2-1.中間テストの謎を解け! その1
【地域探索プログラム】が終わったら、スグに、中間テスト週間。 なんて、最悪のスケジュールなんだ・・・。
「輝彦は、いいよな。 勉強しなくても、いい点数を 取れるんだから。」
「おまえ、バカっ。 勉強してないのは、利通だよ。 こっちは、真面目に授業に出て、真剣に学んでるんだよ。 努力してないのは、そっちだ。」
頭のいいやつには、そうでないやつの 気持ちは分からない。授業中、真面目に聞いて、1回だけ教科書を読んだら、いい点数を取れるのが、当たり前だと 思ってやがる。
こっちは、聞いても分かんないから、サボるんだよ。
まぁ、テスト週間に入ると、授業は、午前中だけ。 午後の授業が無いと楽だ。 まぁ、そうして、来週から、恐怖の中間試験が 始まるというわけだけれども。
「あっ、そういえば、利通に貰った【透明和紙】が、どっかいっちゃって、無くなったんだ。 もう1枚くれよ。」
「ん? あぁ。 じゃぁ、これ 持っていって いいよ。」
「センキュッ」
ボクは、自分のレポートに貼り付けてあった【透明和紙】を剥がして、輝彦に渡した。 家に帰れば、まだ、何十枚も【透明和紙】があるし、こっちも、輝彦の作った普通の和紙を10枚くらい貰っているので、おあいこだ。
【地域探索プログラム】は、レポートを学校に提出しなければ、履修済みとならない。 この提出するレポートの出来と、担当した 地域の職人さんなどによる 採点によって、ボクらの成績が決まる。 まぁ、レポートがダメダメであっても、小川さんなら、ボクと輝彦の成績は、いい点数をつけてくれるだろう。
[乃木坂の事件簿] 【 2-1.中間テスト週間 】
「でも、去年までの人たちは、いいよな。 地理が無いんだもん。」
「ん? 地理総合なんて、覚えたら、いいだけだろ?」
去年まで選択科目だった地理が、総合地理という名前になって、今年から、必修科目になったのだ。
「地図や 地理情報システムと 現代世界の理解 なんて言われても、理解できるかっ。 都市の名前が長すぎるんだよ。 世界中の全国家と、その都市の名前は、漢字2文字まで。フリガナは、平仮名4文字までにする 法律を作りたい。」
「アホか、お前。 まぁ確かに、あの小テストは、ひどかったけどな。 『グレートブリテン及び北アイルランド連合王国』を 1文字間違えたら、アウトって、ただのクイズでしか ないから。」
「だろ? あんなの正解できるって、頭がおかしいやつ だけだな。」
「悪かったな。 頭がおかしくて。 さすがに、あれは、地理のババセンの遊びだろ。 中間テストでは、あんな無茶な問題は、出ねぇと思う。」
馬場先生・・・ 通称ババセンの、軽い遊びだと信じたい。 あんなのを また出されたら、赤点まで あり得る。
あっ、その小テストでも、輝彦は、100点満点中、150点を取っていた。 うん、頭のいい奴は、嫌いだ。
「利通は、バカだからねぇ。」
ボクの肩に乗った自称、桜の妖精が、頭をつつきながら、からかってくる。 うるさいっ。 じゃぁ、泰葉は、分かるのかよ。
「うーん。 私のころと、国の名前とか違うし。 ソ連とか、ユーゴスラヴィアとか、無いんでしょ? チェコスロバキアも、なんか 分裂してるみたいだし。」
いや、ほんと、お前、何歳なんだよ。 ソ連って、いつの時代の国だ?
「利通? なに、ボーっとしてるんだ?」
「あっ、いや、テストのこと考えたら、憂鬱だなって・・・。」
「適当にしとけば イケるって。」
だから、それは、お前だけだよっ。 しかし、泰葉と話していると、周りから おかしな目で 見られてしまう。
「大丈夫よ。もともと おかしいから。」
うっさいわっ。
「まぁ、とりあえず、暗記科目は、一夜漬けで行くから、輝彦、数学を教えろよっ。 あれ、先生が、何 言ってるか、まったく わかんねぇんだ。」
「教えるって言ってもなぁ・・・。 利通さ、あれも、公式と解き方を覚える 暗記科目だぞ。」
「は? 数学は、ひらめきだろっ。」
「ふっ、利通が、なんで出来ないか分かったわ。 あれは、暗記科目なんだよ。 おまえ、頭の中で、問題と公式が 結びついてないだろ。」
「いや、公式は、覚えてる・・・ ような気がする。」
「覚えてるだけじゃ、ダメなんだよ。 えーと・・・俺のノートを貸してやる。 教科書の例題や章末問題は、全部、解き方を書いてるから、暗記するまで解けっ。 例題を暗記すれば、その解き方を応用して、テストの問題も解けるから。」
「いや、もっと簡単な方法を・・・。」
「ねぇよっ。」
こうして、テスト週間に入った ボクの午後は、輝彦のノートを 丸写しにするところから 始まった。
「うわぁ、めんどくせぇ。 めっちゃキレイじゃん。 大体、頭のいい奴のノートって、汚いっていうのが、一般的なんじゃねぇの?」
輝彦のノートを広げると、授業の内容が、美しく整然と 書き込まれている。
「ホント・・・ きれいね。 利通のノートもキレイだけど・・・。」
あぁ、さっき 文房具店で10冊258円で、買ってきたところ だからな。
ちなみに、泰葉の500円札を使おうと 文具店のおじいちゃんに差し出したところ、受け取りを拒否された。 500円札・・・ 使えねぇ。
パラパラとめくると、教科書に並ぶ問題の順番に、ノートが書かれ、その上、先生が黒板に書いたことが、そのままを、きっちり書き込まれている。 めっちゃ、分かりやすい。
これ、このノートがあったら、授業いらねぇんじゃね?
とりあえず、最初は、テストの範囲になる輝彦のノートを1回、書き写してしまう。 そこからは、輝彦に言われた通り。 最初から問題を解いていく。 と言っても、輝彦の答えを見ながらだけど。
大丈夫か?これ・・・。 テストになっても、あいつのノートが 無かったら、解けねぇぞ。
そうこうしながらも、言われた通り 問題を解き続ける。 あぁ、なんとなく パターンが分かって来た。 そうか、暗記しろって言うのは、こういうことか・・・。 ん?・・・ てか、あいつ、授業受けたら、こんなの分かるっ て言ってなかったか? あぁ、やっぱ、頭の作りが違うわっ。
こうして1週間・・・ 問題を解き続けると、ぜんぜん意味が分からなかった記号の羅列の意味が、ちょっとは分かって来た。
うん。教科書と全く一緒の問題が、テストに出るなら 解けるっ! ・・・たぶんね。
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