第二話 冒険者になってポーションの原料採取
孤児院での暮らしは貧しくとも平穏だった。
不思議とラザリンと一緒にいると闇の魔力が暴発することはなくなっていった。
俺が十六歳の成人になると、孤児院を出ていって自立することになった。
困ったのはラザリンで、俺についていくと駄々をこねたのだ。
どうしても聞き分けがないのでドニ院長は、俺が面倒を見られるのならラザリンと一緒に出ていってもいいと言った。
俺は少し迷ったが、ラザリンと一緒にいられるのなら、これからも孤独にならないで済むので覚悟を決めた。
「ラザリンと一緒に孤児院を出ていきます」
「お兄ちゃん、ずっと一緒にいようね」
翌日の朝、孤児院の仲間に見送られて出ていった。
お金は奉仕活動で手に入れた3万ゴールドしかない。
ラザリンと二人なら、一番安い宿に泊まっても一週間しか生活できないだろう。
俺は自立したら冒険者になると決めていた。
前世では剣道参段だったのである。
この世界でも戦えるはずだという自信があった。
それに、俺には闇の魔力もある。
ノウリプトンの町の冒険者ギルドにやってきた。
受付のお姉さんは二十代前半のきれいな人だった。
名前はカリンさん。
ちなみに独身だそうだ。
親切に冒険者登録の方法を教えてくれる。
「この認証の水晶球に手をかざしてみて。これでステータスと個体情報を登録するのよ」
俺は言われたとおりにカウンターの上に置かれた水晶球に手をかざした。
水晶球が淡い光を放ってステータスが表示される。
名前 ユウヤ 十六歳 男
職業 剣士 副職業 闇魔術師
LV 1
HP 50/50
MP 20/20
攻撃力 60/60
防御力 40/40
知力度 20/20
敏捷度 30/30
魅力度 30/30
幸運度 20/20
スキル 剣術LV1 闇魔法LV1
女神ディスティーネの加護
「え、え~!?」
カリンさんは驚きの声を上げた。
「女神の加護を持っているなんて凄いですよ。それに闇魔法って!」
「大きな声で言わないでください! 目立ちたくないんです!」
「あら、ごめんなさい」
「お兄ちゃん、凄いんだね」
一緒について来ていたラザリンに褒められた。
「これが冒険者カードです。最初はFランクからのスタートです」
「早速ですが、お金を稼ぎたいんで初心者向けのクエストを紹介してください」
「それなら、癒し草採取とスライムの体液集めがいいですね」
カリンさんから詳しく説明してもらった。
薬であるポーションは癒し草とスライム体液を原料にして作るので、それらを採取するクエストは常時出ているらしい。
「それじゃぁ、そのクエストを受注します」
「がんばってくださいね」
ラザリンと二人でノウリプトンの町の外れにある森にやってきた。
ラザリンには癒し草を探してもらう。
俺はスライムを倒して体液を採取することにした。
ラザリンの癒し草の探し方は変わっていて、犬のように四つん這いになって鼻で草の匂いを嗅いでいる。
それで目的の薬草が分かるようだった。
「あった! 癒し草!」
「凄いなそれで分かるのか」
「うん。癒し草は優しい匂いがするんだよ」
俺は硬い木の枝を剣代わりにして、ブルースライムをプチプチと潰していた。
魔核からにじみ出てくるスライム体液を、冒険者ギルドで渡された瓶に詰めていく。
二人で四時間ほど作業して、癒し草とスライム体液を合わせて10kgくらいを採取した。
「今日はこれくらいでいいか」
「たくさん採れたね」
ラザリンは癒し草採取の仕事が気に入ったのかご満悦だった。
冒険者ギルドに戻って、癒し草とスライム体液を提出すると、3万ゴールドの報酬をもらえた。
贅沢しなければ一週間くらいは生活できるな。
この調子でどんどん稼いでいこう。
武器や防具も買いたいからな。
そうこうしているうちに、夕方になってきたので食事をした後に宿を探すことにした。
冒険者で賑わっている大衆食堂で一番安い定食を食べた。
お子様ランチがあったのでラザリンにはそれを注文した。
「うわぁ、お子様ランチ!」
「孤児院の食事よりは栄養がありそうだな」
彼女は美味しそうに笑顔で食べている。
俺は微笑ましい気分でそれを見ていた。
まだ子供だな……。
宿は初心者の冒険者が利用する安い宿にした。
二人で一つの部屋で一泊の宿賃は5,000ゴールドである。
桶に入った水で体を拭いてからベッドに入った。
ベッドは一つしかないので、ラザリンと抱き合って寝ることになった。
ラザリンは柔らかくて温かいなぁ。
彼女はすぐに寝息を立て始めた。
俺のそばにいると安心するらしい。
俺もすぐに眠りについた。
一ヶ月くらいそうやってお金を稼ぐと、貯金が57万ゴールドになった。
当初の計画通りに服とか武器防具を買うことにする。
露天の古着屋に行った。
ラザリンの服と下着を買う。
服は室内着と冒険用の厚手のワンピースを買った。
ワンピースの下にタイツのようなズボンを履かせる。
お肌が傷つかないようにだ。
靴も売っていたので丈夫な革のブーツを買ってあげた。
俺は一般的な冒険者の服を買った。
上下セットで厚手の布でできている。
冒険者らしい姿になった。
室内着としてゆったりとしたラフな服も買った。
冒険者用の革のブーツも買う。
次に武器防具の店に行った。
ごついスキンヘッドの親父が店番をしている。
すごくマッチョだ。
冒険者相手の武器防具店というものはこういうものなのか。
「俺は店長のマストだ。お前ら初心者冒険者だな。安心しろ安くていい装備を売ってやるよ」
俺はマストさんに勧められたレザーアーマーとショートソードを買った。
ラザリンにはレザーブレストとレザーハットを買ってあげた。
彼女の護身用にブロンズナイフも買い与えて渡す。
今日の買い物で貯金が37万ゴールドに減った。
せっかく商店街に来ているので露天で昼食を摂ることにした。
黒豚肉の串焼きとバナンの葉っぱに包まれた焼き菓子を買って二人で食べる。
「お兄ちゃん美味しいよ」
「うん。そうだね。時々こういうのも食べに来ようね」
街中をブラブラと散策して夕方になると、大衆食堂でいつもの一番安い定食を食べた。
ラザリンはお子様ランチである。
たまには違うものを食べさせたほうがいいかな。
「ラザリンはお子様ランチ以外で食べたい物はあるかい?」
「う~ん。分かんない……」
しばらくはお子様ランチでいいか。
宿に帰ってから、桶の水で身体を拭いて綺麗にする。
石鹸はないけど頭も洗った。
ラザリンの身体と頭も洗ってあげる。
「少し乾かしてから寝ようね」
「うん」
ベッドに二人で潜り込む。
ラザリンを抱き寄せて寝ると癒やされるなぁ。
俺にとっては唯一の家族だ。
何があっても守るし幸せにする。
そう決意してから眠りにつくのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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