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三部予告とお知らせ。

お知らせの方が重要です。

予告は結構サラッと。








今回の予告編を持ってこのページは終わり、次のページに三部を移す予定です。

本来でしたら、こういったお知らせは最後にして締め括るものなのでしょうが、先にお礼を述べたかったので頭に持ってくる事にいたしました。

読んで下さった方々、定期的に感想を下さったさくま様を始め、時間を割いて感想を書いて下さった方々、ならびにこういった暇を見て書いたお話を載せるページを運営して下さってる方に厚くお礼を申し上げます。

本当にありがとうございました。




さて、では予定本編に入る前に次回、ページが切り替わってから変更する点をお知らせします。

次回からは本来の書き方……より小説の作法に従った文章で書かせて頂く事にしました。

簡単に言えば、文章冒頭の部分にスペース――

 こんな形に開ける事はやっていましたが、それ以外はざっと書くという形から編集を重ねて上げていた為、結構おざなりでした。

記号も大文字だったり小文字だったり、会話文……「」内の部分ではスペースがあったりなかったり。

ここ以外で書いてる文章はその辺りをそれなりに統一して入れてきたのですが、その普通の癖が混じって統一感がなかった点はお見苦しい限りだったと思います。

その辺りを統一しようと思います。


続いて更新について。

週一ペース、月曜更新をやってきましたが、そちらも変更する事にしました。

第一の理由は、この小説は書いた自分しかアップ前に見直す事が出来ない為です。

誰か……プロの方でしたら編集さん、趣味で運営している個人のサイトでもアップ前に誤字や脱字を見直してくれたり、全般的に推敲して下さる協力者の方がいらっしゃる人もいるでしょう。

でもこの話は自分のみで書いて、自分で編集して、自分でアップしている話です。

やはり自分の目だけでは甘くなりがちであり、アップの日時をある程度固定してしまうと、それに追われてより見直しが甘くなる理由にもなります。


第二に、これも自分の甘さが理由ではありますが、更新日を決めてしまうとそれが基準になって話を切ってしまう為。

月曜に更新予定→なら文章はこの辺りまでと無意識に考えてしまう面があるからです。

作中の前書きや後書きなどでも、

『いまいち納得がいかないけれど、まぁいいかと思いまして』

『後で纏めて編集します』

など、書いてる部分がよくありますが、第二の理由が大きな原因となってる部分は否定できません。


他にも小さな理由はいっぱいありますが、この辺りがメインで更新日を固定するのをやめる事にしました。

月曜更新で、その日を待っていて下さった方々がいらっしゃいましたら申し訳ありません。

しかし、前書きや後書きで言い訳をするような真似や、後々編集すると言いつつなかなか編集にかかれない現状を見て、逆月なりに考えた結果です。

ご理解のほどをお願いします。

更新は月三回から四回の予定ですが、これも明記はしておきません。縛りがあれば同じですから、更新はあくまでも不定期。

ただ、今までよりも納得のいく形で更新する事をお約束します。

逆月は逆月であちこちに無作為に話を書いていますから、お暇な時はご連絡ください。

こそっと他に書いたお話のある場所をお知らせします。




予告編について。

今回は一部終了時の予定編とは違い、三部のメインとなるお話については書いておきません。

間に挟む小話、ネタ話についてのみ書かせて頂きます。

メインの予告としては、学園、長尾、芝浦なき東海の混迷、黒鉄内での争いを主軸としています。

南下し、古都を攻めつけている北陸の女王・長尾まりあはどうするのか。

廃墟の街では四、五、六の黒鉄はどう動くか。

幻影や風塵が暗躍しはじめる中、蒼は葛藤を抱えて……。

それに対して他の黒鉄達は?

