スライム農園3
ミントさんに案内されたのは、監視塔であった。
「浄化 A-6F」と微かに読み取れる文明崩壊前の塗装が施された監視塔だったと思われる場所を、木の板で補強された階段を登っている。
所々に銃痕があったり、血痕らしき汚れが垣間見れるので、恐らくこの場所で内部抗争があった際に戦闘が行われたのだろう。
ステータス画面で確認した際にも、この施設は最終戦争直後は生存者がいたらしいが、内部での紛争が原因で生存者コロニーが崩壊して廃墟になったという説明書きがあったからね。
「元々内部は階段が崩れていた状態でしたので、塔が崩れないように内側は全て木で補強してあります。階段も木で出来ているのはその為です」
「なるほど、それで木製の階段にしたというわけですね」
「流石に人類文明が作っていた階段は流石に作れませんが、中途半端に作って壊れないようにしっかりとした木を使って作られているのでご安心ください!」
木製の階段で補強された監視塔は、今では農園を上から見上げて作物に異変がないか調べたり、遠くからやってくる原生動物やロボットの襲撃に備えて大型のクロスボウなどを構えている防衛隊の戦闘系魔族たちが見張りをしている。
監視塔としての役割を、文明が滅びた後も担っているのだ。
「さっ、到着しましたよ……こちらがここから農園区画を一望できます」
「おっ……すごいな……ここがこの再興郷の地上部分で一番高い場所ですか?」
「そうです。この塔が一番高い場所です。見晴らしも良いので、どんな農作物を育てているのか一目で分かると思います」
農園が区画整理されて砂利を挟んで育てられており、奥の方にはこの施設の倉庫だった場所まで、それぞれ小麦や野菜などが等間隔を挟んでスライムたちによって手入れがされていた。
一例に並んでゆっくりと進むと、進むたびに農作物がグングン生い茂るように実る。
そして収穫期を迎えた農作物に関しては、スライム達が作物を引っこ抜いてリアカーなどに詰め込んでいる。
規則正しく、それこそ以前インターネットの動画配信サイトで視聴したことのあるアメリカの大規模農園の収穫風景みたいに、機械化されて動いているような光景だ。
彼女たちは自分達の与えられた仕事を淡々とこなしている上に、作物を一気に成長させる身体の特性を生かしている。
おまけに、作物の栽培と育成、収穫というサイクルを日常的に行っているので、彼女たちがいなければ、食糧の生産もままならない。
いなくなったら、きっと生産効率なども大幅に弱体化するだろう。
こうして見ると、スライムといっても決して弱くはない。
むしろ食糧事情を握っているだけあって、物凄く強い魔族だと思い知らされる。
「ここは再興郷の食糧を担っている農園となっています。それぞれ穀物を育てている区画と、野菜を育てる区画、動物の餌として牧草を育てている区画の三つに別れています」
「それぞれの区画の間を砂利で舗装して正方形の形に区切っているのも……理由があるのかな?」
「はい、あまり密接にして育てていると作物が病気になったり、枯れてしまうことがあるのですよ。なので一定間隔で離れて作るようにしているのです」
「作物の疫病などを防ぐためですね」
「その通りです。先代魔王様がご助言と助力をしてくださったお陰でここまで農園を広げることができました」
どうやら、作物の育成を早めるチートまがいの農法を使っても、連作障害やベト病といった病気が発生してしまう事があるらしい。
砂利を挟んで育てているのも、そうした病気が発生した際に一気に他の農作物に病気などが蔓延しないようにするための処置らしい。
こうして一望できる場所から見てみると、綺麗に整備が整えられていることが分かる。
スライムが作物の上を通る度に、一回り大きく成長する光景は本当に圧巻だ。
この農法を生み出した初代魔王もすごいが、何よりも魔族たちの食料を豊富に提供できるという利点を生み出しているのがスゴイ。
ミントさんにこの農園で収穫できる食料の量はどのくらいあるのか尋ねた。
「おおよそでいいのだが、この農園では一日でどのくらいの食料を確保することが出来るんだ?」
「そうですね……おおよそですが、陸稲と麦、ソバが合わせて8トン、野菜がすべて合わせて4トン、餌用の牧草で2トンとなっております」
「合計で毎日14トンもの食料を確保しているのか……すごい量だな」
「これにウシやトリの肉やタマゴを含めると、数としては16トン近くになりますね。それでも食糧は大量に消費されますので、毎日備蓄分として残るのは100キロ前後ですよ」
スライム農園はそれぞれ区画ごとに穀物と野菜、食肉用として飼育している動物の餌用として育てている牧草を中心に育てている。
主要穀物である小麦、陸稲、ソバ……野菜はキュウリやナス、トウモロコシやトマトといった彩りする野菜を中心に育てており、作付け面積からして本来であれば全部合わせても一年を通じて500kg程度の相当数しか採れないのを、スライムによって再興郷数千人の胃袋を支える大農園として機能している。
こうして当事者から声を聞いて視察をするのは優位意義な事だと認識した。
そしてミントさんはもう一つ農園に関する場所を案内してくれたのであった。




