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魔王の仕事3

「何をすればいいんだ?」

「まずやるべき事は、軍用ロボットの前哨基地ないし、哨戒ルートの調査をお願いしたい。彼らは幾つかまとまって行動しているのは話で聞いているからね……襲撃の際はどのくらいの数でくるんだ?」

「だいたい4体前後だ。多い時でも6体だ」

「一度に突っ込んでこないことを考えれば……前哨基地から出している可能性が高い。本気で再興郷を潰すのであれば、もっと強力な兵器や装備で整えた兵団を使ってくるはずだ」


ガルムに任せる仕事は、早い話が偵察任務であった。

軍用ロボットがやってくるのであれば前哨基地があるはずだ。

本拠地は恐らく軍事施設であることを考慮すれば都市部ではなく、郊外にある可能性が高い。

大規模な軍事施設を都市のど真ん中に置いてある場合があったとしても、それは軍事作戦を指揮する司令部施設であり、戦車や戦闘機など実戦的な兵器を配備している軍事基地の殆どは都市郊外に置かれている事が多い。


「都市郊外にあるとすれば、この辺りではなくもっと遠くの場所から軍用ロボットたちはやってくるはずだ。遠距離を移動する手段は徒歩しかない。文明崩壊前であればトラックや鉄道を使って移動が出来たとは思うけどね……」

「なぁ魔王様、その「トラック」や「鉄道」ってなんだ?」

「……ああ、すまない。文明崩壊前にあった移動手段の事だよ。どっちも大容量の荷物などを運ぶ手段として活用されていたんだ」

「ふぅん……という事は、文明崩壊前の世界を知っているのか?」

「この世界ではないけど、類似した世界ではそうした乗り物が沢山道路を行き来していたからね。それなりには詳しいんだ」


トラックと鉄道についての簡単な説明を行ってから、補給の関係上遠距離での移動は難しいだろうという結論に至った。


「まず、移動手段としてさっき述べたトラックや鉄道は使えないね……道路が破壊されている上に、瓦礫などが道を塞いでいる場所も多い。地面だって陥没したりしているからね」

「俺たちにとってみればそのぐらいの段差や陥没していても大したことはないけどな……それがあるだけでトラックや鉄道は使えなくなるのか?」

「うん、トラックは頑張って大きな車輪を用意すればまだ走れるとは思うけど、それには大規模な改造が必要だし、鉄道に至ってはレールと呼ばれている敷設された道でしか走る事が出来ないんだ」

「……つまり、文明崩壊前に作られていた移動手段が無くなったって事だな?」

「そうだ。文明崩壊後だとこうしたトラックや鉄道が走れる場所も限られているだろうし、車両を動かす燃料も無いはずだ。あったとしても、軍隊丸ごと補給可能な大規模な補給施設は無いはずだ。燃費の事を考えて、偵察用のロボットで哨戒も兼ねて襲撃をしていると思うんだ」


軍用ロボットの動力源はバッテリー内蔵式のモデルだが、偵察用の軍用ロボットであれば動き回るのではなく、潜入したり地理的観測情報を持ち帰ることを主軸に作られている。

無人偵察機や有人操作式のドローンも、攻撃ではなく情報収集を主に行っている。

敵地に潜入する有名なステルスアクションゲームでも、主人公の任務はあくまでも潜入であって戦闘ではない。


この世界は、俺のいた時代よりも進んだ技術力・科学力を有していたはずだから、バッテリーの持ち時間なども向上しているはずだ。

それでも、長時間動き回るのには向いていないだろうし、戦闘用の重装甲・重武装した大型ロボットであれば、偵察用よりも莫大なエネルギーを使うのは目に見えている。


もし軍用ロボットたちにAIが搭載されていれば、ウロチョロと動き回って燃料切れという事態は避ける。

基地に戻って帰還することを主軸にしているのであれば、中継局……補給設備の整った場所を確保してから行動するはず。

ロボット内部に搭載されている人工知能が高いのであれば、そうした全面衝突ではなく威力偵察も兼ねて相手の出方を伺う戦術を取るはず。

年数経過によってバグが生じたとか、不良品を掴まれたのでなければ、そうした人間らしい事をするはずだ。


「偵察といっても長時間動き回るのはロボットいえど酷使することになるだろうし、本拠地の前にロボットたちが補給を行う場所があるはずだ……そこが彼らの前哨基地のはずさ」

「ロボットは食べ物は食べないが、電気を食べると言っていたからな……軍用も同じか?」

「恐らく電気だと思う。民間用のロボットが電力で動くのであれば、偵察用も電力で稼働するものを使っているはずだ。電力を供給する補給所があれば、そこで充電をして行動するはず」

「つまり……俺はその場所を探って、あの軍用ロボットたちの経路を調べるというわけか」

「あくまでも調査が出来る範囲内で頼む。無理に強行偵察をして犠牲が出るような事態は避けたい。どの方向からやってきたとか、一日のうちで活動している時間とかを観測できる範囲で調べてほしい」

「見ているだけでいいのか?」

「安全な場所からしっかりと軍用ロボットたちの動きを見張っておいてほしい。都市部の何処かに、そうした補給を行っている……ロボットたちの巣みたいな場所があるはずだ。本拠地を攻略するなら、軍用ロボットたちの事を調べておかないとね」

「成程……魔王様、貴方と話せてよかったよ。勉強になった」

「偵察に関してはガルムが一番詳しいはずだ。やり方に関しては君に任せるけど、くれぐれも無理な状況であれば撤退して欲しい。偵察を行う魔族に対しても無茶だけはするなと言っておいてほしい」

「分かった……では、準備に取り掛かる」


ガルムはやる気になったようで、来た時とは打って変わって自身に満ちた表情で部屋から退出していった。

頭ごなしに否定するのではなく、長所を褒めてから欠点を補助するような仕組みにしたほうがやりやすいというわけだ。

対立度を確認したら先ほどまでの80から35まで一気に減少していた。

それでもまだ完全には信用していないらしい。


とはいえ、一先ずはクーデターの危機も去っただろう。

机の上に置かれていたお茶に手を伸ばそうとした瞬間、けたたましい警報音が周囲に鳴り響いた。

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