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37・イノセントシルバー






「やっぱり使っちゃったんだ」


 夜色の空気に、ほんの少しだけ灰色が混ざったような感覚を覚えて、私はそっと彼方へと視線をやった。

 黒でも白でもなく、灰色と言えば思い出す人──今は『シャクナゲ』と名乗る、私の兄になってくれた人がいるであろう偽りの光都の方角を。

 いくらあの人の世界でも……あの広大な『灰色』でも、こんな隣の県にまで届くワケがないのに、私には何故かあの『灰色世界』が再び現れた事に確信が持てたのだ。

 それが悲しい事なのかどうか私には確信が持てない。

 兄が関東を離れた時から、あの世界を嫌っていた事は知っている。遠ざけていた事も分かっている。

 それでも私にとっては、あの人と灰色世界は切っても切り離せないモノだし、私と同じなんだという繋がりみたいなモノもあの世界には感じていたから。

 そしてなにより、私自身はそこまで灰色という色を嫌ってはいないから。




『……たった1つだけ?たった1人だけでもいい?そんな悲しい事言うなよ』


 そう言って彼は笑った。泣きながら笑ってみせた。

 痛みや苦しみからじゃなく、悲しんで泣いてみせた。

 体中傷だらけだったのに……私がボロボロにしたのに、そんな私の為に泣いてくれた。


『一杯作ればいいんだ。自分の大切も、自分を大切にしてくれるモノも、一杯作っていいんだ!』


 そう言って怒ってくれた。

 私の間違いを怒り、考え方を叱り、そしてそんな私の間違いを生んだ環境に怒りの声を上げてくれた。

 自分も同じような立場にあったのに……後から聞いた話じゃ私なんかよりずっと辛い場所にいたのに、私の事を考えてくれた。


『だって君はこんなに暖かい。こんなに暖かくて、小さくて……こんなに可愛い手をしてる。だったら俺が触ってみたくなっても、ちっともおかしくなんかないんだよ?』


 そして私に触れてくれた。

 みんながみんな怖がって、誰も近づいてすらこなかったのに……私を利用しようとする人達以外からは疎まれてきたのに、彼は私の手を暖かいと褒めくれた。可愛いと言ってくれた。

