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1-5.透明和紙の謎を解け! その4

 工房のカギは・・・ 閉まっていた。 そりゃ、そうだ。 鍵が開いている方が怖い。 中に人がいる可能性が あるんだから。


「んー。 私が 中に入って 開けてあげてもいいんだけれども、それより、そこのお地蔵さんあるでしょ?」


 泰葉が指さした先には、古いお地蔵様。


「それを、持ち上げてみて。」


 言われた通り、お地蔵様を持ち上げる。固定されて動きそうに見えなかったそれは、思ったより簡単に動いた。 これなら、子供でも動かせそうだ。 そして、その下には、小さな空洞。


「指を突っ込んだら、小銭入れみたいなのが 入ってない?」


 なんか 良く分からない虫とかが、居そうだから、指を突っ込むのが ためらわれたけれども、じぃぃっと 泰葉が見つめているから、仕方ない。


 思い切って、指を突っ込む。 あっ、巾着の 小さな袋が 入っていた。 古そうだけれども、意外と キレイだな。


「うんうん。 それ、開けてみて。」


 入っていたのは、小銭と、折りたたんだお札。 っていうか、お札は全部、大昔の旧札。 500円札って いつの時代だよっ。 これ、岩倉具視って、誰だ?


 そう思ったけれども、2000円札よりは、マシか。 あのデザインは 確か、源氏物語の「鈴虫の巻」。 沖縄で行われた国際会議で、ロシアの プーチンって人に、「日本は、近親相姦と、不倫の物語を 自国の通貨のデザインに する国か・・・。」って、さんざん バカにされていたのを 思い出した。


「まぁ、そのお金は、利通にあげる。 鍵も、自由に使っていいわよ。 その代わりに、巾着は、大切にしまっておいてね。」


 おいっ、お前、なんで こんなの知ってるんだ?


「だから、おばあちゃんの工房って、言わなかったっけ?」


 え? その話、マジだったの?




[乃木坂の事件簿]  【 1-5.下準備 】




 本当か、嘘か分からないけれども、ここは、泰葉のおばあちゃんの工房らしい。 まぁ、古い鍵の隠し場所なんか、知ってるんだから、関係者なのは、間違いないだろう。


 ボクが、窓を開け放つと、泰葉が、手を振った。 ひゅるりと、風が 舞い起こり、桜の花びらが1枚 舞い込んできた。 風で、作業台の上などに積み重なっていた年代物のホコリは、飛ばさる。 そうして、ひゅんっと、窓の外へと飛び去ってしまった。


「まずは、お掃除からだね。 雑巾 持って来てるでしょ。 きれいに拭いてね。」


 大きな鍋、作業台・・・ ホコリが全部 外に飛んで行ったからといって、キレイになった わけではない。 全てを 拭き終わった時は、雑巾10枚が 全て真っ黒になっていた。


「それは、そっちの バケツに浸けておけば、いいから。」


 雑巾を バケツに放り込むと、中性洗剤と、ハイターを ちょいちょいっと 入れて、放置する。


「ほら、もう10時だよ。 午後は、向こうの工房で 作業があるんだから、急がないとっ。」


 言われなくても、分かっている。 授業は、1回くらいサボっても、どうにかなるけれども、『地域探索プログラム』をサボると、その単位を得るために、もう一度、他の 何かに参加する必要がある。 そう考えると、最低でも、12時には、準備を 完了しなければ・・・。


 水を入れて、火にかけていた ひとつの大鍋に、ビニール袋に入れた「スルアフケトプ」を放り込む。 もうひとつの大鍋には、「リュディアギュゲス草」。 フタをして沸騰させる。 茹でているわけではなく、軽く熱をかけるイメージだ。


 その間に、きれいに洗った「トロロノリナト」の根を、すりつぶしていく。 すり潰した根は、瓶に入れて口を閉じて密閉。 あとは、氷の入った アルミ製の袋に 放り込んでおく。


