ももちゃん は うさぎ の ぬいぐるみ
「ももちゃん!」
私はうさぎのぬいぐるみ、ももちゃん、今のは持ち主の女の子の声。女の子が小さい頃からずーと一緒にいるの。
笑顔の時も……泣いている時もずーとね。
私はうさぎのぬいぐるみ、ももちゃん。
桃色のうさぎのぬいぐるみなの、垂れたお耳に黒い瞳、茶色いお鼻のぬいぐるみ、抱きしめられたり振り回されたり、綿が出ちゃったら直してね。
小さいうさぎのぬいぐるみ、スモモちゃん。
かっこいいライオンのぬいぐるみライくん、みんなはいなくなったけど。私だけは貴女のとなり。
「ももちゃんだけは洗って置いてね」
おとなになった貴女の言葉、お耳の糸がちょっと出ててもお腹の綿が少なくなっても、私だけは貴女のとなり。
「ももちゃん、」
お家じゃない部屋のベッド、おとなになった貴女。久々に抱きしめられた。
可愛いぬいぐるみだねと誰かが伝えると、少し微笑んだ貴女がお礼を言った。
「ももちゃん、私。手術するの、大したことない病気なんだけど」
その表情は微笑みか不安で泣いているのかわからなかった、ずーと側にいたはずなのに。
貴女が私を抱きしめるのはおともだちと喧嘩した日が多い気がした、おとなになっても喧嘩したのかな。
「お加減はいかがですか?」
白い服の人の問い掛けに貴女は元気に答えられるようになっていた。
「うるさくしてごめんね?びっくりしたよね」
貴女はからだの痛みに耐えられず、一晩中ナースコールを鳴らし続けていた。
「ももちゃんも良くみたら、ボロボロだね?お腹切ったりお耳縫ったり?痛かったよね?」
「ももちゃん、側に居てくれてありがとう」
私はうさぎぬいぐるみ、ももちゃん。
お腹を切られてもお耳を縫われても、弱音は吐かない強いぬいぐるみ。
「お待たせ、ももちゃん帰ろうか」
貴女は鞄を持って、私を抱き上げた。
「…もしもし。荷物まとめたから、迎えにきてくれる?」
私はうさぎのぬいぐるみ、ももちゃん。
「荷物持つよ」
「ありがとう。この子は私が持つから大丈夫」
「…ずっと側に置いてたね」
私はうさぎのぬいぐるみ、ももちゃん。
迎え人は病室で時々見ていた顔だ。
というか、ほぼ毎日来ていた。
おまけに、貴女のベッドの隣で眠りこけていたこともあった。
「この子はうさぎのぬいぐるみ、ももちゃん。
私の大親友」