 自分をボロボロにしてなお、そこから発する『拒絶』の音に苛まれ続けていたのに、それでも私の手を握ってくれた。

 私の世界からの攻撃に対して、自分の内からも『世界』の攻撃意志が溢れそうになっていたハズなのに、そんな辛さを欠片も見せない暖かさで、より強く握り続けていてくれた。


『君は人間だよ。だって泣いてる。悲しくて、悔しくて、こんなに泣いてる。涙を流せる君は人間なんだよ。

だからもう……そんな悲しい事を言うな』


 そして──

 そして私の事を人間だって言ってくれた。私がみんなと同じ心を持つ人間だと認めてくれた。

 誰もそんな事を言ってくれなかったのに……『忌み子だ』、『鬼子だ』と化け物扱いをされてきたのに、初めて私を『私』という人間として扱ってくれた。



 ──『居場所』を与えてくれた。

 ──『家族』になってくれた。

 ──『優しさ』をくれた。

 ──『言葉』をくれた。

 ──『暖かさ』の意味を教えてくれた。

 ──『名前』を呼んでくれた。

 ──『笑顔』をくれた。

 ──『知識』をくれた。

 学校にも行けなかったり私に……家族すらも消えてしまった私に、そこで与えられるであろう『当たり前』をくれた。


 そして──


 ──『恐怖』を向けなかった。

 ──『憎悪』を向けなかった。

 ──『好奇』を向けなかった。

 ──『欲望』を向けなかった。

 ──『猜疑』を向けなかった。

 私が私のままでも『嫌悪』しなかった。全てを受けて、間違った時は叱ってくれ、褒めるべき時にはちゃんと褒めてくれた。私の頭を撫でて目一杯褒めてくれた。

 年はほとんど変わらなかったのに、必死になんとか狂ってしまったモノを直そうと足掻きながらも、私を導いてくれた。

 狂っていく世界と『道』の仲間達を抑えようともがきながら、私にはそんな素振りを見せなかった。


 だからこそ、私は今ここにいる。


「悠兄ぃ。今度は……今度こそは、私があなたの帰る場所を守る」


 その為だけに私はいる。


 どんな時を思い出しても、どんな場所に想いを馳せても、あの人は当たり前のように側にいてくれた。そして私もずっと側にいて欲しかったから、兄の反対を押し切ってまで『道』の一人にもなった。

 『道』の一人として、自らの意志で人も殺めた。世界も使った。

 革命軍……そして関東軍と化した『道』の一人、『白銀の(シルバーロード)』──そして『白銀の(シルバーロード)』として。


 さすがに、一人だけおじさんに連れられて関西に逃げたと知った時は頭にきたけど、それでもせっかく出来た関東での居場所を、寸分も迷わずに捨ててしまうほどに、あの人自身が私の居場所だった。

 あの人は──兄のような彼は、全てをくれて、そして私の全てになっていたのだから。



「銀の鈴よ、ただ麗々と唄え

くすんだ色が堕ちきるまで……


白色は嫌い。白は他の色を否定するから。

金色は嫌い。金色は他の色を掠めるから。

銀色は嫌い。銀色は拒絶の色だから。

黒色は暖かい。黒は全部の色が混ざった色だから。


私は全てを万色の群れに隠したばかり。

そっと流れる拒絶の声が

いつかこの身を砕くまで

無限の色はただ私と共にある」



 淡々と紡ぐワードと共に、リンゴーンリンゴーンと、澄んだとは言い難い鈴というよりも鐘のような音が脳裏に響く。

 それはずっと疎んじてきた世界から響く『銀鈴の音』。

 この『頭にあるモノ』と同じく、私をずっと苦しめてきた音。

 それに耳を済ませ、そっと先を見る。

 私の世界の力を受けて荒廃し、人が全て退去した『山都の一角』で、遥か彼方へと視線を向ける。

 その先からいずれ来るであろう狂人の軍勢を見据えるように。

 関西に乱入してくるであろう別の始祖を睨みすえるように。



 関西で動乱があれば、真っ先に動くのはあの男だろう。その推測には確信があった。

 そして北陸や中部からの侵攻よりも、東海からの軍勢が一番厄介だという認識にも自信がある。

 なにしろ今あの人と共にいる彼女は、彼の狂人との因縁が深い。

 今狂人が廃都近くまでたどり着いてしまえば、ひょっとしたらその因縁に引きずられ、私が大好きなあの人までが狂人と向かい合ってしまう可能性がある。そうはならなくても、『紅』の彼女は間違いなく狂人と向き合う事になるだろう。


