第十六話 エルフの国で結婚式挙げました
七日ほど馬車で移動するとエルファール王国に入った。
第一王女のフューメルさんと一緒なので、入国手続も簡単だった。
槍を持ったエルフの衛兵がいたけど、フューメルさんの顔を見たらひざまずいていた。
やっぱり王族なんだ。
エルフの国、エルファール王国に来るのは始めてだけど、牧歌的な集落だなぁ。
木造の素朴な建物ばかりで、ハイマルク王国の王都のような華やかさはまるでない。
森と湖と畑と牧歌的な木造建築といった風景だ。
「ハイマルク王国に比べると質素でしょう。エルフ族はドワーフ族みたいに工芸品を作れるわけでもないし、商売が上手いわけでもないのです。貧しい国なのですわ。グレゴール帝国の保護国になって、食料などを援助してもらえるから助かっているの」
フューメルさんが俺の疑問に答えてくれた。
馬車が王城に着いた。
王城と言ってもそんなに大きな建物ではない。
ハイマルク王国の伯爵のタウンハウスくらいの大きさだった。
中に通されて応接室で待つ。
しばらくすると執事がやってきて、昼時なので国王たちと食事を取りながら話をすることになったと告げられた。
食事の用意ができたらまた呼びに来るという。
「フューメルさんのお父さんてどんな人?」
「優しい人よ。母上もおっとりとして優しいわ」
「いきなり孫ができて怒こっているということはないの?」
「大丈夫ですわ。とても喜んでいるはずです」
食事の用意ができたので呼ばれて、王族の使う食堂に移動した。
国王と王妃は先に席についていた。
顔を見るとニコニコと笑っている。
「私の両親のオラトリオ国王とユリエリア王妃です。その隣が妹のミューリア第二王女です」
フューメルさんから紹介されて挨拶した。
「ハイマルク王国でB級冒険者をしているユウヤです」
「同じくラザリンです」
「お父様、手紙ににも書きましたけど、私は妊娠していてお腹の子供の父親はユウヤ様なのです」
「うむ、分かっている。めでたいことだ」
「孫の顔を見るのが楽しみですわ」
国王と王妃は終始ニコニコと笑っている。
「それでは、急いで結婚式を挙げないといけないのう」
「お腹が大きくなる前にね」
国王と王妃は前のめりになった。
すごく積極的だ。
「待ってください! 私もお兄ちゃんと結婚するの!」
ラザリンが立ち上がって大きな声を出した。
国王が尋ねる。
「ラザリンさんもユウヤさんと恋仲なのか?」
「私が第一夫人になるの!」
「なるほど、ユウヤ殿は二股をかけているのか」
国王が破顔した。
俺は冷や汗が流れた。
流石にこれは怒られるだろう。
「あっぱれじゃ。ユウヤ殿は甲斐性のある人間族の男なのだな」
「フューメル、いい男を捕まえましたね」
国王と王妃にとっては、俺が二股をかけていることは無問題であるらしい。
という訳で、一週間後に結婚式を挙げることになった。
事前に予想したような障害は一切なかった。
その日は王城の客間に泊まって行くことになった。
三人で一緒に泊まれるように大きな部屋が与えられた。
部屋着に着替えてベッドに腰掛ける。
俺が真ん中で、ラザリンとフューメルさんが両隣に座った。
「もっと、俺が孤児であることなんかに突っ込まれるのかと思ってた」
「くすっ」
フューメルさんはいたずらっぽく笑った。
「三百年前に私達の一族は滅亡するところだったの。それを救ってくれたのがグレゴール帝国の祖先なのですわ」
エルフ族は生殖本能が低く、子供が滅多に生まれなかった。
一族が一千人を下回るほど数を減らして、オークやゴブリンの侵略を受けているところをグレゴール帝国に救ってもらったのだという。
その時の約束でエルフ族はグレゴール帝国の性奴隷になったのだそうだ。
だが、エルフ族は人間族と交尾して混血になると、子供がたくさん生まれるようになった。
三百年の間にエルフの人口は三万人を超えるようになり、エルファール王国を名乗れるようになったのだ。