さらには不穏なる学舎のなれの果て、壁の向こう側である《学園》から12委員長の一人、調停委員長・サジタリウスが届けた学園祭への招待状。

学園祭というものに強い憧れを持つスズカ(この辺りはスズカの場面で書いてます)は、当然強い興味を示し、カーリアンも学園祭という懐かしい響きに心を動かされる。

そして黒鉄の裏に潜む暁の遺産たる名無し達は、本来の頭役であるネームレス・ゼロの意思で動きをみせ、死に場所を探す益荒男(ますらお)は黒衣を纏う。

そんな中、シャクナゲは第三の扉を開ける……かもしれません。まだ第三は開けない予定ですがちょっと考え中です。


三部は関西編のラストを飾るお話になります。

当然ボリュームはかなりのものとなるでしょう。

伏線は次々に明らかとなり、色々と込み入ってもきます。しかし、そういった面から当然ではありますが、当初決めた話から削った部分としては、この三部の中から出た部分がかなりあります。

九州に追いやられた政府が北上してくる話は削る予定ですし。

ぶっちゃけた話をするなら、この部分だけでもかなりの量になるんですよね。短いお話一本仕上がります。

他にも諸々削った箇所はありますが、それの帳尻をあわせるのは最後に回します。


ラストの五部はどうなるのか。その辺りも出てくるのか。

正直今の時点でラストの展開が分かったならびっくりです。多分分からないでしょう。

でも、経緯をみれば納得出来るとは思いますが。

これ以上はネタばれなので自粛。


また、新生三班の活躍も三部では見られると思います。

二部では空気だったカクリも、面目躍如する予定。

カクリの考察は復活するのか。

その辺りもご期待くださいませ。

では予告編……会話のみの流れのみの簡単な話もありますが、それでも三部に期待を寄せられる出来になっていれば幸いです。




廃都のセイレーン?



「セイレーン? この現代に?」


「……そう。……今、この街ではそんな存在が結構な噂になっている」


 海魔セイレーン。その名前ぐらいは知っていた。

 とりあえず海原のど真ん中で人を引き寄せる歌を歌い、その歌に引き寄せられてやってきた船を難破させるとかなんとか、そんな感じだったか……というあやふやなレベルでしか知らないにしても、その名前はかなり有名な海の魔物のものである事ぐらいは知っていた。

 しかし、だ。今いるこの街は、別に大平洋のど真ん中でも大西洋のど真ん中でもなければ、意表を突いてインド洋の真ん中でもない。

 廃墟が建ち並ぶ要塞都市《廃都》だ。

 海魔のような存在自体眉唾物である上に、例えもし《セイレーン》なる魔物が実在するにしても、いくなんでも場違いにもほどがある。

 しかし、その話を持ってきた少女……廃都が誇る武装集団にして、この国随一のレジスタンス組織《黒鉄》第三班の副官補佐を務めるカクリは至って真面目な表情だ。

 黒鉄第三班の面々の中では、一番そういった類の噂話を鼻で笑ってバカにしそうなタイプであるだけに、そうそう笑い飛ばしたりも出来ない。

 もちろん、彼女の場合適当な噂話を吹き込んで、その隙に何かを企んでいる可能性がある事も否定は出来ないのだが。


「誰か歌で港にでも引き寄せられ、海に引きずりこまれそうになったヤツでもいるってのか?」


「……信じてないわね」


 鼻で笑い飛ばす真似はしなかったが、それでも訝しげな表情までは抑える事が出来ない。これがカクリじゃなくヒナギク辺りが話を持ってきたのなら

『今日は帰ってゆっくり休め』

 とでも言ってから頭でも撫でてやって相手にもしなかっただろう。

 ヒナギクは、三班を率いるシャクナゲの直属の部下にあたる少女だ。彼女は非常に優秀である事は間違いないのだが、いかんせんそういった噂話などを鵜呑みにしすぎる所がある。


「信じろって方が無理があるだろ。せめて濡れ女とか海坊主ならまだしもさ、なんでこんな極東の島国で……しかも四国との内海に面しただけのこの街でセイレーンなんだよって話だろ」


