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番外編1・カクリの考察

すこし世界観の紹介や人物紹介を、違った形でしてみようと書いたモノです。


結構珍しい試み……だと思うので、ツッコミ等お待ちしております。

柔らかくオブラートに包んでツッコんで頂けたらなお幸いです。


一部書き足し、誤字脱字を修正。というより一回アップしたモノは編集出来ないんですかね?






 私がこの考察を記録として残す事にしたのにはいくつか理由がある。

 まずは私個人の欲求によるモノ──知的好奇心だ。純粋なる興味。


 黒鉄、変種、ヴァンプ、世界情勢。

 その全てを知りたいという知的欲求……。

 それが私にこの考察をさせる原動力となったのは否定出来ない。

 元来私は、その欲求が強いタイプなのは自覚している。

 それが『知覚能力が増大された変種』ゆえの特性なのかは分からないが。



 そして次に来るのは、私が所属する『黒鉄第二班』の戦力を憂慮した為である。

 つまり我が二班は後方支援をメインとする部隊である為、黒鉄内においても決して力の強い部隊ではない、という事を憂慮したのだ。

 黒鉄全七班中、下から数えてトップ……それが二班の実力だいう認識が私に力を求めさせた。




 私にとっての力──つまりは情報や知識を。


 いかに二班のリーダーであるカーリアンが、黒鉄内でも有数の力を持つ変種であれ、コードフェンサーが彼女しかいない事実だけは揺るがない。

 もし、今も僅かに『黒鉄という組織』を軋ませている『各班の間にある軋轢』が大きくなれば……内部で黒鉄の実権を握る争いでも起きれば、我が二班の立場は非常に危ういモノとなる。

 そうなった際、彼女──私の大好きな可愛いカーリアンは、一番始めに傷つく事になるだろう。


 カーリアンさえ抑えれば、二班にロクな戦力が残っていないのは、カリギュラに住む者なら誰でも知っている事なのだから。



 ──だから私は記す事にしたのだ。

 私の大好きな彼女と、彼女が大事にしている居場所を守る為に。

 私の知覚能力や自ら足、使い得る全てのツテを使って直接集めた情報(ちしき)を……。


 ──だから私は残す事にした。

 情報をまとめ、整理して、今後の黒鉄内での動きを……これからの世界の流れを読む為に。

 他の班との戦力差を埋める(すべ)……私なりの力を。



 ──私はカクリ。

 元の名前は思い出せず、また思い出そうとも思わない力弱き変種。

 今は『紅』の副官である『考察者』。

 そして彼女が与えてくれた名前に誇りを持つただのカクリだ。





 まず最初に黒鉄の現状をまとめておく。自分の置かれている立場を、確実に再認識する意味を込めてだ。

 自らの立場を自覚しないまま考えを巡らせたところで、思考は迷走をきたすのがオチであろうし、何よりより強い危機感を持ち、より正確な情報を記す為に。



 ──現在の黒鉄は全部で七つに班分けをされている。

 俗に言う黒鉄七班だ。


 といっても、カリギュラに身を寄せる人間全てが、いずれかの班に所属しているワケではない。

 ほとんどの人々は関西統括軍……強い力を持ち、権力を簒奪した『将軍』を自称するヴァンプや、その配下に住む場所を追われた者で、戦う力やすべを持たない人間達なのだから。

 そういった人々は、開いた場所で田畑を開墾し、数少ない家畜を飼い慣らしたり、あちこちで廃品を集めて各地に流したり、荒廃した街を立て直したりといった作業に従事している。

 中にはカリギュラの治安維持にあたる『黒鉄第五班』に協力し、見回りくらいなしてくれる者達もいるが、ほとんどは自分に出来る範囲の作業しかこなしていない。



 そんな人々の中で、戦う意志を……護る為に手を汚す決意を秘めた者達が『黒鉄』を名乗る。

 守る為に手を汚す──その為の硬き意志を宿す為に。


 そんな黒鉄に所属する者達が、配属されるのが七つの班となる。

 各班ごとにそれぞれ交流があり、人員の移動もたまにあるが、ほとんどは最初に所属した班から移動する事はない。

 最初の段階で状況や能力に応じて班分けをされているからである。

 我が二班に医療機関に勤務経験のある者や、性格や能力的に前線向きではない者が多く配属されるのは、これを考慮しての事だろう。

 私もこれに当たる。私の場合は『能力的に前線は向いていない』からだ。


 かつては各班の上に、人事や班ごとの戦力バランスを取る統括部という機関が『あった』。

 だが今現在の黒鉄には……アカツキがいなくなってからの黒鉄には、統括部という機関はなく、班内での人事やグループ構成などの全ては、それぞれの班のやり方や裁量に任せられている。