「ですから、人間族から性的な目で見られることはエルフ族にとって好ましいことなのです」
「そういうものなのか……」
「エルフ族の女性にとって健康な人間族の男性を捕まえることが何より大事なことなのですわ」
フューメルさんは俺の手を握った。
「ご主人さまは私の顔や身体が好きでしょう? 私もご主人さまの逞しい身体や精力旺盛なところが好きなのです。だから、一目惚れしたのですわ」
俺とフューメルさんが見つめ合っていると、ラザリンにお尻をつねられた。
「フューメルとばっかりイイコトして! 私が第一夫人なのに!」
「ごめんよ、ラザリン……」
◇◇◇
あっという間に一週間が過ぎて結婚式の当日になった。
エルファール王国で唯一の神殿に来ている。
俺は純白の礼服を身に着けていた。
ラザリンとフューメルさんは純白のウェディングドレスを身にまとっている。
参列者はエルフばっかりだった。
それでも良かった。
孤児だった俺に呼ぶべき親戚などいないのだ。
女神ミーテル像の前に控えるエルフの神官の前に進み出て三人で決めていた誓いの言葉を述べる。
「私たち三人は 女神ミーテルとご列席の皆様を証人とし 結婚を誓います。
健やかなるときも病めるときも 喜びのときも悲しみのときも
富めるときも貧しいときも お互いを愛し 敬い 共に助け合い
命ある限り真心を尽くすことを誓います」
誓いの言葉を述べ終わると、ラザリンとフューメルさんにキスをした。
エルフの参列者たちが盛大な拍手を贈ってくれる。
祝の花束が宙に舞った。
国王と王妃は感極まって涙を浮かべている。
本当に祝福してくれているのだ。
披露宴はまだまだ続くのだが、食事の後に歓談してお開きになるらしい。
妻になったフューメルさんは王族なのでその付き合いがある。
挨拶に来る人が多かったのでそれに時間がかかった。
テーブルを回ってキャンドルライトを照らして、お祝いの挨拶を聞いて回る。
俺たちは程よい時間になったので神殿を退出した。
◇◇◇
二時間くらいの披露宴だったけど、始めてのことだったので結構疲れた。
王城の客間に戻ったときには夕方になっていたので、お風呂に入ってから早めに寝ることにした。
「ご主人さま、不束者ですがこれからも末永くよろしくお願いします」
「私も、旦那様を支えていくのでよろしくお願いします」
「俺の方こそ、至らぬ旦那だけど頑張りますので、よろしくお願いします」
三人で笑いあってベッドに入って寝ることにした。
三人分のベッドが用意されているので俺は真ん中のベッドで寝る。
(……ん?)
夜中に目が覚めた。
掛け布団の上に何かが乗っている。
始めはラザリンかと思ったが、もっと軽くて小さい。
手を伸ばして触ってみた。
柔らかくて華奢な女の子の身体だった。
暗くて見えないけど……。
シャーっとカーテンが引き開けられた。
月明かりが差し込んでくる。
カーテンを開けたのはフューメルさんだった。
俺の上に乗っているのは、フューメルさんの妹のミューリア王女だった。
「しょうがない妹ですねぇ。姉の私が羨ましくなったのですか?」
「私もユウヤ様の奥さんにしてもらうの」
ミューリア王女はぬいぐるみを抱いて俺のベッドの上に座っていた。
「貴女はエルフの年齢では六歳くらいではないですか」
そうなのだ、ミューリア王女は六歳くらいの子供なのだ。
「お姉さまばかり人間の男と結婚してずるい」
「貴女も大人になれば良い人が見つかりますよ」
ミューリア王女はフューメルさんに連れられて、自分の部屋に戻って行った。
エルフの国に来ると、人間族の男はこんなにモテるのか。
ラザリンがジトーと俺の方を見ていた。
浮気じゃないぞ。
俺は何もしていない。
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