魔王工房2
ドワーフの工房に到着すると、そこではドワーフやゴブリン、ダークエルフたちが金属などを加工したり、剣や食器などを作っていた。
熱せられた金属などを叩き、形状などを変えて加工していく。
金槌などが叩く音が響き渡り、実に賑やかな工房だ。
そして、この工房の最高責任者であるドワーフの旦那という愛称で親しまれている、ドワーフのグロッソさんが出迎えてくれたのだ。
白髪交じりの長いあごひげが特徴的な人であり、外見上はサンタクロースみたいだなと思っている。
「おっ、魔王様じゃないか!よく来てくれた!話はエルフのちびっ子たちから聞いているぜ!」
「おはようございますグロッソさん。先にお渡しした例のチタン合金防護フィルターの修理が完了したと報告を受けましたが、どんな感じに仕上がったのですか?」
「おうよ!かなり状態の良い感じだったからな……魔王様もきっと気に入ると思うぜ!」
「完成品を見るのが楽しみです。皆さんも呼んでもらってもらってもいいですか?」
「はははっ、そう慌てなさんな!よーし、皆!ちょっと作業を止めろ!魔王様がいらっしゃった!例の品を見せるから、皆もこっちに来い!」
グロッソさんは工房の中に俺とシルヴィアさんを案内してくれた。
工房では先ほど俺たちの事をグロッソさんに報告してくれたエルフの少年たちも興味深々だ。
他のドワーフやゴブリンたちも、作業を一時作業を止めてから工房の奥の方にぞろぞろとやってくる。
部屋の奥には完成品や納品予定の資材などが集積されており、その中から耐熱金庫の前に立ち止まった。
「さて……いよいよ例の代物を魔王様にお見せするが、その前に一つ……魔王様、心の準備はいいですかい?」
「ええ、何時でもどうぞ」
「はははっ、絶対に驚いて腰を抜かさないでくださいよ!」
三つの円状のダイヤルが付いた金庫は、旧人類文明で遺された代物の一つであるが、どうやらこの金庫に関しては先代魔王が修理をしてドワーフにプレゼントしたという。
未だにドワーフたちでも、複数のダイヤルを回して開錠を行う金庫は作れないらしく、完全にロストテクノロジーと化してしまったようだ。
グロッソさんはダイヤル式の金庫を手慣れた手付きで数字を合わせてから、金庫の鍵を差し込んで回すと「ガチャ」という音と共に金庫が開錠して、中から風呂敷に包まれた物が出てきた。
「さーて、魔王様……これが修理依頼をしていた代物だ……よく見てほしい」
グロッソさんが机の上に置いて風呂敷を開けると、そこには綺麗に磨き上げられた上に、均一に補強されたチタン合金防護フィルターが姿を現した。
しかも、ただ単に直したわけではない。
防護服として魔族でも装着できるようにグロッソさんが手を加えていたのだ。
これは俺が修理依頼をした際、もし魔族などに装着できるようであれば、このチタン合金防護フィルターを装着出来るように改良を施してほしいと追加で依頼したからだ。
しっかりと言われた仕事はこなしてくれたようだ。
「おおっ……これはすごいですね……」
「へへっ、ただ単に直すといっても、このままでは使える用途は限られていますからね……盾にするとしたら、前面はともかく後ろ側が無駄になってしまいますからね……」
「それで、鎧のような感じに再加工して修理をしてくれたというわけですね」
「おうよ。これで大丈夫だとは思うが、魔王様も見てもらって異常が無いかチェックをして頂きたい」
「触ったり、着込んでもいいですか?」
「勿論!好きなだけやってください」
工房の責任者ということもあり、グロッソさんが本当にこれで大丈夫なのかと最終チェックを俺に頼んできた。
パッと見た感じ、防弾チョッキみたいな感じではあるが、性能がどうなっているか確認するためにステータス画面で情報解析を行う。
果たしてどんな感じになっているのだろうか。
―――< チタン合金防護服 >―――|×|
基礎情報
防御力+150 最大容量+25 重さ+20 素早さ-5 耐久度:500
▽概要▽
チタン合金防護フィルターをドワーフの工房で修理した後に、防護服として使用できるように改良を加えたものである。
素の状態のものより、ドワーフたちが他の金属などを修理の際に施し、防護能力を高める事に成功した。
従来の屑鉄製鎧、金属製鎧に比べて耐久度と防護力、軽さが向上している。
小口径の拳銃でも耐えきれる防護能力を持っている。
―――――<閉じる>―――――
ステータス画面で見た感じは、従来の鎧よりも高性能な数値のようだ。
着込んでみた感じだが……やはり防護服ということもあり、ぶかぶかと重たい感じがする。
(質感としては内側になめし革を使っているのか……牛だと思うけど、着心地は悪くないな。それに、戦闘ともなれば動きやすくて防護力のある服のほうが役立つからね……)
それでも、しっかりと注文をしたものを修理と加工をして、こうして防護服として使えるようにしたのは有り難い事だ。
俺はグロッソさんに、防護服はこれで問題ないと伝えることにした。




