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2―44・Erika







「あっけないものね」


 寂寥感にも似た思いを抱きながら、エリカは夜の空にそんな言葉を洩らした。

 月はよく見えない。雲が隠したのか、はたまた辺りの木々に隠されたのか。それはエリカには分からなかったが、それが少しだけ彼女の気持ちを軽くしてくれた。

 かつての仲間で、恩人で、その力と立場に嫉妬を向け、逆にその力に感謝をも向けた女性の教え子を殺した自分を、例え月にであれ見せなくて済んだ事が安堵させた。今の自分を誰かに――いや何かにであれ見られたくはなかった。

 やがて舞い上がり、吹き上がっていた爆風が収まった場所を見て。

 小規模でありながら連鎖的に力が発露した爆心地を見やって、思わずエリカは固まった。

 そこには爆発によってズタズタに引き裂かれ、身体中を砕かれた少女が倒れているはずなのだ。

 ベストなタイミングとはいかなくとも、ベターな瞬間を選んで爆発領域に巻き込んだはずだった。

 逃げられるはずがなく、そんな余裕を与えたつもりもない。なすずべもなく、せめて顔と頭を腕で守ろうとする事ぐらいしか出来たはずがない。

 出来るはずがないタイミングだった。

 それなのに――


「……いたた、やってくれんじゃん」


 そこには倒れ伏しているはずの少女がいまだ立っていたのだ。

 その身に纏う上衣をズタズタにし、素足にはいくつもの擦過傷を負い、場所によっては青く内出血している箇所もありながら、戦闘可能なままで少女はニッと笑ってみせる。

 確実に仕留めたつもりで、仕留められたはずのタイミングで、ここまで見事に計算を崩されたのはエリカにとって始めての事だ。

 思わず彼女が立ちすくんでしまったのは仕方ないだろう。その僅かな隙に、エリカがさっき倒したはずの少女――カーリアンは一気に間合いを詰める。


「くっ……」


 それもまたエリカの予想を越えた行動だ。『自分に近寄ってくる』などとは彼女は思ってもいない。

 思わず呻きを漏らし、それでも本能で武器を……その両手を伸ばそうとするも、その伸ばした先に紅い閃光が産まれるのを見て、一瞬の躊躇いを覚えた。

 迸る紅の導火線へ手を突っ込ませる事はさすがに遠慮したい。相手が何故無事なのかは分からないが、自分がカーリアン(産まれ付いての強者)の力をまともに食らって無事でいられるとはとても思えない。それは絶対だ。