「うんうん。 温度が高いと、カスガトゥス酸が、分解しちゃうから。 そうなると、和紙作りの『ねり』として 働かなくなるもんね。」


 泰葉って、思ってたより・・・ っていうか、見た目より、頭いい。


 すりつぶし終えたら、火にかけていた 2つの植物を 湯から上げて取り出して その薄皮をはぐ。 沸騰させた湯のおかげで、皮が スルスル剥がれるようになっている。 ちょっと、熱いけれども、それは我慢。 気合で乗り切る。 ってか、マジ熱っ。


 水酸化ナトリウムを溶液にして、繊維の不要な部分を除いていく。 ゴム手を して、丁寧に処理したら、水洗い。 2つの繊維は、だんだんと、透明になっていった。 処理が終わったら、もう一度、繊維を沸騰した湯に入れて、加熱。


 よしっ、出来上がりだ。


 こうして、材料となる「ねり」の元、それから、「スルアフケトプ」と「リュディアギュゲス草」の透明繊維が用意できた時、壁に備え付けられていた 大きなノッポの古時計の針は、11時30分を過ぎた所を 指していた。


 ってか、この時計 なんで動いてるんだ?


「ほら、下のコンセントに刺さってるでしょ? 電気は、来てるんだって。」


 いや、おかしいだろっ。 時間が 合ってるのも。


「昨日、私が合わせておいたもん。 だから、正確だよ。」


 泰葉は、古時計の横の柱を 懐かしむように、手で撫でる。 覗き込むと、水平方向に、小さな傷があった。 その横には、「泰葉」と、名前が 書いてある。


「私の 背の高さだね。」


 ちょっ、マジで、お前、頭おかしいぞっ。 柱に、こんなラクガキを書くなよっ。 後でバレたら、ボクが、怒られるだろっ。


「ううん。 大丈夫。 これ書いてくれたの おばあちゃんだから。 ほら、私の背の高さ、このキズを超えてるでしょ? これは、小さい頃、測ったやつだよ。」


 そう言われてみれば、キズは、泰葉の胸の位置くらいにある。 ホントだったんだ・・・ ここが、泰葉のおばあちゃんの工房って いう話。


 泰葉は、しばらくの間、何も言わずに、柱につけられていた キズを撫でていた。 邪魔をしたくなかったので、用意した透明繊維を、大きめの容器に詰めたら、リュックに放り込む。


「あっ、それは、まだ熱を持ってるから、リュックに詰めるのは、ギリギリにした方がいいよ。 容器もフタをしたら、中の空気が冷えるから、内圧が下がって、フタが空きにくくなる。フタも、あけておこうね。」


 ボクが、片付けを始めたのを見つけた、泰葉が、慌てた感じで、言ってくる。 それは、先に言っておけよ・・・。 せっかく詰めた容器を取り出して、テーブルの上に置いて、ふたを開ける。時間がないので、容器ごと 氷水につけて 冷ますことにした。


 時刻は、12時手前。 なんとか用意完了だ。


 時間がない。 朝一で 買ったコンビニ弁当を 開けると、急いで食べる。 電気が通ってるのに、レンジが無いのは キツイ。 温めたかったな。


「うーん。 レンジも、コンビニで、採ってきた方が、良かったね。」


 それは、盗っちゃダメだろっ。 ホント「妖精」って書いて、「ドロボウ」って、読んだほうがよさそうだ。


 まぁ、そうこうしながらも、、午前中の授業を全部サボって行った、下準備は、終了したのであった。

500円札を見たことがある人は、高評価を押して次の話へ⇒

☆☆☆☆☆ → ★★★★★


このペースで書くのは、とんでもなくキツい・・・でも、ペースを落とすと、期間内に完結しない気がする。そもそも、私は、次話を、思い付くんだろうか・・・。そんなこんなで次話に続くっ。

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