魔王襲撃4
「おっと、そこまでだ。ちょっと待とうか……」
少々大げさな感じに両手を広げて近寄っていくと、エルフも獣人達も一斉に俺のほうを見ている。
魔王が直々にやってきたことで少々面を食らっている状況ともいえる。
なぜここに来たんだという感じに見ているが、俺の両脇にいるシルヴィアさんとノアを見て、双方は言い争いをするのをやめた。
「「魔王様……?!」」
「うん、まずは二人とも落ち着こうか……互いに口論が加速してしまうと喧嘩になってしまうからね。一先ず落ち着こう。それに、これから皆にやってもらいたいことがあるから、協力して手伝ってほしいんだ」
「協力……ですか?」
「一体なにをするつもりです?」
「支援系魔族と戦闘系魔族……双方の力が必要だからね。まず、この破壊されたロボットを一か所にまとめてほしいんだ」
「ロボットを……?」
「一か所に集める……?」
「……ほら!魔王様のご命令だよ!グズグズせずに集めな!」
「皆さん、魔王様が命令を出しております。指示に従って行動してください」
まず喧嘩を止めさせるために、俺は支援系魔族と戦闘系魔族の双方に先程の戦闘で破壊したロボットの残骸を一か所に集めるように命じた。
一か所に集める理由についてまだ説明はしていないが、シルヴィアさんとノアがそれぞれの種族に従うように言うと、彼らは命令に従ってくれた。
破壊されたロボットを一か所にまとめる作業は5分足らずで完了した。
ガルムによって破壊されたロボットは、胴体部分が両断されていたり、ロボット内部に搭載されているバッテリー部分に強い衝撃が走った影響で、炎を噴き上げて炎上して内部の器材がボロボロに黒焦げになっていたりと使えそうな部品すら殆どない状態であった。
「これはすごいな……一刀両断した跡がくっきりと残っているよ……バッテリー部分にも深く突き刺さる程の衝撃ってこうして見るとすごいな……」
「ガルム様の剣術もそうだけど、あの方の大剣はドワーフの剣職人が特注で作った代物でね。鉄の層を何十にも重ねて破壊力を増した作りで、私たちでも大剣は重すぎて容易に扱える代物じゃないんだ。それに、先代魔王様から剣術を増強させる永続魔法を付与されているから、あの人だけにしか扱えない特別な剣なのさ!」
「特別な大剣か……」
きっと、先代魔王はガルムの事を信頼していたのだろう。
攻撃力を増大させている魔法を付与していると言っていたが、魔法の加護を付け加えたとしてもかなりの力を持っているのだろう。
後で剣について色々聞いてみるのもいいかもしれないな。
「魔王様!ロボットの泥水を抜く作業が終わりました!」
「おお、どんな感じになっている?」
「内部が壊れているからもう動くことは無いですよ、近づいても大丈夫です」
その一方で、水魔法などで水没させた個体に関しては外見上はほぼ無傷で入手することができた。
内部が浸水した影響で、ロボットを持ち上げた時に排気口から水や泥がドバドバと流れ落ちたけど、外見上は使えそうな部品もいくつか見受けられているのだ。
流石に内部のCPUメモリーや電気系統周りは水や泥が入った関係で使えないが、それでももしかしたら屑鉄として鋳物にするよりは使い道の幅が広がるかもしれないと思った。
(あとは……ステータス画面をチェックしながら部品の確認をすることが出来れば……おっ?!)
ジッとロボットを凝視していると、ステータス画面が目の前に表示され、ロボットの使用可能部品について色々と記載がなされていた。
さすがステータス画面だ。
頼りになる。
―< 六十五式自動機械化支援装置【牛歩】 Lv.15 >―|×|
基礎情報
体力0/50 気力0/0 燃料0/60 MP0/0
・主要回路の破損につき、機能停止
▽状態▽
・動力源機能……浸水の為、修理不可
・主要回路……越前製五十九式電子回路、浸水により回路破損、修復不可
・視認レンズ……破損の為、修理不可
・バッテリー……浸水による破損の為、修理不可
・チタン合金防護フィルター……損傷軽微、修復可能
・非殺傷型電流放出装置……装置水没の為、修理不可
・放水機……放水装置の接合部分のみ修復可能
・催涙弾発射装置……分解し整備すれば修復可能
・拡声器……回路水没により修復不可
―――――<閉じる>―――――
やはり、まだまだ使える部品はあった。
チタン合金保護フィルターと、放水機、催涙弾発射装置はまだ使えるらしい。
ジッとロボットとステータス画面を確認しながら、部品の位置などを確認してノアとシルヴィアさんに指示を出す。
「まだ、このロボットに使える部品が残っている。このロボットを分解して使える部品を取り出そう」
「えっ、屑鉄として溶かすんじゃないのかい?!」
「まだまだ使えるぞコレは……防護フィルターに関しては防具として使えるかもしれない……」
「あの……本当に使えるのですか?」
「ええ、そのままでも使える部品もあります。一先ず、ドワーフの人を呼んでもらえますかね?もしくは鍛冶が出来る人なら、ここから使える部品を取り出すのも簡単だと思います。試しにやってみましょう」
やるべきことはやろう。
対立ではなく協力していく姿勢を構築していくことが大事だ。
こうして、俺が率先する形で軍用ロボットの分解作業を魔族たちで行うことになったのであった。




