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ミント

◆ ◆ ◆


再興郷の地下内部は照明が付いている影響で明るいが、地上は蝋燭の灯が無ければ星々や月の輝きを頼って移動しなければならない。

ミントたち、スライムは農作業を終えてから簡易シャワーで軽く汚れを洗い流し、自分達の部屋に戻っていく。


しかし、農園の代表者であるミントだけは部屋に戻っていなかった。

彼女は先ほどまで魔王と一緒に話をしていたリリーと共に、倉庫の一角でリリー特製のレモンの実を絞り、砂糖などを入れて発酵させたお酒を飲みながら、魔王について語ろうとしていたのだ。


「それにしても、ミントが私を呼び出すなんて今日で2回目よ。珍しい事もあるのね」

「リリーにしか話せないもの。それに、魔王様の話題は持ち切りになるけど、基本的に秘密に関わる事とか、推測で色々と言われたりすると魔王様の迷惑になってしまうわ」

「それもそうね。それで魔王様の詳しい話をするために私と飲んで話そうとしているわけね」

「その通りよ」

「同じミントの仲間にも話さないのも、噂を広げない為ね?」

「……この話は大勢の人たちの前では話せないし、親友同士だけで話すのに限るわ」

「それでミントは私を選んだって訳ね……」

「でも予定が開いているのはリリーだけだと思ったのよ」

「まぁ、確かにそうだからいいんだけどさ。ほら、マグカップを出して、レモン酒を注いであげる」

「ありがとう」


ちなみに、このレモン酒に関しては他のアルラウネも持っているが、製造・管理は共にリリーが作っている。

実質的に生産しているのは再興郷でリリーただ一人だけである。

木製のマグカップにレモン酒を注いで、乾杯をしてからリリーと話を進める。


「ミント……魔王様って貴女から見た印象を聞かせて頂戴」

「そうね……悪い人ではないわ。少なくとも話はしっかりと聞いているし、区画については褒めていたわ。農園としての機能についても語ったりもしたし、それなりに知識と教養のある御方よ」

「やはり、そういう印象ね……私も同じよ。灰についての事を言った際に、彼はすぐに草木灰だと言っていたわ。あれはしっかりと土いじりをしている人じゃないと肥料については分からないわ」

「……シルヴィアさんも魔王様がトイレに行っている間に私達に言っていたわね。魔王様はこの間再興郷を襲ってきたロボットの残骸をパッと見ただけで、使える部品を言い当てたと……」

「魔法は使えない代わりに、そうした一種の透視能力を持っているのかもしれないわね」


正確に言えば、情報解析というスキルが発動したからこそ出来た代物である。

物や人を意識して確認しようとすると、詳細なステータス画面と共に解説文が記載されるという仕組み。

これは現在鈴木コータでしか出来ないものであり、再興郷で同じようにできる者は一人もいない。


「それに、魔王様と話をしていると気分も落ち着くわね」

「私もそれは思ったわ。彼と話していると、落ち着くし、気分も良いのよね」

「それでリリーが異性の前であんなに上機嫌で話していたのね」

「ふふっ、それはそうでしょう。魔王様って面白い人だもの」

「だけど、あまり魔王様を困らせるようなクイズを出して揶揄うのは良くないわよ。魔王様もちょっと戸惑っていたし」

「そうね、今度あったときは流石に揶揄うのは止めておくわね、ところでミント……貴女もうお酒飲んでいる?」

「ええ勿論よ、ほら……もうコップが空よ」

「あっ……あんたそんなに度数の高いお酒を一気に飲んだら……」


ミントがレモン酒を飲むと、ミントの身体がほんのりと赤色に変化していく。

スライムは食べたものなどが身体に反映される仕組みであり、アルコール度数が高いと赤色に変化していくのだ。


(あらら……やってしまったわ……)


そしてスライムはお酒が身体に回るのも早い。

レモン酒をマグカップ一杯分飲むと、昼間のお返しと言わんばかりにお酒に酔ったような素振りでリリーに絡む。


「ういっ……リリー、あなたの作ったお酒は一番よ」

「そ、それはどうも……あの……ミントさん?」

「……リリーは魔王様にクイズを出して絡んでいたけど……魔王様の事、もしかして好きになったの?」

「いや、私はただ単に揶揄っただけよ。反応を見るのが面白くてつい……」

「あらあらあら?だめよリリー、そうやって反応を楽しんでいる時点で魔王様に自分の事をPRしているという事は、つまりは魔王様に好きになってほしいって現れじゃないかしら?」

「ちょっと!そんなんじゃないって……」


さらにミントは酒の酔いが回ってきたのか、口調もどんどんと荒っぽくなっていく。

勿論、物を投げつけたりするようなことはしなかったが、ミントはありのままリリーに絡んだ。


「私の目に狂いはないわよぉ!だってリリーがあんなに積極的に絡むなんて滅多にないじゃない!」

「ホント、ミントってお酒が絡むとグイグイと責めた質問をしてくるわね」

「だって……貴方が幸せそうに喋るのを見たら、親友として嬉しいのよ。お母さんが亡くなってからリリーは倉庫にずっと引きこもっていたもの……」

「あー……うん、ごめんね。心配かけていたみたいで」

「いいのよ……それでも、今日のリリーの様子を見て安心したのよ。今の魔王様だったらリリーも大丈夫だろうってね……」

「……ありがとうミント、でももうお酒は控えたほうが……」

「大丈夫!まだ私はそこまで酔っていないわよ。もう一杯お酒頂戴!」

「まったく……程々にしておいてよね」


リリーとミントは夜遅くまで酒を飲みながら過ごす。

普段以上に絡んでくるミント。

そんな親友の行動がリリーからしてみれば嬉しかった。

そして、魔王と出会えたことにも感謝していた。


(ありがとう、ミント……魔王様……)


リリーは笑顔を浮かべながら、アルコール度数の高いレモン酒をミントに負けじと飲んだのであった。

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