 それだけは避けなければならない。そんな事態は今だけでも避けておきたい。

 真実を知られたあの人は、多分すごく傷ついているだろうから。そんなあの人の側には、あの人を傷つけない仲間が必要だから。


 帰ってきた神杜は──そして真実を知った黒鉄は、きっと真っ二つに割れているだろう。

 それを見ても、兄は気丈に振る舞ってはみせるだろうけど、それもいつ折れてしまうか分からない危うさの上で、バランスを取っているだけに違いない。

 だからあの人が決着を着けた後にこそ時間が必要だった。

 あの人が完全に立ち直る事は無理でも、せめてまた前を見られるまでの時間が必要だと思った。


 もとより関西の始祖との決着自体にはなにも心配はしていない。

 もし、この国の中であの人が負ける存在がいるとすれば、それは『兄自身』かあの『魔女』以外には有り得ない。

 私は、例え死んでも二度と『拒絶』をあの人には向けないし、他の二人は魔女に比べればまだ容易い相手だろう。

 例え『第二の世界』までしか使えない不完全さを差し引いても、その世界だけで彼は『万鎖の皇』と呼ばれたのだ。偽りの皇でしかない坂上に不覚を取るとは思えない。

 そんな可能性がもし万が一にもあったなら、例え事態がどうなろうと私が付いていっただろう。


「だから悠兄ぃは大丈夫。カーリアンもいる。いくらなんでもカーリアンを巻き込んでまで死を選んだりなんかしない」


 紅の彼女を付いて行かせたのはその為もある。

 万が一坂上に圧倒されて『自分に』負けそうになっても、彼女がいれば『諦められない』という足枷になる。

 そしてカーリアンがいれば、帰る場所も間違えないだろう。

 あくどいかもしれないけど……そしてカーリアンは怒るかもしれないけど、あの人が側にいなくなる恐怖は一度でコリゴリだ。

 後で正直に謝れば、カーリアンなら許してくれるだろう。


 そうは思っていても、口に出してわざわざ確認する辺り、やはり心配なのは間違いない。

 付いていけば良かった、と思う気持ちはやはり強い。

 雅に散々『やっぱリンちゃんはブラコンだねぇ』ってからかわれてきたけど、こればっかりは変われそうにない。


 それでも付いて行かなかったのは、私がすべきなのは『内憂』ではなく『外患』に備える事だと思ったからだ。

 内輪揉めはなるようになる。時間さえあれば、落ち着く形に落ち着くだろう。『スイレン』はやり手だし、『ネームレス・ワン』たるアオイには、かの『変換された運命』の力がある。

 ……アカツキに言わせれば、守護というよりも『呪い』らしいけど。


 その上、必要かもしれない事は、七班(仲間)の『ヌエ』と『シュテン』に頼んできた。

 それが落ち着くまでに必要なのは時間だけだ。


 這いよる運命の糸が──因縁が、あの人の元へ向かうまでの時間を稼ぐ事。それが私だけに出来る事。

 『世界』を持ち、理を持つ私にしか出来ない事だ。


 そこまで思い返して、私は思わず溜め息を吐く。

 なんとなく見上げた先に浮かんだ仄かに赤い月。それがあの『異世界』を思わせた。


「赤は嫌いじゃない。灰色の中でも一つだけ自分を主張しているから」


 だからだろうか。なんとなく戯れに、世界の解放ワードには出てこない色について口にしてみる。


 そして兄の苦悩の大半を占める異世界、私よりも強大な『具現』を司る世界を思い出す。

 そこで他者を蹂躙し、かつての国軍を殲滅し、その度に心を磨耗させていた兄の姿を思い浮かべる。

 純正型の世界は、心を消費し欠損させ、その分だけ力を振るうモノなんだと漠然と思っている。

 だから、いつかきっとあの異世界は兄を壊すんだろうな、と考えてもいる。

 そしてその後、私も後を追うように壊れてしまうに違いないと確信してもいた。

 でも今はまだ、その時じゃない。

 それだけは譲れない。謙るワケにはいかない。

 そう自分に言い聞かせて私はここに来たのだから。


「……行かせないよ、シヴァ。この先は通行止め。あの人の側にいる為だけに、五人目の『新皇』と呼ばれる事を望んだ私の全てにかけて、ここから先は行かせない」


 彼の為だけにこの『世界』を使うと決めていた。兄の為だけに『理』を振るうと決めてきたのだ。

 その為に私は『力』を与えられたんだと思ってきたのだから、ここで『力』を振るう事に迷いなんかない。

 山都を襲撃し、荒廃させ、都市軍を退去させた事も必要だったからそうしただけだ。

 退去していくうちの誰かが『バケモノめ』と悪態をついていたけど、そんな事もとっくに自覚済みだ。

 なんと言われても……なんて思われても、光都への通り道たるこの都市を落とす必要があったのだから、些事にまで気なんか回してはいられない。

 ここは私、山都の関西軍、狂人の軍勢と3つが入り乱れるには手狭過ぎる。なにより敵は一つの方がやりやすいし、ここの軍勢が引いたとなれば関西攻略の拠点として使おうと考えるだろう。

