第20話 流星太郎
昔々あるところ、おじいさんとおばあさんが暮らしていました。
ある日、おばあさんは天の川銀河に洗濯へ、おじいさんは大マゼラン雲へ芝刈りへ行きました。
おばあさんがアステロイドベルトを洗濯していると、天の川銀河をどんぶらこどんぶらこと流星が流れてきました。その流星を持ち帰ると、おじいさんに見せます。おじいさんが電離層を食べようと流星を割ると、中から可愛らしい赤ちゃんが生まれました。ふたりは大層驚き、その子を流星太郎と名付けて大切に育てました。
愛情をいっぱいに注がれて、流星太郎は立派な恒星に育ちました。その頃、アンドロメダ銀河で鬼が暴れているという噂を流星太郎は耳にしました。流星太郎は正義感が強く、すぐにその鬼を退治することを決心しました。
旅立つ流星太郎におばあさんは丹念に作ったいくつもの惑星を持たせました。そうして流星太郎は鬼退治の旅へと出発したのです。
旅の途中で流星太郎が持つ惑星に引かれた衛星たちがお供になりたいと申し出ました。流星太郎は惑星を与えて、いくつもの衛星を引き連れて旅を続けます。そして、長い長い旅路の果てに、ついに流星太郎は鬼の居場所に辿り着いたのでした。
鬼は真っ暗な穴でした。あらゆるものを容赦なく奪い去っています。
流星太郎は果敢に挑みかかりますが、全く歯が立ちません。お供ともども糸のように細くなって鬼に吸い込まれてしまいました。
しかし、鬼の中でも流星太郎はあきらめませんでした。永劫にも思える時の中で、少しずつ鬼をちぎって粒子となった欠片を放出させていったのです。
やがて鬼は全ての粒子を放出させられて、きれいさっぱり蒸発してしまいました。
流星太郎は鬼に呑み込まれてぺしゃんこになっていましたが、今度はぐんぐん広がって、無限に体が伸び始めました。やがてその中に無数の煌めきが生まれ、流星太郎は新たな宇宙になったのでした。