「……まぁ、その気持ちは分かるけど……この噂話だけは単なる眉唾物の噂なんかじゃないの」


 とりあえず全く信じる素振りのないシャクナゲに、その態度も仕方ないとは思いつつもやや憮然とした表情は隠しきれずに、カクリは小さな溜め息を漏らした。

 まるでこんな怪しげな噂話など、自分も報告したくなんかない、と言わんばかりに。


「……だって私がその歌を聞いたんだもの」


「歌? あぁ、だからセイレーンか。でも暇潰しに歌を歌うヤツぐらいならいてもおかしかないだろ。何も自由時間に歌を歌っちゃいけない、なんてルールはないんだからさ」


「……それはそうね」


 そう、いかな廃都防衛を主な仕事とする黒鉄であっても、自由時間に歌を歌ってはいけないというほど厳格なルールはない。

 むしろカクリからすれば――もう少し厳格な規律が黒鉄には必要だと考える彼女からすれば、規則が緩すぎると思える面もあるぐらいだ。

 なかでも最精鋭部隊とまで呼ばれる三班は、その評価の高さに反比例して軍隊色の薄い集団である。もちろん縦の規律はあるものの、横の連帯感をより大事にしている班なのだ。

 三班の面々は、自由時間は自由に過ごす為の時間だと完全に割りきっており、その辺りは他の班よりも緩いぐらいだろう。

 お祭り騒ぎがあれば、参加率が一番高いのは間違いなく三班だ。

 それはもちろん分かっている。

 演歌を情緒たっぶりに歌おうが、ワルツを踊り狂おうが、職務に私情を持ち込まなければ三班では個人の裁量次第だ。

 それでもカクリは真剣な表情を崩さない。

 その《歌》は大きな問題なのだと、その表情こそが語っていた。


「……でもその歌は凄く綺麗で……悔しいけれど私でも聞き惚れた。……そしてここからが問題なんだけど」


「なんかあったのか?」


 問題。

 カクリ問題だと言った。上司であり、三班を束ねるシャクナゲにそう言ったという事は、単なる噂話を伝えにきたわけではない事を指し示していた。

 ここまで大袈裟に話を振っておいて、特に問題はなしだったとしたら、副官を補佐し、ひいては班長をも補佐して、班の運営に関わる役職にあるカクリの沽券にも関わってくる。

 もちろん、なんらかの裏工作を施す為に、大風呂敷を広げて小さな噂を大きく吹き込もうとしている可能性もやっぱりあるのだが。


「……その歌を聞いたのは、昨夜ウチ――医療小隊の打ち合わせ後に部屋に帰ろうとした時の事よ。……どこかから子守唄が聞こえてきたの」


「子守唄、ねぇ。セイレーンって子守唄を歌うのか?」


「……知らないわ。……聞こえてきたのは、『ねんねんころりよ』という、よく知られている歌よ。……その歌は余りにも綺麗でね……そうなれば当然誰が歌っているのか気になるでしょう?」


「そうかもな」


 たしかに、どこからか聞こえてくる歌声――しかもこの合理主義と利己主義と現実主義で塗り固められたカクリが聞き惚れたというほどの歌声であれば、シャクナゲであれその聞こえてきた歌声を追ってしまうだろう。

 もし、そんな歌声が本当に聞こえたなら、ではあるが。


「……だから私もちょっと気になって歌声を追ってみたの。……そして、三班本部から宿舎を通りすぎて……裏手に回る道にはいってしばらく行ったあと……私はそこから先の記憶がない。……気付けば朝になっていて、自室の扉の前で倒れ伏していた」


「三班本部正面から裏手に回る道を真っ直ぐ、ね。なるほどな」



「……なるほど? ……勝手に納得するのはやめて。……私にはさっぱり。……気付いたら自分の部屋の前に倒れてるし……何かされたんじゃないかと調べてみたけど異常はないし……部下に聞いてみれば、《廃都のセイレーン》は最近じゃ結構な噂になっているし……みんながみんな、歌声を追った人間は途中から記憶が飛んでいるし」


