第725話 同棲?同居?
今話へのつながりのため、前話の文末を加筆しております。
「何があってからでは遅い。今日から私がゲンタさんと共に暮らします!」
シルフィさんがキッパリと言い切った。
「「「「ええええっ!!?」」」」
たちまち上がる驚きの声、それは僕もまた同様で…。しかし、そこにさらなる混乱が加わる。
ピカッ!!
「うわっ!?」
「まぶしっ!!」
ドゥウウウーーーンッ!!!
爆発音のようなものと共に現れた人がいる。
「ダ、ダメよー、ダメダメッ!そんな結婚もまだなのに一緒に暮らす…どっ、同棲なんてッ!」
「フィロス姉様…」
現れたのは魔法姫の二つ名を持つ凄腕冒険者のフィロスさん。なにやら慌てたような、切羽詰まったような表情で何やらシルフィさんに迫っている。
「こういう事もあって慌ててるのは分かるわよシルフィちゃん。だけど慎しみもちゃんと持って…ね?」
「は、はい、姉様」
「うんうん、分かってくれたみたいでお姉ちゃん嬉しいわぁ」
頷きながらにこやかにしているフィロスさん。
「で、姉様。本音は?」
「こっちは独り身だってのに歳下のシルフィちゃんが同棲なんて早い早いッ、激早よぉ。こうなればドサクサに紛れて私が護衛しながら新居に転がり込んで…グヘヘ…。ハッ!!?」
ギギギ…、錆びついた歯車みたいな音がしそうな様子でフィロスさんがシルフィさんの方に首を向ける。そこには目がまったく笑っていないシルフィさんが…。ポン…、そんなシルフィさんがフィロスさんの肩に手を置いた。
「姉様…」
「ち、違う!違うのよ、シルフィちゃん。や、やましい事なんて考えてないのよ!あわよくば…くらいはあるかもだけど…」
フィロスさん、何か企んでたのか…。そう思う僕をよそにフィロスさんはさらに言葉を続ける。
「でもね、考えてみてちょうだい!いくらシルフィちゃんが腕に覚えありと言えども一人では限界があるし、朝から晩まで寝ずに護衛なんてのも現実的ではないわ。それこそ体がもたないわよ」
「う…、確かに…」
痛いところを突かれたかシルフィさんの勢いが若干弱まる、そこにフィロスさんが切り込み始めた。
「だからね、ゲンタさんの安全の為には護衛を増やした方が良いと思うのよ。うんうんっ、絶対そう!ゲンタさんは稼いで羽振りも良い訳だし、命や財産以外に家に入り込もうとハニートラップがあるかも知れない」
「た、確かにゲンタさんに興味を持っている人は少なくない…」
シルフィさんが顎に手を当て考え始めた、フィロスさんは勝機と見たのかさらに熱を入れて説得にかかっていく。
「そうよ〜、絶対そう!だからここは護衛を一人や二人増やして…」
「ならばその護衛の一人や二人、身共がなろうではないか」
「「「えっ!?」」
横合いから声がかかった、振り向くと…。
「あ、あなたは!!メセアさん」
そこにはあらゆる植物の祖である世界樹の精霊にしてはじまりのエルフ、メセアさんの姿があった。
次回予告。
『集まれ!!108人』
お楽しみに。