第四話 迷いの森の怪しい霧
主人公たちはなろうテンプレでいきなりチートするのではなくて、TRPGのリプレイみたいに経験を積んで少しずつ強くなっていきます。
気持ちのいい朝だ。
ラザリンと抱き合って寝ると癒やされるなぁ。
「おはよう、お兄ちゃん」
「おはよう、ラザリン」
一番安い宿なので食事は出ない。
二人で近所の食堂に食べに行った。
黒パンと玉ねぎと干し肉のポトフを食べた。
「明日からは食事が出る宿屋に泊まりたいね」
「うん」
食堂を出てからは、ラザリンとお喋りを楽しみながら街の中を散歩した。
噴水のある広場でベンチに座って空を眺める。
隣ではラザリンがニコニコと笑っていた。
危険を伴う冒険者家業をしていたが、彼女が笑顔でいてくれるので救いになっていた。
「もう、ラザリンのいない生活なんて考えられないな」
「私はずっとお兄ちゃんと一緒だよ」
本当に可愛いなぁ。
十時くらいになったので冒険者ギルドが開く頃だ。
ゴブリン退治以外のクエストを受けるつもりだった。
二人で冒険者ギルドへ向かった。
「ちょうどよかったです。ユウヤさんに引き受けてもらいたいクエストがあるんです」
受付嬢のカリンさんが待ち受けていて、クエストを割り振ってきた。
「どういうクエストなんですか?」
戦争で北の街道が封鎖されたので、迷いの森を通って荷物を隣国まで運ばなければならなくなったらしい。
ギャバン商会のギムレット・ギャバン男爵からの依頼で、ポーションを満載した馬車を隣国のザルツ王国まで届けてほしということだった。
「今回はEランクには難しいので、他のC級冒険者と協力して遂行してもらいます」
二人組の若い女性冒険者を紹介された。
「私はメテオール教の神官戦士のリンダです」
「私の名前はマリアと言います。雷属性の魔術師です」
二人共、美人でまだ二十代前半の年齢に見えた。
神官戦士と魔術師のローブを着ているのだが、気になったのはスカートが短いことだった。
膝上30cmのマイクロミニになっているのだ。
ユウヤは若くて健康な男なので、反応せずにはいられなかった。
「どうしてそんなに短いスカートを履いているんです?」
「スケベ!」
「最初に言うことがそれですか?」
「短いほうが動きやすくて、可愛いから王都の女性冒険者の間では流行ってるのよ」
「最先端の流行を取り入れているんです」
そういうものなのか。
「お兄ちゃん、私もああいうスカートがいい?」
「ラザリンは普通でいいんだよ」
俺はラザリンの頭をなでた。
「私達が普通じゃないっていうの?」
「スケベそうな目で見てたくせに……。素直にこういうのが好きって言えばいいでしょ?」
いきなり怒らせてしまったようだった。
ひと悶着あったが、協力してクエストをクリアすることには同意できた。
報酬は支度金を50万ゴールド前払いで受け取って、成功時に250万ゴールドもらえるということだった。
合わせて300万ゴールドなのでいい稼ぎになる。
ポーションを満載した馬車は、ギルドの外にギムレットが用意していた。
保存食とワインなども入っているのですぐに出発できる。
着替えなども積載して馬車を発進させた。
ノウリプトンの町から東に向かって四時間ほど馬車を走らせると、迷いの森に突入した。
御者をしているのはユウヤである。
ラザリンはリンダやマリアと笑顔で話をしているようだった。
女同士で仲良くなったようだ。
森の中を小一時間ほど進むと、霧が出てきた。
霧が出やすい場所だから、迷いの森と呼ばれているのだ。
森の中でも道が整備されているので、道なりに東に進めばザルツ王国に抜けられるはずだった。
角のある一角兎やマッドボアといった、森の魔物と遭遇して倒していった。
これらの魔物は肉が旨いので貴重な食材である。
「霧が濃くなってきた……」
「なんかおかしいわね。さっきから同じところをグルグル周っている気がする……」
「目印を付けておきましょう」
マリアが木の枝を折って目印を作った。
それから馬車を走らせて困難な状況にあることがわかった。
どちらの方向に進んでも、同じ目印のある場所に出てしまうのだ。
何らかの魔法の力で進路が歪められているとしか考えられなかった。
馬車を停めて食事をしながら作戦会議をすることにした。
ダッチオーブンを焚き火にかけて、マッドボアの肉をぶつ切りにして入れる。
ワインを入れて秘伝のスパイスを振りかける。
蓋をして肉に火が通ったら出来上がりである。
保存食の乾パンに肉を乗せてかぶりつく。
「マッドボアか、美味いな……」
「お兄ちゃん、美味しいよ」
ラザリンも笑顔である。
状況は困難だが美味しいものを食べれば良い知恵も出るだろう。
「マッドボアの肉は普通の豚肉よりも肉汁が多くてジューシーなのよ」
リンダが焚き火の前でゴザを敷いてあぐらをかいている。
神に仕える神官戦士なのに行儀が悪いな。
白いパンツがチラッと見えてるぞ。
マリアは女の子座りして、難しい顔をして肉を食べている。
食べながらブツブツ言っていたかと思ったら、突然立ち上がった。
「これが魔法の霧で空間を歪めているのなら、霧の発生源に行けば敵の正体が分かるはずです!」
立ち上がった拍子に胸がぶるんと揺れた。
いいおっぱいしてるな。
ラザリンが俺の顔をじ~と見ている。
「お兄ちゃん、おっぱい好き?」
マリアが両手で胸を隠した。
「ちょっと、こんなときにいやらしい目で見ないでください!」
「やっぱりスケベね……。若い男だから仕方ないけど」
リンダが呆れたように溜息をついた。
スケベで何が悪い。
俺もいつかはこの世界で英雄になってハーレムを作るのだ。
ラザリンが生温かい目で俺を見ている。
「私が第一夫人だからね、お兄ちゃん」
「奥さんがいるのに浮気しちゃ駄目よ、ユウヤくん」
リンダに冷やかされた。
「色を好むのは、英雄になってからにしてね」
マリアも呆れ顔だ。
皆、俺の考えが読めるのか。
いや、ハーレムを作るのがテンプレ過ぎて女達から警戒されているのか。
腹がくちくなったので出発することにした。
マリアの提案に従って、霧の発生源に行く。
霧が流れてくる方向を読んで、馬車を進めた。
「霧を発生させている元凶を何とかすればいいんだな」
「魔物が元凶なら戦闘になるかもね」
「頼りにしてますよ、ユウヤくん」
ラザリンはマリアのおっぱいに顔を埋めている。
それはいいのか。
「私もおっぱい大きくなりたい」
「ラザリンちゃんも牛乳を飲んで揉んでたら大きくなりますよ」
「ラザリンちゃんくらいの歳でそれだけ胸があったら大きくなるわよ。ユウヤくんに揉まれているの?」
「お兄ちゃん揉んでくれる?」
女三人に男が一人だとこういう雰囲気になるのか。
ハーレムまでの道程は遠いな。
俺は赤面しながら馬車を進めた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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