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異世界孤児が女魔狼王と契約してえっちして戦闘して出世しました  作者: 華咲 美月
第一章 魔狼王との契約
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第一話 異世界転生して孤児になる

長編を書くのは難しくても、もう少し長いお話が書けたらいいな。

 高洲優也(たかすゆうや)は県内有数の進学校である県立英莉糸(えりいと)高校の三年生である。

 部活は剣道部で段位は参段でインターハイで優勝したこともあった。

 性格は質実剛健で正義感が強い。


 帰宅するために午後六時頃駅にいると、女子高校生が不審な男に捕まって、トイレに引っ張り込まれそうになっているところに遭遇した。

 すぐに走り寄って、女子高校生をかばい男を突き飛ばした。

「お前、何してんだ! やめろ!」

「うるせい! 邪魔するな!」


 男が振り向きざまナイフを持った手を突き出してきた。

 剣道は何の役にも立たなかった。

 高洲優也は十八歳で変質者に心臓をナイフで刺されて死んだ。


 ◇◇◇


 俺が目を覚ますと白いふわふわとした雲の上にいた。

 まるで昔観た映画の大霊界みたいである。

「俺は死んだのか……」


「ピンポーン! 優也さん貴方は死にました~。ここは死んだ人の霊魂が一時的にとどまる煉獄というところで~す」

 腰まである金髪で背中に鳩みたいな羽根をはやした女性が現れた。

 光り輝く後光がさしている。

「あ、貴女は……女神なのか?」

「私は運命の女神ディスティーネで~す」

「俺はどうなるんだ?」


 女神ディスティーネは俺に指を突きつけた。

「勇者として異世界転生してもらいま~す」

「勇者……異世界転生って……本当にあるんだ、そういうのって……」

 俺は剣道ばかりやっていたが、最近流行りの異世界転生モノのアニメを観たりラノベを読んだことがあった。


「最初は孤児からスタートしてもらいま~す。そこで貴方の“運命”と出会いま~す」

 女神ディスティーネは満面の笑みで俺に手を突き出した。

「それでは異世界に送りま~す」

「待ってくれ、チート能力はくれないのか?」


 彼女はクスッと笑った。

「後のお楽しみで~す。レベルを上げれば、必ずラスボスを倒せま~す」

 俺の身体が光に包まれて、意識が遠のいていった。

 最後に運命の女神の鈴のような笑い声が聞こえたような気がした。

 なんでそんなに楽しそうなんだ……。


 ◇◇◇


 俺が目を覚ますと赤ん坊になっていた。

 前世の記憶はあるが、話すことはできないし動くこともそれほどできない。

 それでも、父親と母親が平凡な農民であることは会話を聞いてわかった。

 俺には前世と同じ「ユウヤ」と言う名前がつけられる。


 一年間ほどは何事もなく両親に愛情を込められて育っていった。

 俺が一歳の誕生日を過ぎた頃に事件が起こった。

 真夜中に家の中に盗賊が侵入してきたのだ。

 手には短剣を持っている。

 危険を察知した俺は、身体の中で魔力回路が目覚めるのを感じた。


 盗賊が寝ている母親を刺し殺そうとしたときに魔法が暴発した。

 俺の属性は“闇”である。

 闇属性の攻撃魔法“シェイド”で盗賊は吹き飛ばされた。

 爆音で両親が目覚めて、大騒ぎになった。


 翌日、盗賊は農村の自警団に引き渡された。

 魔法を使った俺もただでは済まなかった。

 隣町の教会に連れて行かれて“鑑定の水晶”を使われたのだ。

 俺に闇属性の魔力があることが明らかになった。


 両親はがっくりと項垂れて憔悴していた。

 会話を聞くと、この国では闇の魔力を持って生まれた子供は、魔物に近い“悪魔の子”として忌み嫌われているのだ。

 俺はその日のうちに、孤児院の前に捨てられた。


 ◇◇◇


 俺は孤児院の院長に育てられた。

 院長はドニと言う名前の女性で四十歳くらいの優しい人だった。

 優しい人でなければ、闇の魔力を持った子供を育てようなどとしなかっただろう。


 俺は孤児院の中で孤独だった。

 時々、闇の魔力が暴走するので怖がって誰も近寄ってこないのだ。

 話し相手になってくれるのは院長のドニだけだった。


 孤児院があるのはハイマルク王国の国境付近にあるノウリプトンの町だった。

