第21話 悪夢
ああ、いやだ。眠りたくない。どうして俺だけが眠らなくてはならないのか。何度も繰り返した袋小路の問いだ。自身の役割を理解してはいるが、嘆きは止められない。
今の時代、俺以外の誰一人として眠る者はいない。眠る必要はなくなったのだ。画期的な技術が開発されて、人類は眠りから解放された。もはや睡眠などというのは無駄な時間の浪費でしかない。人生の三分の一ほどを捧げて夢などと言う拷問に精神を浸すのだ。
そう、夢。夢だ。俺は夢と言うものを心底嫌悪しているのだ。不条理で不合理なろくでもない妄想。夢を見ないでもいいと言うならばまだ眠らなければいけない我が身を受け入れよう。だがそうはいかない。俺は夢を見ることを義務付けられており、装置によって夢を見ざるおえなくされている。
全ては奴らの為だ。奴らのあの厭らしい目鼻は見るに堪えない。
ああ、しかし今日も俺は寝台に縛りつけられている。
奴らがやって来た。にたにたと笑みを浮かべ、涎を垂らしながらこちらを見つめている。これから俺の夢を食べようというのだ。
獏ども。何故こんな奴らを保護しなければならないのか。眠りのなくなった世界からは消えてしかるべきなのに。これこそが悪夢に違いない。そうだ、夢よ、醒めろ。醒めてくれ。