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どうゆうこと!?


「う~ん どうしよう」


 わたしは空中で逆さまになったり、くるくる回って試してみたりした。そうしたところで気づくものは一人もいなかった。

 眠っているわたしを医者が診察する。傍に夫のジークムント・トギフォス伯爵様、そして執事長のセバスチャンが控えていた。

「妻の容体は」

 伯爵様はいつもと変わらない無表情で医者に聞く。

「……呼吸が浅く血の気が引いた顔色からするにおそらくネムトカデの毒でしょう。解毒剤がございますので2日で目覚めると思います」

 それを聞いたセバスチャンは泣きながら「お゛おお゛奥様よがった!本当に良かったですね旦那様ぁ!」と男泣きする隣で「ああ」とだけ返事をする伯爵様。

 ……妻が殺されそうになってでた言葉が「ああ」とは。伯爵様はわたしに本当に興味がないのだと改めて思い知らされるようで悲しくなった。

「この件でエリザベスの近くにいた者 疑わしい者全て俺の部屋に呼べ、話が聞きたい」

 そういって伯爵様は部屋を出て行ってしまった。置き去りにされた医者とセバスチャンはその後を慌てて追いかけ、外で控えていた下女にわたしの世話を指示すると同じように出て行った。


 下女が寝ているわたしを世話している傍で今後のことを考えていた。

 何故か幽体離脱のような摩訶不思議な体験をしてしまっているがせっかく死なずに済んだのだ。こんな状態でもできることを考えてみよう。

 とりあえず幽体離脱(この状態)でどこまで動けるのか試してみることにした。体は透けているので物にぶつかることはなくするりと通り抜けられた。

 下女の目の前で手を振ってみるも見えている様子はなかった。寝室からでると城内は使用人たちが慌ただしく動いていた。

 当然か。一応トギフォス伯爵の妻が何者かによって殺されかけたのだから騒がないはずがない。夫であるは伯爵様は一つも焦った様子はなかったが。


 わたしは現場となったバルコニーへ来ていた。すっかり日が暮れ、城内の灯りでほんのり照らされている。わたしはバルコニーの手摺に座るように浮いて当時を思い返した。

 その日の一日は、マイヤー家と商会の友人へ手紙を書き、庭を散歩した後バルコニーでお茶をしていた。バルコニーは海が見渡せて潮風が感じられる場所にあり、トギフォス城から見える海はとても美しく気に入っていた。

 マイヤー家からずっと一緒だった侍女のメイサと話しながら紅茶を飲んでいた時、急に力が抜けて意識を失ってしまった。

 状況から考えるに、飲んだ紅茶か使われた陶磁器に毒物が盛られたと考えるのが妥当だろう。誰の犯行だろう、茶葉を選んだ者か、食器を用意した者か、あるいは今まで一緒にいたメイサか。

 毒殺しようとするにはいくらでも方法がある。

「恨まれるようなことしたかなぁ」

 倒れた際に割ってしまったティーカップや使用されていた陶磁器は片され証拠となるものは残っていないかった。昼に起きた出来事だったがすっかり夜となってしまっている。流石に現場がそのままとは思っていなかったが、わたしが倒れた手掛かりになりそうなものが残っていないことに落胆した。

 ここに居てもしょうがないと思い、寝室に戻ろうとした。バルコニーに置かれているテーブルの横を通り過ぎたとき、わたしはあることに気づいた。

「そういえばあのお花がない……」

 お茶をした際にテーブルに花が飾られていたことを思い出した。なんでもアマンガルド王国とマーレン帝国を隔てるディアブル山脈で見つけたとても貴重な花だとか。

 アネモネ咲きでほんのり乳白色の花弁が中央から外に向かって透明になっており、指をかざすとガラスのように透けて、でも触ると花の柔らかさはあって驚いたのを覚えている。

 幼い頃、商会の仕事で父にいろんな市場に連れて行ってもらったがこの花は初めて見た。

 感動して花に触れていたが、花の中に乳白色部分が黒くなっているものを見つけメイサが片付けていたっけ。

「綺麗だったんだけどな~」

 きっと一緒に片付けられたのだろう、目が覚めたら詳しく調べてみようと思った。知らない物への探求心は商人であるお父様から受け継がれたのね、と微笑し寝室に戻った。


 移動しながら「幽体離脱中って寝れるのか?」と考えながら通路から寝室の壁を通り抜け中に入るとわたしの体が寝ているベッドの横で座っている人物に吃驚した。

「な、なんで伯爵様がわたしの部屋に……?」

 わたしを嫌っているはずの伯爵様はいつもの無表情を眉間に皺を寄せてじっと寝ているわたしを見つめていた。

 なにをされていたのだろうか。幽体離脱してしまっているいま、何をされても抵抗することができない。

 もしかして今回の騒動は全て伯爵様が……?猜疑心に苛まれ最悪を想像してしまう。

 わたしが目覚める前に息の根を止めに来たのではと怯えながら様子を伺っていると伯爵は座っていた椅子から立ち上がり、わたしに向かって体を近づけた。

 伸ばされる手にわたしは「やめてくださいっ殺さないで!」と叫ぶも伝わらない。

 そうして伯爵はわたしの頬に手を添え、顔を近づけて__


 チュっと額にキスして寝室を出て行った。


「……? っ!?」


 え、伯爵様いまわたしのおでこにチューしていかれた!?なんで!?わたしのこと嫌いじゃなかったの?それにずっと片手握ってて……?以前わたしが触れようとしたとき避けられたのに……?どうゆうこと!?

 わたしが目の前での出来事を飲み込めず、気づけば朝になっていた。

 


 




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