 だから山都の軍勢は邪魔でしかなかった。それだけが全てであり、ここを襲撃するには十分すぎる理由だった。

 そして世界と世界の争いに、純正型以外を下手に巻き込むのもあまり好きじゃない。


「カーリアンは大丈夫。絶対連れて帰ってきてくれる。アオイ達は守っていてくれる。だから私は私の出来る最善を尽くすだけ」


 そうなんとか自らに言い聞かせ、軽くコクンと頷いてみせる。

 それだけで──小さく口に出すだけで、ほんの少しの不安が消える気がしたから。



 まだ視界に軍勢は見えない。

 でもそう遠くないうちにここを通ろうとするだろう。そしていずれは北陸や中部の連中も、関西東部たるこの地に矛先を向けてくるハズだ。

 古都の辺りは、道筋からいってあっさりと北陸が抑えるだろう。しかしこの辺り──かつては奈良と呼ばれていた辺りは、三つ巴の様相で勢力争いを繰り返すに違いない。

 だけど、今だけは──今だけでもここは抑えてみせる。

 あの人の側にいる為に……あの人が何年も前から負い続けてきた、深い傷が癒えるまでの居場所を守る為に。


「私は私。私はスズカ。私は黒鉄。私はあの人の妹。私はあの人の家族」


 何度も口内で繰り返し、そっと頭を傾ける。見えない誰かにお祈りをするように。

 『祈り』はやはり人に勇気を与えてくれるモノだから。

 例え偶像にすぎない虚構に対するモノであっても、その行為には意味があると私は考えているから。


「──神様、私はあなたを信じます。あなたを敬います。尊びます」


 それに……私は感謝している。兄には秘密にしているけど、残酷な神様に私は間違いなく深く感謝しているのだ。

 兄が信じない存在に、私は確かに感謝している。


「あなたが与えた進化に対する代価は重いモノでしょう。変化の代償は大きなモノでしょう。そして兄はその全てを背負おうとするでしょう。ですが、どうか──どうかその重荷を私にもお与え下さい」


 私に『世界』を与えてくれた事、あの人の側にいられるように『拒絶する理』を与えてくれた事を……私は感謝しているのだ。


 それにもし神様がいないならば、私は誰に祈ればいいのかが分からない。何に願えばいいのか分からなくなる。

 私は兄やアカツキのように『……』を信じきっているワケじゃないのだから、『……』を信じて行動を起こす事に迷いを持たないワケにはいかない。

 それに純正型には──いや強い力を持つ変種には、力に狂わない為にも確かに信じる『何か』が必要だと思うから。

 私には絶対的な──でも兄を傷つける心配のない偶像が必要なのだ。


「私はあなたを拒絶いたしません。あなたの私に対する咎ならば喜んで受けましょう。罰にはこの身を差し出しましょう。私にはそれを受けるだけの過去があります。これまでの過去も、これから私が流す数多の血も、それは全て私の意志によるモノなのです」



 兄はバカだった。確かに愚かだった。傲っていた。若かった。

 あの人には悔やむだけの過去がある。それは間違いない。

 この国が壊れる原因の一端は、間違いなく比良野悠莉にある。それは否定出来ない事実だ。

 優しさや強さは時に全てを壊すのだろう。彼のそれはきっと強すぎたのだとも思う。周りを惹きつける以上に狂わせてしまうほどのモノなのかもしれない。

 それでも私にとってのあの人は、間違いなく救いだった。

 私はあの人の優しさに救われたのだ。

 それは確かな事実だ。

 ならば彼によって壊れたモノの報いは、彼に救われたモノにも架されるべきだ。

 そうでなければ救いがなさすぎる。


「私は全ての咎めを受けましょう。嘲りを拾いましょう。蔑みを甘受いたします。これから流す血もあなたの御心には背くでしょう。でもそれは私自身の意志によるモノ──」


 ──そう、全ては私自身が決めた事なのです。


「そして今また、私は兄の居場所を守る為に力を使います。悠兄ぃがシャクナゲとしていられる場所──羽根を休められる居場所を『銀鈴の世界』を使ってこの手で守ります。あなたの教え、考えに背くのは全て私の意志です」