 だから紅を避けながら手を伸ばし、なおかつカーリアンを上手く掴めるかを計算する。刻みこまれた戦闘本能が働いてしまう。

 そんな僅かな間に、生まれた紅は膨張し一瞬だけ炎の色でエリカとカーリアンの視界を埋めた。


 ――目眩ましかっ。


 視界いっぱいに広がる赤。それを目を眩ませる為のものだと判断し、その広がる紅の膜の左右どちらから少女が回り込んでくるかを警戒する。

 上も下も論外だ。下は地面であるし、熱気は上に上がるものだからだ。

 後ろに下がってくれるならそれはそれで構わない。それこそがセオリー通りの行動で、読みやすくなってやりやすくなるぐらいだ。

 しかし彼女ならばそんな選択をしないだろうという、変な確信が彼女にはあった。


 ――来るなら左右どちらか。出てきたら捕まえて、直接爆破する。


 そう考えが纏まるまで数瞬。距離も測り、あらゆる状況のシミュレーションをあっさりと終える。

 後はこの目眩ましを抜けてやってきたところを捕まえるだけ。

 そう考えていたエリカは、『吹き上がる紅の膜を突っ切って伸ばされてきた拳』に――炎に赤く染まる笑みにその身を打ち抜かれた。

 拳の打撃に。

 そしてそれ以上に、今もよく覚えている自分の考えの斜め上を平然といきながら、ニカッと笑ってみせた同僚を見たかのようなデジャヴに。

 それにやられて、エリカは攻撃の威力を逃す事すら出来ず、ただ拳のヒットポイントを顎から肩に移しただけでまともに攻撃を食らったのだ。


「この炎はさ、純粋に全部があたしから生まれたものだからあたしを傷つける事がないの。言ってなかったっけ?」


 その打撃による力を逃す事なく後ろに下がるエリカに、カーリアンは追撃をかける真似はしなかった。エリカの能力を考えれば接近戦を挑むリスクは今でも変わらないからだ。

 下手に勢い任せな追撃などをかければ、痛い目を見るのは十中八九カーリアンの方だ。

 今のようによほど意表をつかない限り、駆け引き込みの戦いではエリカに勝てない事はもう分かっている。

 真っ向からの能力のぶつけ合いでは負けないだろう。しかし、身体能力の差、そして絶対的な経験値の差が、エリカをどこまでも強大な相手へと変えていた。恐らくカーリアンが今まで向き合った相手の中では、間違いなく最強の相手だろう。

 死にたがりの紅として襲撃を掛けたあの狂人よりはマシな相手だと思いたいが、相性などを含めて考えればより分の悪い相手かもしれない。

 だからこそ彼女は安易に距離を詰めない。お互い痛み分けで――能力を少しずつ知れた事で一旦仕切り直す事にしたのである。


「なるほどね。強い力を持つだけの単なる発火能力者ではなかった、と」


「単なる発火能力しか持ってないなんて、あたしは一言も言ってないわよ?」


 一般的な発火能力者(パイロキネシスト)が操る炎は、能力者本人をも傷付ける一般的な炎となんら変わりのないものしか生まない。発火能力者だからといって、炎の熱に耐性があるわけでもない。

 自分が発した炎に巻かれれば焼け死ぬし、今のカーリアンのように腕を突っ込めば大火傷では済まない。普通の発火能力者であればそのはずなのだ。

 発火能力自体、変種が持つ能力の中でも数の多い部類であるだけに、エリカにとってその炎を突っ切って攻撃してくるなど想定外もいいところだったのである。

 そんなエリカの考えが分かったのだろう、一矢を報いたカーリアンは小さな嘆息を洩らすと自らの腕についた炎の残滓を見やる。


「まぁ今みたいに紅から炎に変えちゃったら、服は焼けちゃうんだけどさ」


 そして僅かに煤けた上衣をかなり複雑そうに見やり、焦げた袖にいまだに残っている残り火を半ばヤケクソにも見える動作で叩いて消しながらカーリアンはニッと笑う。

 その笑みもカラッとしたものではなく、どこか凄惨さを滲ませている。一瞬悲しそうに焦げ落ちた服の切れ端を見ていた辺り、お気に入りの服だったのだろう。


「せっかくカクリが見繕ってくれた服だったのに……絶対弁償させてやるからねっ」


「燃やしたのはあなたでしょう?さっきの攻撃といい、爆発を防いだ時といい、ウチの責任にはされたくないわ」


 仕切り直しという考えが分かったのか、はたまた単に色々と考える時間が欲しかったのか、距離を開けたエリカも軽く黒い外套を払ってみせるだけでその場からは動かない。今まで通りの口調でカーリアンの軽口にそう返すと、口元を歪めるだけの不器用な笑みを向ける。


「……ふーん、分かってんだ。さっきどうやってあんたの力を防いだか」


「舐めないで欲しいわね。その発火能力はあなた自身を傷付けないと言うのなら答えは一つでしょう。

 さっきやったのは、高熱をごく身近な空間に生んで気流の壁を作る事により爆発による力を削いだ……で正解?」


「正解よ。ちなみにこの服は耐熱仕様なの。結構高いんだからね」


「痛い出費ね。御愁傷様」


「だからあんたが言うなっての!」


 こんなやりとりをしながらも、カーリアンは目の前の女が自分より格上である事を認めていた。

 自分にはまだ新米に毛が生えた程度の経験値しかなく、班長なんて役割をこなしてこれたのは、『紅』という強力な能力におんぶで抱っこしてもらってきたからだ。

 それを認めて。

 悔しさに歯を軋らせながらも認めて。

 その上でもカーリアンは敗けを認めるつもりなどさらさらなかった。

 そんな程度の事は敗けを覚悟しなければならない理由にはならない。シャクナゲもミヤビも目の前のエリカも、黒鉄として敗けの目しかない戦いをしてきたのだ。

 今現在の黒鉄として――エリカが抜けてから入った新参者代表として、情けない真似だけは絶対に晒せない。

 それにカーリアンにはまだ奥の手があった。

 それは力の制御を訓練していて、その副産物として生まれた力の使い方で、カーリアンの師が最後の時に――敵の軍勢を前にたった一人残ったあの時に見せた『景色』がモトネタとなったものだ。