「あぁ、それもそうか」


 僅かにむくれ、ジトっとした目を向けてくるカクリに、シャクナゲは苦笑混じりの笑みを向けた。分からない事はそのままに出来ない、という思いもカクリの性格上強いのだろうが、その中にほのかに仲間を気遣うような色が見えた気がして、少しだけ微笑ましくなる。

 頭が回り、利害関係に聡い彼女は、そういった気遣いみたいなものをあまり見せない面がある。そういった甘さは弱味になりうると考えているのだろう。

 だがそんな考えは、シャクナゲからすれば人間を知らない机上の考えだ。

 ちょっとした気遣いを上手くしてやるだけで、他者をより活かす方法がある事を知らない者の考えだ。

 強固に締め上げ、掟で固めてしまう事の利を完全に否定するつもりはない。それは集団を維持する為にはある程度必要な事だ。

 でも、そこにちょっとしたスパイスとして人間味を入れる事で、掟による柵だけではないものが生まれる。規則による関係以外のものが生まれる。

 それをこの少女は、三班に入り、三班の幹部達を間近に見る事で学び始めたのかもしれない。

 そう思えば、笑みの一つぐらいは漏れようというものだ。

 基本的なスペックで言えば、カクリとアオイに大きな差はないとシャクナゲは見ているし、アオイ自身もそれに同意すると思う。

 ただカクリには足りない部分があった。

 それを今からでも補い始めたのだとすれば、それはきっと誰にとっても良い事だろう。

 三班の仲間達にとってだけではなく、カクリ自身にとっても。

 もちろんこんな事を言えば、カクリはいい顔をしないだろう。頑なに変化を否定するかもしれない。その結果、いい傾向に進んでいる少女の可能性を潰す事もありうる。

 だからシャクナゲは、ことさら皮肉げに……あくまでもいつも通りの彼らしく、ちょっとだけ勿体ぶってから《セイレーン》と呼ばれる存在の正体を明かした。

 《彼女》に少なからぬライバル心を持つカクリが、その正体を聞いてどんな顔をするのか。ほんの僅かにそんな事を考えながら。


「そりゃスズカだよ、セイレーンなんてもんじゃない。あいつが多分サラに子守唄を歌ってるだけさ。で、歌を追った連中が途中で気を失ったのは、あいつのガーディアンが恥ずかしがりなスズカを衆目から守る為だろ。

 いや、ひょっとしたら、自分達しか知らないスズカに対しての独占欲もあるのかもしれないけど」


 ――なにしろあの二人は、スズカにはめちゃくちゃ甘いからな。








はい、セイレーン話でした。

ぶつ切り過ぎる?

予告とはこんなものでしょう。

本文のまんま……多分多少弄りますが、そのまんまをコピーして張り付けたので、ぶつ切りになってしまいました。






学園からの招待状

これは本当に会話文だけ。

プロットを元に会話文を作って、肉付けする前の段階です。



「学園祭? 学園祭ってあの学園祭?」


「……学園祭、夢にまで見た文化祭。ユウ兄との学園祭」


「あぁ、《学園》って知ってるか? 中国地方……中でも山陰方面に根を張っている教育機関が元になった勢力なんだけど」


「知らない」


「知っている」


「そこから招待状が届いたんだよ。シャクナゲ様にはぜひお越し頂きたいんだとさ」


「……シャクを名指しにしてるけど、やっぱりそれって罠? だよね、それ」


「そうだと思う。学園の事はよく知らないけど、あそこは不気味。私達黒鉄がその実態をよく掴めていない事自体が異常」


「実態が掴めてない? 六班が情報収集してんじゃないの?」


「六班も諜報活動はしてただろうけど、ろくに何も掴めてないだろうな。あそこの敷地には侵入出来たヤツすらいないんだから」


「関西軍もあそこを攻めた時はかなりの痛手を被ったはず。坂上が近衛を率いて出向く直前で、学園の使者から臣従を伝えられたと聞いたけれど、見返りに自治権は要求していたらしいから、ほとんどその実態を晒してはいなかったと思う。それに関西軍と黒鉄の争いも激化していた時だったから、おとなしくしてくれている間は双方ともに学園に手を出す事もなかった」


