19・トゥルー オブ トゥルース
これについては作業報告?か何かに色々と書いてます。
当初よりかなり長くなりました。
加速しすぎなところを抑えたつもりですが、結構物語は加速し始めています。
──生きろ。
そうアイツに言われたのを覚えている。
その幾重にも瞳孔が重なった金の瞳で、真っ直ぐに見据えられながら。
──生きられるだけ生きろ。死ぬ瞬間まで生きろ。
死にたいと思った事がある。
死ねば楽になる……そう逃げに走りたい時があった。
いや、今でもたまに思う。
なんであの時、アイツの言葉を聞いちまったのか。なんであの時、アイツの『俺を信じきっていた』真っ直ぐな瞳を見ちまったのか……。
もしあの時アイツと話さなければ、今の苦しみや悲しみを抱える事もなく、『真実』を孕んだ狂った状況に悩む事なんてなかった。
アイツらに出会わなければ、『戦い』なんて似合わない真似をしなくて済んだ。
金の男の言葉が胸に楔を穿つ事も、黒の男の悲しみを知る事もなかった。
──アイツは未来(この先)の為には必要なヤツなんだ。でも今のアイツは頼りないし、壊れかけてる。俺がいなくなっても支えてくれるヤツが必要なんだよ。それをあんたに頼みたい。いつかアイツの事を、本当に大事に思ってくれる人が出来るまで……。
そう言って役割を与えた男の言葉に、今も俺は縛られている。
きっとこれから先、ずっと……ずっと縛られ続けるだろう。
俺が金の男の言葉による楔に捕らわれてしまった以上……そして黒の男に夢を重ねてしまっている以上、死に逃げる事すらも出来そうにない。
責任と夢と楔に雁字搦めにされ、溜め息を吐く日はこれからも続く事になるのだろう。
大きな秘密と、知らなければ良かった過去を知ってしまった以上、俺はこれから先もずっと『真実』にうなされ続けるに違いない。
……だがその程度なら、『真実』を得た代価としては余りにも安い代償だろう。
金の男は文字通り『命を賭けた』し、黒の男は『心を壊した』のだから。
俺の悩みなど、当事者であり、強力な変種である2人には遠く及ばない。
そこに疎外感を感じるよりも、『自分が変種じゃなかった事に感謝している』辺りが、我ながら最悪で……本当に救いようがない。
「カブトさん。二班の副官殿が面会を求めていますが……」
作業の合間にボーっと考え事をしている最中、部屋の外からかかったそんな声に、小さな溜め息を1つ漏らす。
──来たか。
なんの為に来たのかについては、心当たりがあり過ぎるぐらいだが、いずれは来るだろうと思っていた瞬間でもある。
そして真実を暴こうとする相手としては、予想の範囲内の相手だ。
そう思っていたからこそ、あのチビッコは前から苦手だった。
「……通しな」
そう返して、小さな苦笑を顔に貼り付ける。
アゲハがここにいない現状に、今になってチビッコにハメられたと気付くが、それも今となっては後の祭りだ。もうあまり腹も立たない。
かの少女にとって『狐狩り』の『狐』とは、始めから『真実』を指していたのだろう。
そして『狩り』とは、それを得る為の状況を作る事だったのかもしれない。
俺のガーディアンであるアゲハをここから引き離し、もう1つの真実の保管庫たる六班を掻き回す……その為に今の状況を利用したのだろう。
俺はそこに気づけてなかったが、果たして黒の友人は気づいていたのだろうか?そんな事を考えて軽く頭を振る。
例えどんな状況になったとしても、アイツが真実を語る事など有り得ない。
『絶対に有り得ない』。そう思い直して。
銀色の少女に、最初から狙われていたのは俺と六班。
『真実』そのものを守る三班に比べれば、まだ緩いこの2つだ。
それが分かっても悔しいなんて思わない。むしろ安心する。
あの二班副官が、こんなヤバい橋を渡ってまで求めるという事は、他の誰も『真実』には行き着いてはいないという事だから。
そんな事を考えている俺の目の前で、執務室の扉がゆっくりと開く。
その扉の先に、いずれはやって来たであろう『真実を求める者』の姿を映しながら──。
****
廃工場の奥の一室、《五班本部執務室》の一番奥の席に座るカブトは、いつもよりずっと渋い顔をしていた。
そう……いつもみたいに、感情が浮かぶ表情をしていなかった。
無表情というのとは違う。それは感情が全く浮かばないモノを指すと思うから。
