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魔王工房1

◇ ◇ ◇


ドワーフ工房……。

それは、再興郷の中で一番の腕を誇る工房だ。

破壊したロボットの残骸や、旧人類文明が遺した鉄筋コンクリートなどから鉄を錬成し、再興郷の戦闘系魔族たちの武器となる剣や盾、また調理器具のフライパンや鍋などに加工をしている場所だ。

そんなドワーフ工房に大事な用事がある。


「魔王様、先の戦闘で確保できた部品の修理が完了したようです」


朝起きてからシルヴィアさんからの報告で、軍用ロボットから分解したパーツの一部の修復が完了したという報告が入ってきたのだ。

軍用ロボット……使えるパーツは少なかったが、俺の情報解析ことステータス画面で使える部品を見定めたお陰で、修理可能なものは使えることになった。


先の戦闘の際にドワーフたちの工房に軍用ロボットを持っていた途端に、ドワーフたちは有無を言わずに軍用ロボットをすぐに溶鉱炉に流し込もうとしたので、俺とシルヴィアさん、ノアと一緒に慌てて止めてもらい、分解して使える部品を取り出してほしいとお願いしたのだ。


『何だって?!これを分解して使える部品を直してほしいだって?そんなことが分かるのか!』

『でも、まだ軍用ロボットを分解すらしていないのに、どうして分かるんだ?』

『それでも魔王様の命令です。お願いできますか?』

『シルヴィアさんにそう言われたらな……軍用ロボットの残骸というのは、剣やクロスボウの銃身部分を作るのに最適な素材だ。出来れば溶鉱炉に溶かしておきたいもんだが……魔王様の命令だし仕方ねぇな。もし直せるのであれば、何とか俺たちでやってみるよ』


……と、ドワーフたちは驚いた様子で渋々分解をして先に俺が指定した使える部品を修理することになったのだ。


その中でも俺が期待しているのが、チタン合金防護フィルターだ。

偵察用や暴徒鎮圧用として開発された支援用ロボットということもあり、金属バットで殴られたり、拳銃などの小口径弾などから防護するため、内側からロボット内部の精密機械部品を保護するために取り付けられていたものだ。

ある程度の衝撃にも耐えきれるように作られている。


流石にガルムの大剣では一撃で真っ二つになってしまっていたが、普通の屑鉄を溶かして出来た鎧よりは軽くて丈夫な防護用の盾などに再利用できるだろう。


「いよいよ修理が完了したのか……様子はどうなんです?」

「はい、ドワーフたちも驚いた様子でしたよ。工房でも修理と補強を合わせて行ったそうですから、きっと魔王様も気に入ると思います」

「そうですか……ではシルヴィアさん、今から行きましょうか」

「はい、お供致しますわ」


シルヴィアさんと一緒にドワーフの工房へと向かう。

魔王城とは名ばかりかもしれないが、地下水路を改造して作られた居住空間は、ファンタジーゲームに登場しそうな見た目をしているとつくづく思っている。

文明崩壊前から稼働している蛍光灯が明るく、夜になるとこの蛍光灯は消灯ではないが少し暗くなることに気が付いた。


「魔王様!おはようございます!」


振り返るとダークエルフ族の少年たちが元気よく俺に挨拶をしてきた。

シルヴィアさんのように長い耳が特徴的なエルフであり、髪の毛はそれぞれ白色だったり金髪だったりとバラバラではあるが、全員共通しているのは褐色肌という点だ。


「おはようございます!魔王様!」

「おはよう、今日も君たちは工房に向かうのかい?」

「はい!俺たちも工房で腕を磨きたいので!」

「ドワーフの旦那の指示で、今日は金属の溶解を行うんですよ」

「成程、今から俺もドワーフの工房に行く予定だよ」

「えっ?!本当ですか!魔王様直々に!」

「うん、頼んでいた部品の修理が完了したと報告があったからね」

「それはスゴイ!見てみたいなー」

「駄目だよシュ―、俺たちは課題をこなさないといけないって言われているだろ?」

「そっかぁ……残念」


ダークエルフの少年たちは、基礎学習の一環として工房などで溶接や溶解といった学習を学ぶ。

これはダークエルフ族の仕来りらしく、シルヴィアさんも幼い頃に弓矢の鍛錬だけでなく、鉄や金属の加工や溶解、魔術に関して学び、一通りの事を自分自身で出来るように育てられる。

そこから、自分に見合った仕事を探す……というのがダークエルフの教育理念だそうだ。


「大丈夫、その時はみんなを呼んでみるよ」

「えっ、いいんですか?!」

「勿論、課題はこなさなきゃいけないけど、色々と見て学んだほうがいい、俺からドワーフに頼んでおくよ」

「ありがとう!魔王様!」

「それから、溶解を行う際にはしっかりと目を保護するようにね。でないと目が傷んでしまうからね……ゴーグルはしっかりと付けて作業するように」

「はい!ありがとうございます!」

「俺たち、先に行ってドワーフの旦那に知らせてきます!魔王様もお仕事頑張ってください!」

「うん、君たちもね!」


きちんと挨拶をして、それでいてお礼もしっかりと言っている。

元気で礼儀正しいエルフたち。

シルヴィアさんも彼らを見て、ニコニコしている。

エルフの少年たちから遅れること5分後にドワーフの工房に到着したのであった。

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