「まぁな。実際俺も学園についちゃよく知らないんだ。アカツキは多少のやり取りはしてたみたいだけどな。

 とりあえず西方面の勢力とは手を結べるなら結びたいし、一度挨拶に誰かをやりたいとも思っていたから、ちょうどいいっちゃちょうどいいんだけど」


「……行くのっ!? 行くんだよねっ、文化祭!」


「私も行きたい。綿あめ、たこ焼、焼きそばにクレープ。射的にお化け屋敷に演劇……私も行く、私も連れて行って」


「いや、二人も罠だってさっき言ってただろうが。だからどうしようかと思ってさ。

 確かに招待を受けたからには行っておく方がいいんだろうけど、さっき二人が言ったようにどう考えても裏があるだろうし。それに北からはあいつが来てるから、出来れば俺はあんまりこの街を離れたくないんだよ」


「でも、学園だよ? お祭りなんだよ?」


「罠でもいい。私とシャクが一緒なら誰が相手でも蹴散らせる。蹴散らしてから学園祭」


「この招待が罠なんだとしたら、学園祭ってお祭り自体が罠だろうし、スズカが一緒なら心強いけど、蹴散らしてから学園祭は絶対に無理だろ」







この会話文は間に地の文をいれ、表現をいれ、回想とかもいれて使う予定です。

またまたぶつ切り。誰が学園に向かうのかは本編をご期待ください。




紅VS蒼。燃え上がる炎と舞う具材。煌めく包丁に命運をかけて。

託された家庭の味と本格四川中華の激突編




「勝負よ、こんの陰険オリヒメっ!」


「誰が陰険やって、この脳軽カーリアンっ!」


「なんだってぇ!」


「なんよ、やるんか、やるんならムシャクシャしてるし丁度ええ機会や、きっちりカタにはめたるわっ」


「……上等っ! 勝負は『料理対決』よっ」


「ふん、ウチの本格中華食べて吠え面かいたら――って、はぁ?」


「ふっふーん、あたしは和風でいくけど、あんたは中華なんだ?」


「い、いや、ちょっと待ち。聞き違いかな? 料理対決言うたように聞こえたんやけど……」


「は? うん、言ったけど? 中華で行くんでしょ、あんた」


「えっと、ウチとあんたの勝負やんね?」


「最初に『勝負よ、陰険腹黒オリヒメっ』て言ったでしょうが。ボケるには早いんじゃない?」


「腹黒までは言うてへんかったやろっ! やなくてっ!」


「もぅ、なんなのよっ!? 『やるんなら相手したげる』って言ったでしょうが」


「えっと、ウチとあんたが料理の対決するん?」


「そうよ?」


「蒼のオリヒメと紅のカーリアンで、料理対決?」


「だからそうだってばっ!」






これは冒頭に近い部分で出てきます。

またまた会話文のみ。

思いっきり本編に関係ないように見えて、やっぱり関係ない事もない……かもしれない話。




二番と三番はその殺意を外へと向ける。



「忌むべきスクナお兄様。出番よ。

 そう言ってスクナはお兄様にかけた全ての殺意をほどいた」


「あぁ、久々の外の空気は喉に響くね。正直な話、この世界は囲いに覆われてもっと狭くあるべきだと思うよ。広すぎて気分が悪くなってくる」


「変人極まるスクナお兄様。あなたの感性にスクナは付いていけません。お兄様を連れて歩く事自体が、スクナにとっては最悪の苦行そのものです。

 スクナはお兄様が相変わらずの変人で、どこまでも忌むべき存在である事を再確認すると、深い深い溜め息を吐いた」


「ふふっ、スクナは相変わらず僕にはキツいなぁ。そんなに嫌いなのかい? 君の視線と僕の死に触れる指先。目と手の違いはあれど、その二つは共に死を告げるものという共通点がある。