だから今のカブトの表情を表す言葉としては、無表情という表現は当てはまらない。
言うなれば『仮面』だ。今の彼は、似合わない仮面を被っている。
五班班長にして、この黒鉄でも最も古い人間としての仮面を。
「なんの用だ?」
その質問は蛇足だと思う。だが、彼はそう聞いてきた。私の用件くらい分かっているハズなのに。
「用もなく他班本部に来るのぁ感心しねぇな?ウチも暇じゃねぇんだ」
「……そう?……まぁ私も暇じゃないわ」
「なら用件に入ったらどうだ?今ならアゲハもいねぇ。禅問答なんかしてる余裕がねぇのはそっちだろ」
やはり、私がアゲハの不在時を狙って来た事には気付かれていたか。まぁ私が、この五班本部の工場跡地に1人で訪れた事など一度もないのだから、それぐらいは気付いていると思っていたけど。
「……なら単刀直入に」
何を聞くかはあらかじめ決めていた。答えが返ってこないであろう事も予想している。
それでも迷わずに私は疑問を発する。こちらには疑問の答えに見合うだけの手札がないのだ。
策など弄しようもない。
「……アカツキとは何者なの?」
だから最初から核心へと切り込む事にした。時間もないし、手札もない。何より職人気質なところがある彼には、下手に回りくどい事をすれば逆効果だろう。
確かに他にも聞きたい事は山ほどある。シャクナゲの事もそうだし、関西軍の事もそうだ。
何故関西軍は、力押しでカリギュラを落とさないのか?
何故関西軍は、散発的にしか攻めてこないのか?
白鷺や他のレジスタンス組織には、徹底的な弾圧と排除を遂行しているのに、何故『黒鉄だけは例外なのか』?
黒鉄の戦力は確かに他レジスタンス組織とは一線を画している。自衛隊の置き土産や、独自にあちこちからの仕入れた武器があり、優れた力を持つ変種がいる。
恐らく最高ランクのパイロキネシストであろうカーリアンや、ゴキブリじみた生命力を持つナナシ、極めて高い身体能力を持つシャクナゲがいる。
何より真なる『新人類』とヴァンプ達が呼ぶ変種──純正型のスズカがいる。
彼女がいるというだけでも、黒鉄が単なるレジスタンスとは一線を画しているのは間違いない。
他の純正型は、多分そのほとんどがヴァンプ──しかも高位の地位を持つヴァンプになっているであろうから。その強い力ゆえに、より力を過信し、より力に狂ってしまっているだろうから。
だがそれだけでは、関西軍の動きは腑に落ちない。
圧倒的物量差と、兵員差を持ってすれば、カリギュラを落とす事ぐらいは『出来るハズ』だから。
たとえスズカがいたとしても、だ。
なにしろ関西の将軍自身も純正型だと聞くし、関西軍には他にも純正型がいるかもしれない。ならば、スズカ1人くらいは抑えられるだろう。
それをしない理由が気になる。
誰も気にしていないのか、気付いていないのかは分からないが、関西軍の在り方──他のレジスタンスに対する処置からすれば、黒鉄に対してだけは『ぬる過ぎる』。
……そう、確かにそれも聞いてみたい。その答えが聞けるなら、どんな条件を付けられても構わない。
恐らく彼は、その答え──あるいはそれに準ずるモノを知っているハズだから。
だけど、その疑問は抑えて、まずは一番聞きたかった質問をぶつける事にしたのだ。
私の中にある懸念、一番の最悪の可能性……『新皇=アカツキ』の方程式を崩す為に。
決してこの推論は、誇大妄想から生まれたモノではないという自信があるし、そう的外れ過ぎる推論でもないと思う。
アカツキが黒鉄を起こす少し前に、『新皇』──真なるヴァンプの始祖たる変種が、病に寄り伏せっているという情報が行き交いだし、公の場に姿を見せなくなったのは間違いない情報なのだから。
そして、関東軍が拡大を止めたのもそれと同じ時期である。
そして2人共純正型の変種であり、共に一組織の頭になりうるだけの手腕を持ち、実際トップに立った2人。
そして2人揃って一切謎に包まれた存在だと言う事が、より私の中の考えに真実味を帯びさせる。
この共通項の多さは、こんな懸念を覚えさせるには十分過ぎるだろう。
なにしろこの懸念が当たっているならば、関西軍のぬるさも、黒鉄の徹底した秘密主義にも答えが出るのだから。
関西軍──ひいては将軍は、自分と同じく純正型であり、自分よりも強い力を持つであろう『新皇・アカツキ』を警戒して、あまり強くは動けないのではないか?