 班の長が決めているところもあれば、構成員達の採決で決めている所もあるらしい。


 ……まぁ、その現在の体制──各班の裁量次第といった現状が、私の頭を悩ませている大きな要因なのだが。



 それはここでは置いておくとして、下にそれぞれの班ごとに私が知りうる限りの情報を記載する。




 第一班『強行班』。リーダー・ナナシ。

 有事の際は一番先に動き、力を振るう実働班。

 また、カリギュラに対して敵対行動を取った武装盗賊──かつて将軍に権力争いで敗れ、それでも将軍に従わない力に傲ったヴァンプ達と、それに従う徒等を組んだ輩──に対し、制裁攻撃に出る部隊でもある。


 その為に、前線へと立つ機会が多いナナシの能力は、黒鉄内でも良く知られている。

 『無限再生』と呼ばれるほどの超回復能力がそれだ。

 聞いた話によれば、切り飛ばされた腕すら、くっつけていただけで問題なく動くようになった、という逸話すら持つ変種である。

 また、一班にはコード持ちの変種がナナシを含めて3人いるが、それら全てが班長であるナナシと同じく、身体能力の一部が特化した者ばかりである事も一班の特徴と言えるだろう。

 通称『不死身のナナシ』率いる武闘派……それが『黒鉄第一班』である。


 班の体制は未確認だが、恐らくは合議制であろう。

 ナナシは戦術眼はなかなかのモノを持つが、基本的に頭は温く情にモロいタイプだからだ。


 特記事項として我が二班との関係は良好である事、同じように武闘派である三班の事をライバル視している事を記す。

 これら2つ事項の理由は簡単だ。

 ナナシがカーリアンに惚れているからである。

 これはいずれ使える情報だから、しっかりと脳裏に刻んでおく事とする。



 第二班『救急・支援班』。リーダー・カーリアン。

 とっても可愛い『私の』カーリアン率いる黒鉄第二班だ。

 彼女の能力は非常に強力で、三班のシャクナゲが言うには『高ぶった感情を炎に変える力』らしい。人体発火能力とかパイロキネシスと言えば分かりやすいだろう。

 まぁそんな情報よりも、カーリアンの可愛さの方が重要特記事項なのは間違いないところではあるが。

 前述したが、カーリアンの他にコード持ちはいない。

 私ならば上手くすれば、戦歴の浅いコード持ち程度なら罠にハメて潰すくらいは出来ようが、それも『上手く行けば』だ。

 正直な話、他班との戦力差は頭が痛い問題だ。


 二班とて前線にも出るが、支援や怪我人の治療の為に出るだけである。


 班の体制は、副官である私が提言をし、カーリアンに承諾を取る形が多い。




 第三班『決戦班』。リーダー・シャクナゲ。

 一班が切り込み隊だとするならば、三班は勝負を決する為の決死隊と言える。

 一班と同じく、武装盗賊の迎撃や追撃もする班ではあるが、その違いは三班の第一の役割は、関西軍に睨みを効かす事だと言う事であろう。

 この班のリーダーであるシャクナゲは、我が黒鉄でも最も名の知れた人物であり、その首には関西軍以外の各地方勢力も賞金をかけているような『超大物』だ。

 関西軍にとっては、設立以来の仇敵だと言える。

 黒鉄第三班とシャクナゲがいるからこそ、一度は支配したカリギュラから撤退する羽目になったのだから。


 シャクナゲについては後日の考察項にて詳細を述べるが、その能力についての推察だけはここに載せておく。

 彼の能力は、銃を愛用しながらも弾丸を補充するところを見た事がない為、恐らくは銃の弾丸を何かで精製する『物質形成能力』だろう。

 確証はないが、近いモノだと推察する。


 また、三班はある意味最も独裁的な体制を持つ班だ。

 リーダーであるシャクナゲが絶対なのだ。そして彼に絶対的な信頼を寄せる強力なメンバー達。

 コードフェンサーは他に3人いるが、『音速』のヒナギク『不貫』のヨツバ『水鏡』のスイレン共に強力な能力者である。

 副官はアオイ。力の弱い変種でコードは持っていない。

 他班との間に問題は起こしていないが、一番他班から注目を浴びる班でもある。


 特記事項・シャクナゲはムカ……羨ましい事に、私のカーリアンの想い人である。




 第四班『防衛班』。リーダー・オリヒメ。

 オリヒメの能力はカーリアンと対象的な力である。

 『空間冷却能力』。やはりカーリアンの逆で、感情を冷気に変える能力……なのだろうか。調査が必要だ。