 それは僕と君の血が誰よりも深く繋がっている証だというのに」


「スクナの力において最大の欠点をあげるのなら、それは偏執狂なお兄様や妄想狂の五番を殺しきれない事です。それが残念で残念で無念で無念で仕方がないわ。

 この視線で今すぐ殺せるなら、真っ先にお兄様をくびり殺してしまうのに……そんな想いを乗せてスクナお兄様に視線を向ける。出来れば今すぐ適当極まりない理由で死んでくれますように、と強く願いながらだ」


「残念ながら無理だよ。スクナが僕の殺意に触れないのと同じで、君の視線は《僕が自ら受け入れないと僕には効かない》。視界を殺して、感覚を殺して、僕が誰も殺さずに済むようにあの漆黒のパンドラボックスから連れ出してくれた事はありがたく思うけど、死んでやる事は出来ないよ」


「あぁ、どうかこの忌々しいお兄様が無様で悲惨で惨めたらしい死に様を晒しますように。というか、地下にいる間にドブネズミの餌にでもなってしまえばよかったのに。

 そう役に立たない神様にお願いするべく、スクナは両手を組んで祈ってみる。このお兄様と血の繋がりがある事こそが、スクナにとっては最大の汚点に他ならない」


「本当にスクナは僕にキツいよね。僕はこんなに君を大事に思っているというのに」


「気持ちの悪い事を言わないで頂けますか、スクナお兄様。あなたに大事に思われているという事実はスクナには到底耐えられそうにありませんから。

 スクナはそう言って、さりげなく死んでくれないかと視線に力を籠めてみる。ここで空気を読んでポックリ逝ってくれたりしたら、万が一億が一兆が一ぐらいの確率で……さらに空からあらゆる祝福が舞い降りてきたりすれば、お兄様を多少は好きになれるかもしれない」


「……ほんっと、キッツいなぁ」


「はい、スクナは他の変人共と違って正直者ですから。歯に衣を着せて欲しいのでしたら、誇れる兄でなくてもいいから、せめて恥ずかしくない程度の兄であってほしいですね。

 スクナは面と向かってそう言って肩を竦めてみせる」


「ふふっ、まぁいいよ。僕が嫌いなら嫌いでね。ただ君は僕の手綱でさえあればいい。彼から任された仕事は、闇に属するネームレス・サードたる僕のものだからね」


「名無しの中に闇に属さない存在がいたなんて初めて知りました。

 名無しとは、それそのものが欠番だ。存在しないものだ。愚かなる兄はそんな事すら忘れてしまったのかと呆れ果ててしまう」


「君達は深淵じゃない。光の当たる面もしっかり持ってるよ、そうだろ? 一番も、二番たる君も他のみんなもね。そうだろ、《紫念のスクナ》」




「……本当のネームレスがいるとすれば、それはこの僕だけだ。表に居場所を持たず、彼にのみ従う僕だけがネームレスだ。」






殺しの能力者兄妹でした。

ここも会話のみ。彼らがどう動くのかも本編にて。



では最後に、予告編ではお決まりの(予告編自体二回目ですが)人物紹介。

誰にするかは悩んでましたが、もう一人を除いて全員が本編に出た彼らを紹介するしかないでしょう。

四部までの中核にして、物語の起点。

《新皇》について。


次回は人物……になるのか分からないけど紹介。

まるまる一話を使ってます。

更新は――うん、お知らせ通り明言はなしで。

紹介というよりストーリー仕立てな感じです。


いいなぁ、ベノム。


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