本当にアカツキが死んだと確信が持てないからこそ、甘くならざるを得ないのではないか?
黒鉄の秘密主義もそこに起因するとすれば、より現実味を増す。
関西軍を牽制する為だけに、『アカツキの死』をあやふやにしているのでは?そういう可能性が出てくるのだ。
もちろん『新皇=アカツキ』が事実となれば、黒鉄の存在意義──『ヴァンプの不当な弾圧に抵抗する』組織という理念にも反するだろう。
この国でのヴァンプの象徴は、あくまでも『新皇』なのだから。
将軍は、所詮『関西のヴァンプのトップ』に過ぎないのだから。
そんな存在が、ヴァンプに対抗する為の組織を作ったなど、笑い話にもならない。
黒鉄が空中崩壊する理由にもなりうるから、黒鉄は徹底した秘密主義を貫いているのだとしたら?
だからこそこの疑問を一番に持ってきた。
答えが返ってこなくても、多少の動揺がカブトから見られれば、私もこの推論は『ずっと胸に秘め、表に出さないようにしなければならない』。
黒鉄が崩壊すれば、カーリアンの居場所はなくなってしまう。そんな真似を引き起こす『真実』など、あってはいけないから。
──だが、カブトは私の疑問には答えない。その表情でも答えは見せなかったのだ。
あくまでも冷静な面もちのままで嘆息を漏らし、フンっと小さく鼻を鳴らす。
それはなんというか……彼らしくない表情。というより、彼らしくない所作だったと思う。
なんというか、疲れたような……そして私を憐れむようなそんな仕草で、彼は虚空を見上げた。
「アカツキはアカツキだ。それ以外の何者でもねぇ。変わり者の変種で、スズカ以上に変な純正型。それ以外では有り得ねぇ」
この言葉は真実なのだろうか?断言する自信がない。
彼はお世辞にも嘘が上手いタイプではないと思ってきたが、この言葉が嘘だったとしたらその考えを改めねばなるまい。
真実だったとしても同様だ。
この私でも真偽が見抜けない表情をしていたのだから。
事実を淡々と告げているようにも見えるし、嘘を並べているようにも感じられる。
『隠す必要がない』と言わんばかりの表情にも見えるし、『隠し通す』という強い意志を秘めているようにも見える。
ただ間違いないのは、カブトが言った言葉は、黒鉄ならば誰でも知っているアカツキの姿だという事だ。
それは秘密でもなんでもない。私が調べたアカツキの情報のままであり、皆が知っているアカツキの姿だ。
そんな事が聞きたいワケじゃないのだけは間違いない。
「……私が聞きたいのはそんな事じゃない。……アカツキは……」
「アイツはアカツキ。最初のコードフェンサーで、それ以外の何者でもねぇ。強いてアイツについて、他のヤツらが知らない情報を知りたいってんなら、将軍の野郎とは顔馴染みってくらいか?」
「……将軍と?」
「ふん、そうさ。野郎とアカツキは、昔からのツレだったんだとよ。野郎がヴァンプの親玉になるまでは……だがな」
アゲハがいねぇ状況を作り出した手間賃だ、と最後に付け加え、カブトはジッと私を見る。
そこには様々な感情の揺れが──私には分かり得ない想いの数々が見て取れ……
私はそれ以上この事には触れない事にした。
ただ嘘を吐いただけならば、その感情はこうまで雑多なモノを含まないだろう。
誤魔化しに走っているだけなら、その考えは誤魔化す事だけに向けられ、こうまで色々なモノを含んだ瞳にはなり得ない……そう思ったからだ。
