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1-3.透明和紙の謎を解け! 2

 北海道出身の小川武蔵さんは、細川和紙工房の若手和紙職人である。 っていうか、1人しかいないんだけれどもね。 職人さん。


 ウチの高校の 春の課題『地域探索プログラム』。 ボクが、参加したのは、和紙作り。 そう、今まさに、小川さんが、実演しながら、その作り方を 教えてくれている。


 まずは、刈り取られて、まとめられている『楮-コウゾ』を蒸す。 そして、蒸した楮の黒皮を 剥皮する。


 残ったのは、白皮。 これに 灰汁やソーダ灰などを混ぜ、皮をやわらかくするために、さらに煮込む。 そうして、出来たやわやわの皮から、不純物を、手で丁寧に取り除く。


 煮えムラや、処理が 不十分だった場合、繊維が うまくほどけなくなるため、紙を作る時に、そのまま残って失敗の原因になる。 上手に、丁寧に 処理しなければ ならない。


 皮を叩く「たたき」も、昔は、棒でドンドンと叩いていたらしいが、今の時代は、機械の仕事だ。 打解機を使って 繊維を叩くことで、さっきより 細かくなるように、繊維を ほぐしていく。


 材料の準備が終わったら、いよいよ「紙漉き-カミスキ」の作業だ。




[乃木坂の事件簿]  【 1-3.和紙を作ろう 】




 一緒に混ぜ込む『トロロアオイ』の原産地は、中国。 これも、昔は、この地域で栽培されていたが、今は、輸入物だ。 この植物の根は「ねり」として使われる。 「ねり」は、美しい紙作るために、『楮-コウゾ』の繊維を 水中に 1本1本 むらなく分散させ、浮かべるために 必要となる。


 紙の材料となる『楮-コウゾ』のような 繊維の長い植物は、ただ単に 水の中に入れてあげても、きれいに 分散されることは、まず無い。 グルグル撹拌しても、水中で、すぐに沈んでしまうのだ。


 これを解決するのが、「ねり」の役割である。


 『トロロアオイ』に含まれる ガラクツロン酸は、単糖である ガラクトースの持つ酸素官能基が、カルボキシ基に 酸化されたもので、いわゆる糖酸だ。 この成分を多く含むため、トロロアオイの、根を潰して水に浸けると、ネバネバ溶液が、水の中に混ざり込む。


 これが、「ねり」である。


 先程、説明したように、ガラクツロン酸は、紙の材料であるセルロースと 同じ糖の仲間であるから、『楮-コウゾ』の繊維と、とても相性が良い。 楮繊維の一本一本まで、このネバネバが包み込んでくれることで、繊維同士の 絡み合いを防ぐとともに、粘度の高さで、重い繊維が 沈み込むことを 防いでくれる役割がある。


 春になって、少し気温が上がってきているため、水の温度も 冬より高い。 ガラクツロン酸のネバネバだが、水温が高いほど、ネバネバタイムが 失われるまでの時間が短くなるため、適切なタイミングで、補給する必要がある。 なので、紙漉きを行っている途中にも、 水槽の中には、時々 この「ねり」を 継ぎ足して かき混ぜなければならない。


 紙漉きは、たぶん みんなが見たことがある通りのものだ。 簀桁で、すくって 縦横にゆらす。 あとは、一枚一枚を丁寧に、素早く漉いていく。


 厚さが均等になっているか。 破れや傷が無いか。 こういったことを 気を付けながら、出来た紙を重ねる。 これを、天秤式の圧搾機に その紙を載せるように置いていく。 圧搾機で、圧力をかけることによって、紙から、ゆっくり 水を絞り出す。 脱水工程だ。


 こうして、脱水が終わった 少し湿った紙を 1枚ずつはぎとって、鉄板に張る。 乾燥は、天日で行う場合もあるのだが、今回は、鉄板を温めて、時間短縮。 乾燥させると、ペラリとキレイに完成した和紙がはがれることになる。


 できあがった紙を、きめられた寸法にあわせて切りとったら、お仕事完了。 和紙の出来上がりである。


「という感じです。 明日は、今見せた段取りで、同じように、和紙を 皆さんに作ってもらいます。」


 うんうん。 ちゃんとノートに、メモった・・・ 一緒にプログラムに参加している輝彦が・・・。


 帰りに コンビニで、コピーさせて もらおう。


「まぁ、私が居れば、手順を間違えることなんて ないけれどもね。 完璧に 覚えているから。」


 いや、お前は、プカプカと 肩の所で浮いていただけだし、それに、途中で、どっかに 飛んでったじゃないかっ。


 そう、泰葉は、メモを取ってない ボクより不真面目。 プカプカ浮いて、工房にある 色々な道具を触って、動かしたりしていた。 そのたびに、輝彦が 声をかけてくるので、ごまかすのが 大変だったんだからな。


「あのね。 私は、おばあちゃんから、直接教わっているからね。 ここの細川和紙工房って名前だって、おばあちゃんの時代の名前を そのまま使ってるんだよ。」


 あぁ、それで、小川さんの工房なのに、細川和紙工房だったのか。 「細川なのか、小川なのか、どっちだよ。」って 思ってたんだよな。


 今日の作業は、小川さんの見せたお手本・・・ 和紙作りの実演を みるだけで終了。


 帰り道、輝彦に、コンビニコーヒー と からあげを おごる代わりに、ノートを コピーさせてもらう。 細かくて小さく整った字・・・ こいつ、潔癖症で、神経質なんだよな。 字に、性格が出てるわ。


「大雑把で、デリカシーのない利通とは、真逆よね。 なんで、一緒に居るんだろ? 自分と逆だから、珍しいのかな?」


 うるさいっ。 お前だって、デリカシーなんか ないじゃねぇか。 泰葉が 横でブツブツ言うせいで1枚。 それから、勝手に泰葉が コピー機のスタートボタンを押したせいで1枚。 合計2枚の失敗コピーと、輝彦のノートのコピーが出来上がったら、ボクも、同じコーヒー と からあげを 手に帰路につく。


「バスの本数が ねぇのが、一番 きついよな。」


「まぁ、ド田舎だから 仕方ないだろ。」


 バスの最後尾の座席は、横向きの 長いサロンシートになっている。 他の乗客は、1人しかいない ガラガラのバス。 この座席を2人で占拠して、コーヒーを片手に、からあげと、割り勘で買ったポテチを、食べる。


 うーん。 マナ悪だが、他に客もいないし、文句を言われることは無いだろう。 あっこら、泰葉っ。 ポテチを持って 移動しようとするな。 そんなのが浮いてたら、おかしいだろっ。


 こうして、『地域探索プログラム』1日目は、終了。 明日は、いよいよ、実際に ボクが 和紙を作ることになる。

和紙でワシを折ったことがある人は、高評価を押して次の話へ⇒

☆☆☆☆☆ → ★★★★★


ツルではダメです。っていうか、話の内容が【美容師の娘】の物作りみたいになってきました。どっかで修正しないと大変なことになりそうです。

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