 この国は隣国のグレゴール帝国と小競り合いを繰り返している。

 いつか本格的な戦争になると噂されていた。


 俺が十二歳の頃にとうとう戦争が始まった。

 グレゴール帝国の第三軍団が攻めてきたのだ。

 ハイマルク王国の第一騎士団が迎撃にあたった。

 国境付近にあるノウリプトンの町は戦争と無関係ではいられなかった。

 次々と負傷した兵士が運ばれてくる。

 冒険者も駆り出されて街の周囲を警戒していた。


 俺は相変わらず孤独で、戦争とは言っても十二歳の孤児にできることなどないので、夜になると孤児院の屋根に登って一人で泣いていた。

 その日は満月で真夜中でも明るかった。

 俺はいつものように孤児院の屋根の上で、月を見上げながら泣いていた。


 ふとした拍子に気がついた。


 何かが近づいてくる。

 闇の魔力が反応して人外のものが接近してくるのが分かるのだ。

 屋根の上に“それ”は降り立って、俺の方に寄ってきた。

 “それ”は大きな狼だった。

 血の匂いで気がついた。

 怪我をしている。

「ガルルルゥゥゥ……」


 狼は警戒するように唸ったが、俺が手を伸ばすと寄ってきた。

 俺は不思議と怖くはなかった。

 長年の孤独で心が壊れていたのかもしれない。

 毛並みを触ると指先から魔力が流れていった。


 狼はびっくりしたように怯んだが、警戒を解いて俺の膝に前足を乗せてきた。

「……人間よ、心地よい魔力だ。もっと分け与えてくれ……」

 狼が喋った!

「驚くな……私はただの狼ではない……。それよりも怪我をして辛いのだ。お前の闇の魔力を分け与えてくれ……」

「でも、どうやって……」

 俺は戸惑った。

 魔力を渡す方法なんて知らない。


「こうすればよいのだ……」

 狼は正面に回ると俺の唇に自分の唇をくっつけた。

 俺は狼とキスをしていた。

 不思議と獣じみた生臭さはなくて、まるで人間の女性と口づけているような気がした。

 俺の中に暴発するほどに溜まっていた魔力が、どんどんと流れていった。

 それは初めて経験する心地よい体験だった。


 眼の前で一瞬、黒い光がきらめいた。

 目を開けて見上げると、年上の女性が俺を見下ろしていた。

 狼のような耳と尻尾がついている。

 さっきの狼が変身した姿だとすぐにわかった。

「純粋で、それでいて孤独を知った切ない魔力だ……。大魔王ビザンツ様がお隠れになって以来こんな魔力に触れたことはない……」

 俺はその女性の美しさに慄いた。

「あ、貴女は……?」


「私の名は、○△☓□……」

 何故かその名は記憶に残らなかった。

「覚えられぬか……。まだその“刻”ではないということか……。お前の名前を教えてくれ?」

 狼のような女性は、優しく微笑んだ。

「俺はユウヤ……」


「ユウヤ、お願いがある。私と契約して魔力を時々与えてくれないか?」

「えっ?」

「悪い話ではない。契約してくれるのなら、私にできることならお前の願いを何でも叶えてやる」

 彼女はクスッと笑った。


「それじゃぁ、契約するから俺が寂しくならないようにずっと一緒にいてほしい」

 俺は目の前の美しい女性に心を奪われていた。

 彼女はまた俺に口づけた。

 舌を絡める大人のキスだった。

「よいぞ、これで契約成立だ……」


 俺は急に睡魔に襲われて屋根の上で眠ってしまった。


 ◇◇◇


 数日後、孤児院に新しい仲間が加わった。

 戦争の影響で親が殺され孤児になる子供が増えているのだ。

 新たに連れてこられた子供は俺よりも四つ年下の女の子だった。

「ラザリンです。よろしくおねがいします」

 黒髪の可愛らしい女の子だった。


 ラザリンは孤児院の中でも可愛がられて皆の人気ものになったが、俺によく懐いた。

 俺はラザリンのお陰で孤児院の仲間と少しずつ打ち解けていった。

 彼女は俺の行く所にどこにでもついてきて、じゃれついてきた。

 俺も彼女をかわいがった。


 院長のドニも微笑ましい目で見ていた。

 そうしてこの国は戦火に苛まれながらも、俺の周囲では幸せな時間が流れていったのである。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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