その感じからして、このまま言葉を続けても彼はこれ以上口を割らないだろう……そう思い、話の切り口を変える事にする。
それにアカツキが何者か、という事と同じくらい、彼については知りたい事もあったから。
「……アカツキはなんの為に今の黒鉄を……今みたいなあやふやな黒鉄を作ったの?」
「…………」
「……軍事に特化したワケでもなければ……情報戦に特化したワケでもない。……ヴァンプに対抗する為だけなら……今の黒鉄はその目的に向かう手段があやふや過ぎる。……その目的は?」
「目的は──」
「……彼が関西軍に対抗出来るだけの組織を作れるのは間違いない。……彼には人を惹きつける力があったから。……でも今の黒鉄の体制は効率的とは言えない」
途中彼が口を挿んできても、私は気にもせず一気に言葉を吐き出した。そうしなければ、切り口を変えた意味がないと思うからだ。
私のペースに持ち込む為にも、彼には口を挿ませないまま、一気に疑問をぶつけた。
黒鉄は武器の調達からその扱いの訓練まで、ほとんどを自立してやっている。
医療施設(二班)も完備し、各種施設や武器などを整備をする為の組織(五班)を持つ。
発電などのエネルギー開発施設もあるし、情報を収集する為の組織(六班)もある。
でも、そのどれもが特化してはいるワケじゃない。
確かに暮らしやすい生活空間を作る上で、必要な施設が多数あるのも間違いないが、ヴァンプと対抗する為に──『その為に作られた組織』にしては甘すぎる。
ぬるすぎる。
そして緩すぎる。
ヴァンプを──関西軍を打倒もしくは圧倒しなければ、黒鉄やカリギュラの安泰など有り得ないのに、まずは生活空間の維持から始めている感があるのは、大きな違和感を感じざるを得ない。
確かに黒鉄に対しては、何故か甘い対応を取る関西軍だが、黒鉄は黒鉄でそれに負けないくらいに甘い組織だと思う。
まずは力。何を置いても力がなければ、いかに生活空間が安定していても、本末転倒もいいところだろう。
二班を前線に出さないのも、甘さと言えば甘さだ。
都市の防衛の為だけに、貴重な戦力──四班や五班を割くのも分からない。
六班が機密保持と情報戦の為だけに動くのもそうだし、七班が遊撃に留まるのもそうだ。
実質的な戦闘部隊──前衛部隊は、《一》と《三》の2つしかない。
他は守る事に主眼をおいた部隊であり、その支援の為の班だと言える。それらに多大な労力と資材を費やしているのが現状なのだ。
アカツキが本当に戦う為、守る為だけに黒鉄という組織を作ったのなら、もっと厳格な規律を作り、『戦わなくてもいい』という逃げ道など残すべきではない。都市に保護を求めてきた人々にも命をかけさせるべきだ。
私ならそうするし、その方が強い黒鉄を作れるという確信もある。今の黒鉄よりも居心地は悪くても、今よりも数段レジスタンスらしい組織形態になるだろう。
戦いたくない人は労働だけに留まらせる?
何をふざけた事を……。遊びなら他でやればいい。善人ごっこがしたいなら、仮初めでもいい、平和になってからにすべきだ。
仲良しこよしの人権団体ならそれもいいだろう。
そんな甘い考えを、ひねた私もちやほやしてあげる。
──そんな甘さが許される世界だったなら。
だが、黒鉄はあくまでもレジスタンスだ。
レジスタンスのハズだ。絶対的に不利な立場にある、弱い組織のハズなのだ。
それなのに、このぬるさはなんなのだろう?