 彼女がかつて見た景色。

 それは『錬血』の生んだ『最後の剣界』の光景。

 『終の剣界(ついのけんかい)』と呼んだ剣の姫最強の力。

 それは視界一杯に生まれ、その数が百なのか千なのか、はたまた万を越えさらに上にいっているのかすらも分からない、圧倒的過ぎる数の剣が咲いた領域だった。

 それを真似ようとして、ただそれに追い付こうとして生まれた粗悪品。

 空間全てを剣で埋めてみせたあの力には到底及ばない。 紅をそこまで広げられるほどの力はいまだに持てていない。

 それでも色々と工夫して、制御力を地道に上げて、紅の特性をも利用し道具を使って『あの景色』に近付けた。

 自分が班長として望まれている『力』を得る為の取って置き。まさしく紅のカーリアンが持つ唯一にして最大の必殺技だ。

 でもその一手を打つ前に聞くべき事があった。

 『彼』とよく似た女性。そして自分ともよく似た立場を匂わせる元コードフェンサー。

 彼女が求めるものは自分にとっても無関係だとは思えなかったのだ。


「聞かないつもりだったんだけどさ、あんたが欲しいものがなんなのか聞いておいてもいい?」


「教えたら手に入れるのを手伝ってくれたりするのかしら?」


「冗談っ。あいつの抱えてるもんはあいつだけのもんよ。例えあんたがあいつの弟子かなんかだとしても、あいつが持ってる色々なもんはあいつだけのもんで、あたしがそれをどうこうする資格もするつもりもないわ」


 こともなげにそう言うカーリアンに、エリカが軽く目を見張った。そして自嘲するように、でもどこか誇らしげな色も含んだ笑みを浮かべる。


「……気づいてたのね」


「そりゃ気付くわよ。あんたのスタイルはシャクナゲによく似てる。その格好も――黒い外套もあいつに似せてるんでしょ?」


「そうよ。ウチはあの人から全部を学んだ。あの人に黒鉄として鍛えられたの。といっても、シャクは手取り足取り教えてはくれなかったから、目で見て反復して覚え込んだだけなのだけどね」


 ――この外套もそう。スタイルそのものを真似たのよ。


 そう小さく一人ごちるエリカが何を考えているのか、それはカーリアンにはさっぱり分からなかった。

 だが、服装すら真似るなど並みの憧れではない事は分かる。女同士ならまだあり得るかもしれない。しかし、彼女は男女の差があってなおそうしたのだ。

 思慕の念というだけでは足りないだろう。

 恋愛感情というには偏りがある。

 でもその思いの強さは、恋愛感情に決して劣るものではない。

 才能もあったのだろうが、彼女はその思いを糧にあの『黒鉄のシャクナゲ』に迫る――彼を連想させるほどの戦闘技能者になったのだ。

 錬血に憧れ、その背を必死に追っていずれは抜かしてやろうと思っているのに、一向にその背が見えてこないカーリアンからすれば、敗北感にも似た何かを感じてしまう。




「それだけじゃない。真っ向からじゃなくて搦め手を好む陰険さとか、能力には全然頼りきってないくせに、それを上手く使う戦闘の巧さとかはそっくりよ」


 エリカは能力に頼りきってはいない。それは今までの事を鑑みても明らかだ。体術のみで紅から身をかわし続け、経験でもって戦場を支配した。

 爆発に巻き込まれるまではわからなかったが、彼女は立ち位置こそ常に変わっているものの、戦場自体は別の地点には移していない。

 カーリアンの感覚的にはそれなりに動いたはずなのに、巧く動き回る事によってそれをカモフラージュしていたのだろう。

 最初の位置――彼女が初めて爆破能力を見せた場所からは十メートルも離れていないぐらいなのだ。

 つまりこの辺り一帯は、エリカが紅による攻撃をかわす為に走り回っていた場所なのである。攻撃をかわしながら、『時限爆弾』をしかけて仕留めにかかるには十分過ぎるほどの時間をかけられただろう。

