第49話 戦争の終わり
地球に平和が訪れた。あらゆる闘争は終結し、以後は未来永劫、歴史にいかなる争いをも刻むことはないと全人類が誓った。
しかし一つ問題が残っていた。それは武器や兵器の廃棄であった。どうやって処理すればいいか様々な意見が飛び交った。解体するとなると途方もない年月が必要になる。かと言って地中や海底に沈めるのは環境への影響が心配された。幾度となく話し合いが行われ、最終的には宇宙へ捨て去ってしまうことに決定した。
武器、兵器、それに類するものは全て一カ所に集められ、宇宙船に載せられた。各国一丸となって幾重もの確認がなされ、隠されていたり忘れ去られていたものも全て探し出されて運び込まれた。
決行の日。全人類が祝福する中で各国の代表が一斉にボタンを押すと、争いの為の道具たちは宇宙の彼方へと飛び去って行った。それを眺める世界中の人々の表情は笑顔で溢れ、未来への希望で満ち満ちていたのだった。
ある惑星に突如大量の兵器が送り込まれた。宇宙船に積まれた兵器群を見て、その惑星の住民たちは首を捻った。学者たちが集まって解析に尽力し、やっとのことで用途が判明した。
住民たちはそれらの技術を使って惑星を開拓し、潤沢なエネルギーを生み出して豊かな生活を築いた。手に余るような道具も数多くあったが、住民たちはこれらが開発された惑星はここよりもっと巨大で、もっと雄大で、大規模な道具が必要だったのだろうと想像した。
文明が飛躍的に発展し、宇宙船がやって来た軌道から送り主の惑星が特定された。住民たちは素晴らしい道具を贈ってくれた偉大な惑星の者たちに、感謝と友好の証として、技術の粋を集めて改造した道具を載せた宇宙船を送った。その惑星の者たちに、この道具のおかげで自分たちがいかに発展したのかという成果を、子供が大人に宿題の結果を提出するような無邪気さで、見てもらおうと考えたのだ。
宇宙船を見送る数多の瞳にはその旅路の終着点にいる者たちへの憧れと尊敬が込められており、その全員が自分たちの改造した道具が役に立ちますようにと願った。
地球では人々が武器なき拳で戦いを始めていた。平和の理念は儚く崩れ去り、争いは争いを呼び、その火種は激しく燃え上がろうとしていた。そして、誰もが敵を殲滅する為の道具を必要としていた。
そんな中、強力な兵器群を載せた宇宙船が友愛の祈りと共に、刻一刻と地球へと近づいていたのだった。