アカツキほどの男なら──純正型であり、これほどの規模を持つ勢力を作れる男なら、もっと効率よく『強い黒鉄』を作れただろう。
厳格な規律とその中での自由の保障。現状での緩い生活よりも、先を見据えさせる。傷を舐めあう馴れ合いは、後になって好きなだけさせればいい。
それぐらいでなければ、『本当なら生き残れないハズ』だ。
そんな組織も、彼ならば作れたハズなのだ。
今みたいな間怠っこしい形の黒鉄が作れるぐらいなのだから。
だがそんな私の疑問に、カブトは黙したまま答えない。
眉間に皺をよせ、重々しい溜め息を漏らすだけだ。
そのまま彼は何も答える事なく立ち上がり、佇む私の横をすり抜けると、執務室の入り口の方へと足を向ける。
「……タイムオーバーだ。今日はもう帰んな。アゲハのヤツがもう帰ってきたからよ」
そしてそう言って部屋の扉を開けると、無言で彼を見やっていた私へと顎をしゃくり、退室を促してきた。
──そんな誤魔化しで……と一瞬激昂しそうになった。
私は色々と分の悪い賭けをしてここにきたのだ。その程度の誤魔化しで引き下がると思っているのか……そんな考えを抱いたから。
だが、彼の言葉が『もう帰ってくる』じゃなく、『もう帰ってきた』だった事に気付き──私の背筋を冷たい汗が流れ落ちた。
その言葉の意味が浸透すると共に、それが嘘ではないと示すように、私を見やる視線をどこからか感じて。
「……みんなを欺くなんてイケナイ子ね。
でもその勇気だけは誉めてあげる」
私が視線に気付いた事を悟ったのか、そう背後から話しかけてくる声。それは甘い響きを乗せたモノで──
甘さを含んだ陶酔と共に、同等の恐怖が背筋を駆け上がる。
その声は、本当にすぐ後ろ……カブトの言葉の意味を悟ると同時に、すぐさま扉へと向かって歩き出している私の、すぐ後ろから聞こえてきたのだ。
それは『さっきまで私がいた辺りから聞こえてくる』という事に他ならない。
さっきまでは、確かに私とカブトしかいなかったハズなのに。
その声は、幻想的であり蠱惑的な響きを持っていたが、それと共に絶対的な強者のモノだと分かる存在感をも放っている。
それは今までも覚えのあるモノ──五班最強の『幻影』の声音だ。
言葉の意味を──誉めてあげるという目線の高さも共に──理解するよりも早く、本能的に私はその声の主には相手にもされていない事が分かる。
「……その答えが知りたければ、『コードフェンサー』の存在する意味について調べなさい。フロイライン」
そう背後から告げる言葉に、振り返って問い返す勇気などなく(間違いなく、先ほどまでは誰も周りにはいなかった。私の知覚能力でも感知出来なかったのだ)、私はそのまま逃げるように執務室を退室した。
アゲハを相手に回すのはいくらなんでもマズい……そう思ったから。
それが出来るくらいなら、最初から六班と五班をひっ掻き回すような真似はしなかった。
なにしろ彼女は、ひょっとしたら『私の』カーリアンよりも強いかもしれない変種の1人だ。
私がこれ以上でしゃばり続けて、カーリアンまで彼女に目を付けられるのだけは、絶対に避けなければならない。
少なくとも、彼女の力が把握出来るその時までは。
だから私はそれ以上口を出す事もなく、カブトに言われるがままに執務室を後にする。
──背後を振り返る勇気なんて出せないまま。
最後の……恐らくはアゲハのモノであろう言葉を、しっかりと脳裏に刻みつけながら。
そして……
何1つ真実を得られなかった事に、より増した焦燥感に苛まれながら。
今回は番外編や紹介ではなく、普通に後書き。
カクリとアオイが視点の場合、やはり物語はグングン進みます。
カーリアン視点では全く進んでなかったのに。ちょっと反省です。確かに物語を加速させようとは思ってましたけど。
トゥルー オブ トゥルースは響きで決めました。意味的には繋がりがないですが、『真実』を強調する題にしたかったので。
途中経過……シンフォニアは全く進んでません。ノクターンも全く。
次回更新は次の日曜日まで、と目標だけは立てています。
どちらを優先的に見たいか等お聞かせ頂ければ、頑張り方を変えますが、今のところノクターンをとりあえず頑張る方向でいます。
大分先に載せる予定の話『ロング セイ グッバイ』……シャクナゲが将軍暗殺に向かう過去編は書けてるのに、次の話は手付かずとか……。
プロットを立てておいたら、書きたいシーンを先に書くクセがありまして。
これはまぁ先のお楽しみにして頂けたらと思います。番外編でありながら、本編にもつながる間違いなく山場の話ですから。
次はシャクナゲ視点……というより、これからはシャクナゲ視点とカーリアン視点が増えていきます。
誤字・脱字には気をつけておりますが、もしお気付きの際はご指摘よろしくお願いします。