第732話 黒き大魔王(3) シルフィの先制攻撃
フィロスさんが現れた。
黒く染まったウェディングドレスと髪、まるで今の彼女の心境を物語っているようだ。そのフィロスさんの体を包む魔力がより色合いを増していく。陽炎のようにユラユラと彼女の周囲が揺らめき、時折バチバチと弾けるような音と禍々(まがまが)しい黒い光を放っていた小さな魔力のスパークのようなものの間隔が明らかに早まってきている。間断のある魔力の小さな暴発が今はもう常にバチバチとフィロスさんの周囲で音を立てる。
一番早く動いたのはシルフィさんだった。
「姉様、手加減は出来ません!ですが、傷つける事はいたしません。この場から退いていただきます。緑黄金の疾走魔法ッ!!魔力全開暴走ッ!!!」
シルフィさんが気合いの声と共に片腕を突き出す、何回か見た事がある風と光の精霊の力を借りて相手を吹き飛ばす魔法だ。その威力は凄まじく、相手を遠くに吹き飛ばす。たしか以前に見た時はフィロスさんが寝起きの僕の布団に忍び込んでいるのを見て怒ったシルフィさんがフィロスさんを世界を一周してくる距離を吹き飛ばした(第404話参照)。二度目も妖精界でフィロスさんを吹き飛ばしていたっけ…、あの時は精霊たちがより能力を発揮できる妖精界だったからフィロスさんは世界を何周かしてしまうくらいの距離を吹っ飛ばされていた(第654話参照)。
それをシルフィさんは今回は開幕でぶっ放したようだ、まさに一撃必殺。緑色を帯びた光の束が放たれフィロスさんに直撃する。ドーンという大きな音が響き、辺りにぶつかった光が降り注ぐ。
「ふう…」
魔法を放ったシルフィさんが小さく息を吐いた、緊張を少し問いたようだ。その時だった。
「ふふ…。今…、何かした…?」
「え?あ…、ああああっ!!?」
光が収まったそこには平然と立っているフィロスさんがいた。
次回。
『マニィとフェミの奇襲』
あの必殺技が炸裂!?
お楽しみに。