 それは覚悟よりも深く、誓いよりもなお確かな誓約だ。偶像に向けたモノでありながら、自分自身にも誓う祈りよりも真摯な想いだ。

 そして誰にも汚せない私の在り方の全てだ。

 それだけを私は祈ってきた。願ってきた。誓約した。

 私は祈りの為の言葉は知らない。それを学ぶ機会はなかった。

 だから私なりの精一杯を込めて訴えかけるだけの拙い祈りでしかない。

 それでもひたすら真摯に祈る。


 ──神は信じない。

 ──運命は信じない。

 そう言った二人の純正型の分まで私は祈る。

 そうすれば神様や運命は、兄よりも私に深い重荷を与えてくれると思えたから。


 そしてそのままの姿勢で私は静かに時を待つ。

 東北の始祖となりえた変種としてでも、『新皇』の最後の一人でもなく、一人の人間として──黒鉄として、守りたいモノの為に手を汚す覚悟を秘めて。





「私は望みません。こんなにも早くあの人が壊れるなんて絶対に認めません。そんな未来は拒絶します。世界の理全てを拒絶しうる『銀鈴(私)の世界』にかけて──」


シークレットクランよりサルベージした情報のまとめ

ノルンズアートについて


アカツキこと結城智哉の『付与する世界』において、新たに力を与えられたモノの総称。

アカツキの世界そのものを指してそう呼ぶ場合もあるが、普通はその造物のみを指す。

普通なら持ち得ない力……普通の物質なら持たない運命を与えられたモノ、という意味から『運命の女神の造物』と名付けられた。

しかし実はアカツキの世界自体は、その異端で強大なモノとは違い、指先の周囲10センチ程度にしか展開しない小さなモノで、純正型達の中でも最小サイズだったりするらしい。


一般的にかなりの試作品が作られ、廃棄されてきたモノと思われるが、『武器』として残っているモノが四つだけあるとの事。

それぞれが目的を持って作られたモノだけに、強い運命を与えられてはいるが、それを使用する為の代償──つまり使用者として造物とリンクする為に支払う代価──も大きなモノとなる。


一つ目は『シャクナゲ』。

比良野悠莉の『灰色世界』を代償に彼を使用者と認める二つで一つ、一つで二つの二丁拳銃。

これは『無限の空圧弾精製』という力を与えられたが、作られた目的としては代償の方になる。

つまり『比良野悠莉の灰色世界を抑える事』の方が目的であり、そこから派生した能力はおまけみたいなモノらしい。


次が『ファム・ファタル』

『運命の女性』と名付けられた造物。

『ネームレス』と呼ばれるコード持ち達の暗部と言える者達の中でも、『ネームレス・ワン』と呼ばれる者に与えられたモノ。

二刀一対の小剣であり、代償や能力については不明。


三つ目は『ノーフェイト』

これについては一切の記載がない。

ただ『全ての運命を断ち切る運命毒』とある。

そして『ノーフェイトには触れてはならない』と。

比良野悠莉と接触する際に結城智哉が作ったモノだから、恐らく作られた順番としては一番初めのモノに当たるのだろう。

ただこれについての記載は、後からいくつもデリートと上書きが重ねられ、情報班の力を持ってしても修復ができない。

これを記載したのが『アカツキ』か『シャクナゲ』かはわからない。しかし、彼等がそれほどに恐れたモノなのだとしたら、『ノーフェイト』とは一体どれほどの力を持っているのか。


最後のモノの名前はない。

どこにも記載されていない。

ただこうあるだけだ。

『我が親愛なる友に送る』と。



某月某日、情報班副官が記す。

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