第23話 昼夜戦争
宇宙の果てから長い旅路を経て、何かがこの惑星へと辿り着いた。地表に降り立った何かは闇の中で蠢くものたちに気がついた。恐ろしい姿をしたものがあちこちの闇の中に潜んでいるのだ。それは影を固めたような瞳で威嚇するようにじっと闖入者を見つめていた。今にも襲い掛かってきそうなそれを前にしても、宇宙から来た何かは決して引き下がることはできなかった。邪魔な者全てを滅ぼしてでもこの惑星を手に入れなければならなかったのだ。何かは戦う決心を固め、大量の援軍を呼び寄せた。
凶悪な姿だった。それは光の中で瞬いていた。この惑星の調査に訪れていた何かは驚いた。それは光の中で次々に増殖して、こちらの領域を侵略しようとしていた。けれど何かはこの惑星を諦めるつもりはなかった。何かは応援を要請して、猛然とそれに立ち向かっていった。
戦いが始まった。一方は闇の中、もう一方は光の中でしか活動できないことをすぐにお互いが悟った。惑星を闇に染めるか、光で照らし尽くすかに全勢力が傾けられた。
戦況は常に五分だった。惑星の半分が闇の中にあるとき、もう半分は常に光の中にあった。惑星の一部の闇を光で祓っても、すぐに追いかけるようにして反対側にある光は闇に覆われた。終わらない追いかけっこのように、そんな攻防が繰り返された。
お互いに決して引き下がらなかった。永劫の時の中で決着がつかないまま、戦いは続いた。
「お父さん。どうして昼は明るくて、夜は暗いの」
「それは地球が真ん丸で回っているからだよ。太陽に照らされている半分は明るくて、もう半分は暗くなるんだ」
父親は絵に描いて説明したが、子供は「ほんとう?」と疑わし気に眉根をひそめた。そんな様子を見て、父親は子供の頭を優しく撫でながら微笑んだ。
「もうこんな時間よ。早く寝ましょう」
母親が布団をかぶって言うと、父親は明かりを消そうとして、ふと窓に目を向けた。立ち上がり、窓へと近づいてカーテンを引く。外はもう深夜になろうというのに昼間のように眩い光に包まれていた。
人知れず行われていた争いの決着がついたのだ。そんなことを知る由もなく、父親はただ唖然として立ち竦むしかなかった。




