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星の守り人  作者: quo


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リンネカグラ

マリエルは衝撃の言葉を聞きつつも、カエロのそう祖父が記した場所に行きたかった。森の中での野草探しは久しぶりだ。ヴェルシダも、あえて「家に取りに帰る」とは言わない。イヴァに何を言われるか分からないからだ。栽培方法については興味があったが、今は考えるべきではないと思った。カエロが喜ぶか薬学の道を投げすてるか分からない。


マリエル達は朝方に通った泉の広場に足を運んだ。多種多様な服装の人々が行き交い、泉の側で談笑する者、絵を書いている者、沢山の人が居る。マリエルは楽し気に歩く人々を前に立ち尽くすしかなかった。斡旋所の様に殺伐とした雰囲気ではない。皆が楽しそうにしている。こんな幸せなところなら住んでもいい。そして、こんなに楽しそうな光景を見ることなく死んでいった友達の事を思うと胸が締め付けられた。


ヴェルシダは何も感じる事は無い様だ。それどころか早く立ち去りたい様だ。彼女が魔族である事を隠さねばならない。マリエルは広場を後にしてヴェルシダと一緒に斡旋所に向かった。


斡旋所に着いた。人はまばらになっている。足跡で砂まみれになった床を清掃員が掃除している。掲示板を見ると残った仕事が張り出されたままになっている。長期と短期に分かれている様だ。住み込みの使用人や料理人。裕福な人が出したのか子供の護衛。短期のものは報酬が少ないものばかり残っている。草木の手入れ。家の雨漏りの補修。写本の手伝い。その中にカエロのものもある。


長期のものはずっと掲示されているようだ。技術や経験を問われる仕事には人が集まらないらしい。清掃員に聞いてみると、長期では補修工事は人気があってすぐに定員になる。短期は狩や漁、単発の補修工事が人気だそうだ。旅をしている人は狩猟や力仕事がいいのだろう。


商隊や富豪の馬車の護衛は、商館の斡旋所で出るそうだ。戦いに自信があれば、そっちが報酬が高い。特に魔法を使えるなら、雇い主の方から声がかかる。清掃員はマリエルとヴェルシダを見ながら意味深に言った。長年、ここで人を見ているから感がいいのかもしれない。マリエル達は後で商館の斡旋所に行って見る事にした。清掃員に礼を言うと宿へ向かった。


部屋に着くなりマリエルの影からルナヴェールが出てきた。椅子を窓辺に持っていくと窓辺腰かけて頬杖をついてため息をした。


「私は連れて行くとは言ってないぞ。」


機嫌が悪い。非常に悪い。これまでに無い位い悪い。すかさずローブになる黒猫も部屋の隅にいる。確かにマリエルは浮かれて、ルナヴェールに聞くのを忘れていた。マリエルはルナヴェールに謝ると、改めて連れて行ってもらえないかと頼んだ。


「私が気にしているのは魔族の住処に近いことだ。鉢合わせして争いになるかもしれない。」

「それでなくとも、魔族と人間は仲が悪いのだろう。」


そうだったのか。そっと黒猫に聞けば分かったかもしれない。カエロにも期待を持たせずに断れたかもしれない。マリエルは拙速だったと反省した。仕方がないので断りに行こうかと言うと、ヴェルシダが止めて言った。


「いるのはグード族だ。国から離れてはいるが王の支配下にある。」

「好戦的なだけで問題ない。母と軍隊で一緒だった者も多い。よく家を訪ねに来ていた。」


好戦的なのは問題なのでは。マリエルは、恐る恐るルナヴェールの反応を見ていたが、ヴェルシダが言うなら問題ないだろうと言った。ヴェルシダはルナヴェールに、この部屋から飛べるかどうか聞いた。たしかに、あれは盛大に風を巻き上げる。ルナヴェールは部屋を見回すと、二階は消し飛ぶと言ったので城外に出る事にした。


城外にはすんなりと出る事が出来た。身分証明書だけで何も問われない。面倒なのか「さっさと歩け。」とまで言われた。入る時にはルナヴェールが人の心を操るから問題ないと言ったが、正直なところ、マリエルは憂鬱で仕方なかった。


ここでの出入りが多いなら、何か方法は無いだろうか。商人の通行証を手に入れるとか。そう言えば街の泉の広場は十分にある。夜なら人目に。それに、他に場所があるのではないか。マリエルは時間がある時に街へ探索しようと思った。


マリエル達は丘の向こうに人気のない林を見つけて、そこからルナヴェールに地図にあるリンネカグラの場所へ連れて行ってもらおうとした時、ルナヴェールは途中で一旦、降りると言った。長い距離を移動するときに体に負荷がかかるそうだ。そう言えば、ヴェルシダはルナヴェールに追いつくのに、何回も着地して疲れ切っていた。マリエルはルナヴェールも疲れるのではないかと言ったが、頭を撫でられただけだった。


ルナヴェールが途中で降り立った場所は深い崖の側だった。地図にある崖だ。幅は狭いが覗き込むと底が見えない。地図には橋があると記されている。探してみると崩れ落ちたつり橋を見つけた。誰が行っても引き返すことになっただろう。ルナヴェールは谷底を見つめている。何か見つけたのだろうか。マリエルが一緒に覗こうとすると、危ないからと襟をつかまれて引きずられた。


「もういいだろう!さっさと終わらせて宿に帰るそ!」


ルナヴェールはマリエルを抱き寄せ、ヴェルシダは頭を鷲掴みにして、また風を呼ぶと疾風と共に風に乗って消え去った。



相変わらず盛大に土と草の葉を巻き上げて地図の場所へ着いた。地図では分からなったが台地の様だ。遠くに高い山が見える。ヴェルシダによれば、あの向こう側が魔族の勢力圏になるそうだ。台地の端に行ってみると、崖の様に切り立っている。カエロのそう祖父は、ここを登ってリンネカグラを取りに来たのだろう。


日が傾き始めている。マリエル達はリンネカグラを探し始めたがすぐに見つかった。森の開けた場所に生えている。一株見つけると一帯に生えている。地下茎植物で、日の光と砂のような土が好みの様だ。一株でどれくらいの価値が分からないが、地下茎でつながっている分を根っこを切らないように、慎重に掘り起こした。そうして四株取ってバックに入れた。探してみると全部で二十株が生えていた。まだ芽を出して間もないものもある。人を寄せ付けない大地がリンネカグラを守っていてようだ。


ヴェルシダは立ったまま何も手伝わない。あくびをしながら適当な石を見つけて座っている。「草」には興味は無さそうだ。彼女に生えているのだから。ルナヴェールはリンネカグラを眺めていたが、散歩と言って黒猫と一緒に森の中に消えた。そのうち、森の中で風が巻き上がる。どこか遠くに行ったようだ。


魔都でもそうだったが、何気に「散歩」と称してどこかに行ってしまう。マリエルは、そんなルナヴェールの心配になった。することがあるなら手伝いたい。何か足手まといになっているように気持ちになった。


気を落としてしまったが、時間がもったいない。マリエルは他に薬草は無いか探し始めた。この森は殆ど手付かずの様で、色々な薬草が大量に生えている。熱さましに傷の消毒、毒気を払うもの。一通り集めるて、広げた布に薬草を種類別においていると、突然、背後から声をかけられた。


「何をしているんだ?」


マリエルの心臓は早鐘を打った。ヴェルシダはいない。ルナヴェールも影の中にいない。黒猫もいない。マリエルは、久しぶりに絶体絶命だと思った。

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