 しかし、彼女は最後に仕留める為にその能力を使っただけだ。それ以外の攻防は全て技術と戦術によるものでしかなく、最初の『爆破能力を見せ付ける事で両手にだけ注意をむけた時』も、それは単に戦術の一環でしかなかった。

 その戦場の組み立て方は、間違いなくカーリアンが知る彼と同じものだった。

 彼は能力を単なる技術の一環として扱い、それを要に置いた戦い方は絶対にしない。それが使えなくなったのなら、代替え案でこなしてみせる。能力を使わずとも戦い抜いてみせる。

 そんな変種はほとんどいない。それは当たり前だろう。

 持って生まれた能力を使い、その能力頼みな戦い方を好むのは、手にした力を使わずにはいられない人間の性だ。

 また、強力なものであれば兵器の力を優に超える力を、戦闘の中核に置く事が間違いであるはずもない。

 彼の『無限の弾丸を放つ能力』とて決して捨てたものではなく、それを中心に据えた戦い方も出来るはずなのに、それでも彼は能力を絶対視しないのだ。

 だから彼は銃手(ガンスリンガー)とも狙撃手(スナイパー)とも呼ばれない。そんな呼ばれ方は絶対にされないし、カーリアン自身も彼にそんな印象を持った事がない。

 能力は単なるパーツ。戦術を組み立てる歯車。

 使えるなら一番効率的な場所で使い、無駄な事に使う真似はしない。

 それが黒鉄最強の戦士たる彼の見慣れたスタンスであり、それをカーリアンが見間違えるはずがない。


「ふふっ。身につけたスキルはなかなか錆びないものね。外套の方はすでにボロボロで見る影もないというのに。

 それでも捨てられないのだから、ウチの諦めの悪さも筋金入りだと思うわ」


 ――笑えない。

 エリカの自嘲を含んだ言葉にそう思った。少なくともカーリアンには彼女の諦めの悪さは笑えなかった。

 そして、やはり自分は……追いかける側である自分は、彼女が求めるものについて聞く必要があるとも。


「……あなたが欲しいものは何?これは興味本意の質問じゃないわ。教えてよ」


「そう、あなたも追い付けない背中を追っているのね。なら教えてあげる」


 それがエリカにも分かったのだろう。特に悩む素振りもなくあっさりと答えを返す。

 表情から自嘲する色は消えなかったが、迷いのない様子でしっかりと見据えて、カーリアンの瞳を射竦めたのだ。


「ウチが欲しいものはね、『あの人の後継者の証』。今は亡き『宵闇の名前』よ」


 そう言った言葉には迷いがなかった。そう、言葉には一切の迷いの迷いが含まれていなかったのに、エリカはどこか空々しい笑みを浮かべていた。

 矛盾じみたものを感じさせる表情と感情のせめぎあい。

 それがエリカという人間が抱えてきた今までの葛藤を現しているように思えて、カーリアンは思わず息を呑む。


「あなたには分からないかもね。その名前が持つ意味が。

 でもウチにはね、その意味が絶対に必要なの。

 そして黒鉄という呼び名に引き継がれたその名前の意味……それは黒鉄のシャクナゲを打ち倒さなければきっと取り戻せないものよ」


「そんなものの為に――」


「そんなもの、ね。確かにその通りよ」


 思わず洩れたカーリアンの言葉にもエリカは苦笑を返して、惚けた表情をしたカーリアンにあっさりと同意してみせる。


「でもウチには大事なものなの。それが薄汚い暗殺者に対する蔑称でも構わない。ウチはその名前を持った人間に憧れた。救われた。その結果『私という人間はそのつまらないものを』全てをかけて追いかけた。つまりはそれだけの話よ」


 閃光を冠された女。

 冠されてしまった女。

 彼女はやはりカーリアンに似ていた。

 似ているのに、それでも絶対的に違う位置に立っていた。


「ウチはかつて見た光(彼)になりたい。彼のようになって、そこから見える景色が見てみたい」


 ここまでの言葉で終わったのなら、カーリアンの感じた親近感はかなり高い位置で留まっただろう

 エリカは彼の全てに憧れた。それはカーリアンにも分かったからだ。

 カーリアンは彼に憧れて、その相棒である少女に憧れた。師である少女がいなくなった今でも、その

気持ちに揺るぎがない。

 しかし、エリカの言葉はここでは終わらない。

 エリカという人間は、カーリアンほど純粋にはなれず、目指すものの位置をよりしっかりと把握していて――その遠さを客観的に見る事が出来て、その違いは大きな壁となっていたのだ。


