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井ぴエの毎日ショートショート  作者: 井ぴエetc


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第1092話 太陽人


 人類の総力を結集して、火星からの侵略しんりゃく者、火星人どもを退しりぞけた直後のこと。

 祝勝ムードもつか星間せいかん戦争の熱が冷めやらぬうちに、攻め入ってきたのは、太陽からやってきた太陽人。


 かつてないほどの強敵を前に、すぐに緊急対策会議が開かれる。


「戦うべきだ!」


 強硬きょうこうに主張する声に、大多数がまゆをひそめた。

 降伏こうふく勧告かんこくを簡単には受け入れられない気持ちは理解できるが、戦力差は歴然れきぜん

 地球はすでに太陽人の超巨大宇宙船に取り囲まれている。

 極小太陽を搭載とうさいした太陽宇宙船のパワーは強大。

 警告として太陽砲が月に撃ち込まれたが、たった一撃で、地球から肉眼で見えるほどの巨大な()()()が月表面に作られた。

 やつらが本気になれば、月を真っ黒こげにして、永久に輝かぬ星にすることすら可能だろう。

 しかも、やつらの母星である太陽には、太陽砲の威力をはるかに凌駕りょうがし、超長距離の狙撃が可能な、破壊兵器が用意されているのだという。放出されるエネルギーは太陽フレアと同等。太陽フレアといえば、全人類が使う電力で換算かんさんすれば、数10万年分に相当するエネルギー。

 そんなものを使われては地球はおしまいだ。


「おとなしくしたがおう。抵抗すれば確実に人類は滅亡してしまう」


「だが、降伏したからといって、生き残れる保証ほしょうはないぞ。太陽人は無抵抗の我々を皆殺しにするかもしれないじゃないか」


「戦えば敗北必至ひっし。なら、すこしでも可能性があるほうにかけるべきだ」


「そうだな。太陽に逆らうなんてとんでもない。もしも、地球に降りそそぐ太陽光を遮断しゃだんでもされれば、戦うまでもなく我々は負ける。昼が消滅し、地球は永遠の夜の惑星になってしまうぞ」


「いくら太陽人だからといって、そんなことができるのだろうか。我々地球人とて地球そのものをどうこうする力はない。太陽人が太陽を完璧にコントロールできるとは思えない」


「それは希望的観測だ。科学力で圧倒的に相手が上なのは確実なのだから、どんなことでも可能かもしれないという前提で議論するべきだ」


「これを機に太陽から独立してはどうだろう」


 つまり、太陽系からの脱出。

 昨今の世界情勢としては、各国が着々と宇宙進出の準備をしている真っ最中。

 火星人がくる前に、水星人からの攻撃のきざしがあり、それへの対策が進められていたのだ。

 とはいえ、全人類が宇宙で生活できるようになるには、まだまだ足りないものが多い。

 宇宙船そのものの数。長期間の航行こうこうささえる物資。植物工場の種の改良。移住先となる宇宙座標の選定せんてい

 まだ時期じき尚早しょうそうと言わざるをえない。


「いまは交渉を長引かせて、様子見をするべきじゃないだろうか」


 この中庸ちゅうようとも中途半端ともいえる意見に支持が集まった。


 いまのところ相手の主張は一方的で、その目的はわからない。

 なぜ、地球を支配しようとするのか。

 火星人の場合は、地球に豊富に存在する水を狙っての侵略行為であった。

 しかし、太陽人に水が必要とは思えない。

 なにせ、水など存在しえない星で暮らしているのだから。


 交渉の機会を求めて、太陽人の宇宙船に何度も通信が送られた。

 こちらは太陽人がどのように意思疎通そつうしているのかすら知らないが、相手は地球で使われている言語を完璧に解析かいせき済み。翻訳された文章で返信がくる。


 そうして判明した目的は、地球を避暑地ひしょちにすること。


避暑地ひしょち?」


 報告を受けた高官が首をかしげると、通信士がうなずいて、


「はい。地球が()()()()()()()()になったから、旅行におとずれたいのだとか」


「それぐらいなら、支配などせずともよさそうに思えるが……」


「地球人をがいしたり、奴隷どれいのように扱おうという意思はないようです。太陽人たちは地球環境に純粋で熱烈な興味を持っており、資源を持ち出すことは一切しないと言っています」


「ふうむ。ならば、むしろ地球にとっては都合がいいのではないか。商機ととらえることもできる。避暑地ひしょちとして使わせる代わりに、太陽の膨大ぼうだいなエネルギーのほんのちょっぴりでも都合してもらえれば、観光収入でがっぽり……」


 さっそく和平協定を結ぶ方向で話し合いがおこなわれると、太陽人はあっさりと了承して、地球が太陽人を受け入れるなら、攻撃はしないと約束してくれた。


-÷-÷-÷-÷-÷-


 地球は猛暑もうしょに見舞われていた。


「暑い……暑すぎる……」


 以前までの温暖化なんて些細ささいな問題に思えるほどの急激な気温上昇。

 ただ、こうなった原因も、地球温暖化にあるのであった。

 そもそも、地球の温度がもうすこし低ければ、太陽人に目を付けられることなどなかったのだから。


 太陽人はすさまじい熱の塊。太陽の表面温度は6000度。最低でも、それぐらいの体温があるということ。

 そんな超高温を持ったやつらが地球に大挙たいきょすれば、地球全体の気温が上がるのも当然だ。


 極地きょくちの氷がけているのに、海面は下がっているという有様。

 海面が上昇する速度以上に、海水浴をする太陽人が水を蒸発させているのだ。


 旅行者の数の制限、海水浴をひかえてはもらえないかと交渉が続けられているが、いまのところの進捗しんちょくかんばしくない。


 その裏で、火星との連絡がみつにおこなわれていた。

 水を欲しがっていた火星人。

 海がまるごとなくなるぐらいなら、火星に水を渡し、協力をあおごうというわけ。

 けれども、地球と火星が協力したとして、太陽に対しなにができるというのか。

 太陽系全体の総質量の99%以上は太陽。

 他のすべてを合わせても、1%にすら満たない。

 太陽系脱出計画も進められているが、地球が灼熱しゃくねつの惑星になる前に、間に合うかどうか……


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