第858 およげ!マフィンちゃん!
お菓子屋さんのショーケースからマフィンちゃんが逃げだした。
道をはさんだ向こう側。さらさら流れる川にぽちゃん。
沈んで、おぼれて、ふわふわマフィンはべちゃべちゃマフィン。
水がしみしみ、ほどけて、くだけて、魚にぱくぱく食べられた。
お菓子屋さんは涙を流して悲しんだ。
だから、それからというもの、マフィンちゃんをサメの焼き型で作ってあげることにした。
たっぷりバターのコーティングつき。
サメの形をしていれば、魚は怖がって近づいてこないし、バターが水をはじいてくれる。
新しいマフィンちゃんたちは次々に川にとびこんで、たちまちショーケースはからっぽになった。
元気に川を泳ぎまわる姿を見て、お菓子屋さんはほっと安心。
見物客が集まって、川のまわりは大盛況。
お菓子屋さんはマフィンちゃんの大好物のチョコレートを売り歩いた。
お客さんがそれを買って、川を泳ぐマフィンちゃんにあげるのだ。
チョコレートはとぶように売れて、お菓子屋さんは大金持ちになった。
けれど。
みんなでたくさん餌やりしたから、川はべとべとチョコレートまみれ。
汚れて、よどんで、にごった水。
川にすんでいた魚は一匹のこらず死んでしまった。
お役人がやってきて、マフィンちゃんを侵略的外来種としてつかまえた。
そうしてマフィンちゃんはおいしく食べられることはなく、ゴミと一緒に埋立地に処分されたのであった。