 班の役割は、主にカリギュラの防衛を専任している。

 その為、カリギュラから離れる事は滅多にない。

 コードフェンサーはオリヒメと他2人。

 1人はテレキネシス……念動能力者だが、もう1人は未確認である。


 特記事項・カーリアンとオリヒメの仲は最悪だ。よく睨み合っている。

 またオリヒメは自尊心が強い女で、『姫』と班員に呼ばせているようだ。ほとんどの相手には慇懃無礼を極めたような態度を取る。

 もっと言うなら、カーリアンの敵だから私も好きではない。


 ……かなり私情が入った。この考察には私情を挟まないよう以後気をつける。



 第五班『警備・整備班』。リーダー・カブト。

 リーダーであるカブトは、班の長達の中では唯一のコードナシ……しかも変種ですらない男である。

 しかし、カブトはシャクナゲと並んで古いメンバーで顔も広い男だと言えよう。

 この班にはコードフェンサーが2人おり、その内の1人、副官である『幻影』のアゲハは非常に強力な変種として知られている。

 班の役割としては黒鉄の機材や火器、車両の整備、支援砲撃を担当している。

 もちろん警備班らしく、カリギュラ内での治安にも目を光らせている班でもある。


 注意すべきなのは、この班の持つ地力だ。カブトはシャクナゲ個人との繋がりも深く、三班との繋がりが深い。侮りがたい地力を持つ班だと言える。

 所属するコードフェンサーの能力は未定である。


 特記事項・なんとしても強力なコードフェンサーであり、副官でもあるアゲハの能力を知りたい。動向注意。



 第六班『情報班』。リーダー・ヘルメス。

 リーダーであるヘルメスの能力は黒鉄内でも有名で、強力な暗示能力を持つらしい。

 いわゆる一種の『テレパス(精神感応能力者)』だ。

 さすがに人間を操るのは難しいらしいが、自らの脳波を他者にリンクさせ、その思考を妨害したり混乱させたり出来るモノと聞く。

 かなりに珍しい力である。

 その力は、主に味方の戦意高揚に使ったり、尋問やら情報収集に使っているらしい。

 他に六班にはコードフェンサーが1人所属しているが、その力は未確認。定例会議では独自の立場を貫き、他班との繋がりも薄い。

 諜報、防諜と言った黒鉄の見えない部分を支える班である。


 特記事項・私の情報収集において、一番の障害となりそうな班である。注意が必要。



 第七班『遊撃班』。リーダー・スズカ。

 全部未定。気持ちいいぐらい一切合切が不透明。

 この班は他班の援助要請に応える為の遊撃班なのだが、まず構成員数からして分からない。

 一度二班の副官として援助を要請したが、『現段階では必要なし』と通達された。

 私が探りを入れようとしているのを読まれている可能性がある。


 班長であるスズカ自体、定例の会議以外ではあまり見た事がないぐらいだ。だが、カーリアンやシャクナゲとは親しそうであった。


 特記事項・スズカは黒鉄唯一の純正型変種である。

 恐らく能力だけで言えば『黒鉄最強』は彼女──『銀鈴のスズカ』だ。






 これら七つの班の内、二班や五班のようにいくつかの役割を持つ班もある。

 それはいずれ折りをみて……そして必要に応じて班分けされる事になるのだろう。

 全ての班が、元々はアカツキ総指揮の下、シャクナゲとカブトが率いていた部隊から分けられていったように──。



 だが班分けされる前……つまり現時点で、ある程度は敵味方の線引きはしておかねばならないのも事実だ。


 何か事が起こってから慌てるのは優雅ではないし、私の主義にも反する。

 何より誰かが事を起こす時には、一番にカーリアンが狙われる可能性もある。

 それはマズい。それでは私にとって意味がない。黒鉄という組織が残るだけでは、私にはなんの意味もないのだ。


 だからこそ出来るだけ早い段階で、いずれが真に味方になり、いずれが裏を持つのかを見極めておく必要があろう。

 裏を持つ者には、それ相応の手札を切らねばなるまい。




 ──この考察にだけは残しておくが、一班が半壊した作戦……あの状況は私も考えた事がある。

 つまり『関西軍に情報をリークし、一班のような前衛部隊──つまり力の強い部隊にダメージを与える』──そうやって『黒鉄内での戦力の調整を図る』というのは取り得る策の1つではあった。


