輪には亀裂が入っている。このままでは、いつか致命的な一撃が入る。だが、二人の間に止める者はいない。


セフィルは肩で息をしながら、何とかヴェルシダの攻撃を止めようと考えた。しかし、彼女はそうは思わす、口元を緩めている。


純粋に楽しんでいる。


彼女に要らぬ口を開いた瞬間にとびかかってきそうで出来ない。どうするべきか。それとも血を見るまで続けるか。セフィルが覚悟を決めようとした時、背後に気配を感じた。何か居る。人ではない何か。ただ、振り返ってはいけないと、頭の中で誰かが騒ぎ立てているように心をかき乱された。


セフィルは我に返った。意識をヴェルシダに集中しようとしたが、彼女は構えを解いて、ローブを身にまとって剣を腰に差した。


「終わりだ。明日の日が落ちた後に会おう。」


セフィルは大剣をゆっくり下ろして、この場所で待っていると言った。ヴェルシダは返事をせずに立ち去った。セフィルは立ち尽くした。誰もいなくなった廃墟の聖堂。神の石像が彼を見下ろしている。彼はゆっくりを振り返る。ヴェルシダとの戦いで埃が舞い上がり、壊れた椅子にタイルが散乱している。


月が影ってよく見えない闇の中。誰かがこちらを見ている。目が合ったと思った瞬間、それは消えていった。セフィルは剣をしまうと大きく息を吐き出した。明日までには剣を研いでおかないといけない。


セフィルは廃墟となった聖堂を後にした。

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