「でもね、ウチじゃ彼の全てにはなれない事も知っているわ。ウチには彼やアカツキみたいな人を惹き付ける天性の魅力がない事を知っている」


 そんな追い付けない部分を知って。

 客観的にそれを口にしてみせても、エリカは笑ってみせる。

 笑って自らが目指すものに届かない事実を認めてみせる。


「本当は彼みたいな絶望に沈んだ人を救える人間になりたかった。なれるものなら彼みたいな仲間達の英雄にもなってみたかった。

 でもそうはなれない事をウチは知っている。知っていて、それでもがむしゃらになって全てを求める強さがない事も知っている。

 ならば『彼の中でも暗部となる宵闇にぐらいはなってみせる』。それはウチが彼の持つ要素の中でも目指せる唯一無二のものだから」


 そう笑いながら、彼の中で一番暗い部分だけを目指していると言ってみせて、それにだけは追い付けると言ってみせたのだ。

 一点だけ。たった一点、黒鉄のシャクナゲを構成する要素の中でも、『最強の暗殺者』として知られる『宵闇』にだけはなれると言ったのである。

 それは『彼の全てを追いかける』などという中途半端なものより、ずっと重い言葉である事は間違いない。

 目指すものを諦めない為には強さが必要だ。前を見続ける為にも強さは必要だろう。

 だが、それを諦める強さ。歯を噛み締めながらも諦めてみせて、別のものに向かうには一体どれほどの強さが必要だろうか。


「ウチは最強の暗殺者だった彼を知っている。あなたの知らないであろう彼を知っている。

 あなたでは……錬血の後継に過ぎないあなたでは、黒鉄史上最強最悪のコードフェンサー『宵闇』を目指すウチには勝てない」


 諦めて、諦めて、それでも諦めきらなかった者。

 それが宵闇の唯一無二の後継、閃光のエリカ。

 諦めず、諦めず、全てを諦めないつもりでいる者。

 それが錬血の後継の一人、紅のカーリアン。

 彼女達はたとえ出会う場所が違っていても、争いあうさだめにあったかもしれない。

 彼女達はどちらも純粋でありながら、根幹では対極に位置する二人だ。蒼のオリヒメとカーリアン程度の差異ではなく、ぶつかり合いは避けられぬ違いがある。

 だからエリカの最後の言葉を受けて……カーリアンはただそっと腕を構えた。


「勝てないかどうか試してみれば?雅組(ミヤビの弟子達)の諦めの悪さは、今の黒鉄ではピカ一だって事を教えてあげる」


 この大馬鹿者には言いたい事が山ほどある。山よりもある。

 でもそれは、まずはもう一発ぶん殴ってからにしよう。そう考えたのだ。


 きっとここに自らの師が――あのお節介な少女がいたら、間違いなく一発では済まさないほどに小突き回していただろうから。



題名は適当っぽいですが、当初から書いてあったように、エリカの目的が書かれた話なのでこの題名としました。


自分は憧れた人にはなれない事を知っている。

どれだけ求めてもその境地に立てない事をしている。

足りないものがあって、必要不可欠な要素が不足していて、それをなまじ冷静に頭が回るからこそ理解している。

自分では彼と同じ存在にはなれない。全てを模倣しても彼にはなれない。

でも、その一部……暗く陰惨な一部だけなら真似ができる。おそらくは自分だけがそうできる。

エリカはそういった考えを持って、シャクナゲではなく『宵闇』の名前で知られる存在になろうとしているのです。

その辺りが書けてるかどうか。


ちなみに『エリカ』とはこれも植物の名前から。

花言葉は『孤独』『裏切り』『博愛』。

この内、『孤独』の部分がエリカを作っています。

ちなみにシャクナゲは今までの本文にもあったように『威厳』。


他のメンバーの花言葉も参考にしてみると面白いかも。

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