 だが、少し考えただけで棄却した案でもある。

 下手をしたら黒鉄が壊滅しかねないダメージを受けるのは望むところではないし、何より私の立場からすればあんな策は下策もいいトコだからだ。

 確実に効果はあるだろうが、そのダメージは二班と友好的な『一、三班』が受ける事になる。

 当然支援部隊たる自班も危うくなり、その上で『内通者がいる』というのがバレバレになる。

 ハイリスクの割にリターンが少な過ぎる。

 それでは策を施しがいがない。


 ……まぁ正体不明な六、七班がハメられるならやっても良かった案ではあったが。


 そして『内通』がバレるという件。これは私が手を下したなら痕跡を残さない自信はもちろんある。

 それでも関西軍と渡りを付けるには、それなりに大きな動きが必要になるのは間違いないだろう。

 その間の動きの全てを、六班や彼から──黒鉄のシャクナゲから隠し続けていられるかと言えば、正直確信が持てない。

 自信はあっても確信がなければ動かない……それが私の信条である以上、この策は端からボツだったと言える。



 つくづく彼は厄介な相手だ。

 彼個人を相手に、『情報班』並みに気を使うというのはちょっと優秀さが過ぎる。


 カーリアンも何も彼を選ばなくてもいいだろうに、とすら思う。

 彼はカーリアンの大事な人である以上に、私の『政敵』に近い相手だ。

 二班の立場を守る為に一番警戒すべき『力』を持っているし、何よりカリギュラの『生きている方の英雄』だ。

 その存在自体、名前そのものがカリスマと言ってもいい。

 彼と真っ向から対立出来るだけの影響力を持っているのは、『死んだ方の英雄』たるアカツキぐらいだろう。


 一年ちょっと前に来たばかりの小娘に過ぎない私とでは、発言力から影響力まで雲泥の差なのである。


 そして何より厄介なのは、それらを使いうるだけの頭を持っている事。

 頼りになる以上に、厄介極まりない相手……それが私のカーリアンが選んだ相手だというのが皮肉過ぎる。



 限りなく有り得ない仮定ではあるが、最悪三班と敵対する立場に立ったとしよう。

 そうなったのなら私がいかに策を巡らし、周到なトラップを張ろうが、私達二班は抵抗らしい抵抗すら出来まい。


 まぁカーリアンなら他の五つの班全てを敵に回してでも、三班の側に付きそうな気がする……というより確実にそうなるであろうから、本当に仮定でしかないのだが。


 だが問題はその先だ。


 三班が確実に二班の味方になる──いや、『二班(カーリアン)三班(シャクナゲ)の味方をする』としても、『対等』な立場を持っている事が絶対条件だ。

 それには『拮抗する力』か、『力に勝る手札』が必要不可欠。

 下に付くのはカーリアンが望む状況ではない。あくまでも『今のまま』が理想である。

 二班と三班が対等であり、他班からの潜在的脅威がない状況──




 ──本当に頭が痛い。二十手三十手と策は打っているが、前回の作戦失敗により黒鉄の状況が動き始めた以上、百手くらいは既に手持ちがいるかもしれない。


 まぁどんな汚い策をどれだけ使ってでも……どんな過程を踏み、誰と敵対する羽目になろうとも、彼女が望む『全て結果を必ずもたらしてみせる』つもりではいるが。



 だが今はネタ待ちだ。今出来うる策は全て打つが、全然足りない。

 その為にも後日、考察2を記すまでになんらか有効な情報が入る事を望む。



 4月某日・『考察者』が記す。



番外、考察編はいまのところ3つまで書けています。


プロットを弄り、ネームを弄り、物語調にしたモノです。

大体全5話予定で、物語の随所にネタバレにならないように挟む予定です。


その他に、シャクナゲ過去編4話(予定。3つは書けてます)が最後に纏めて入ります。


本筋は15話まで書けていますが、この次から更新ペースはやや落ちるかと。一気に上げたらストックが無くなり、更新ペースがメチャクチャになりますので。


週1でのアップ、半年内完結を目標に頑張ります。

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