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第712話 屋根も当然和風ですよ


 異世界に和風建築…、銀閣のような建物を建てたいと考えた僕はガントンさんに構造を伝えたところ快諾を得た。資材をどうするか、他に人を雇うのか、様々な事を相談した。そしてもうひとつ、家を建設するに当たって僕が是非やってもらいたいとガントンさんたちに相談していた事があった。


「先生!!出来ました!!」


 冒険者ギルドでの朝食販売を終えてマオンさんとくつろいでいるとガントンさんやゴントンさんの姪であるフォルジュが金髪のツインテールを揺らしながら駆け寄ってきた。身長が150センチくらいの彼女はさながら学校や塾で見るような女子中学生のようだ。その手にはツヤの無い黒色の塊が握られている。


「これは凄い!僕が作って欲しかったのはまさにこれだよ、たった一回の試作でいきなりかわらを作ってしまうなんて…。フォルジュ…、ありがとう」


「いえ、こちらこそ!このような新たな現在を知る事ができ申した。本来、庶民の家なれば屋根には木の板で貴族や豪商なれば石瓦いしがわらを用いるのが常道…。されど石瓦の材料になるアルドワーズ石(粘板石)はこのあたりでは産せぬ物…、手に入れるには手間も金もかかり申す…」


 フォルジュが作ってくれたのは日本家屋の屋根の材料によく見られる瓦だった。彼女は土台作りと建築をするガントンさんたちと別行動で瓦作りを担当していた。


 それというのも家を作るに当たって材料を確認していたら板瓦か石瓦を使うのが一般的と聞いた。調べてみたら板の方は妙に明るい色合いで銀閣の雰囲気とはちょっと違う、石瓦は確かに黒色だけど材料がとても手に入りにくい。そこで考えたのが日本の瓦、実際に焼いた事も手に取った事もなかったがフォルジュは作り方を伝えただけで何度かの試行錯誤をしただけで作ってみせた。


「それなりの住居を作るとなれば屋根材はなかなかに悩み所…。されどこれならば粘土を焼けば手に入り申す。粘土は手に入る場所が限られるとはいえアルドワーズ石よりは手に入りやすい…。他の地でも使う事ができましょう。それにこの重厚な黒い色…、同じくアルドワーズ石も黒色とはいえどひとつひとつ模様の入り方や風合いも違うわずかに白く霞が入ったような色味にござる、物によっては黒と呼ぶにはいささかちぐはぐな物もございますれば均一な物を揃えるのはなかなかに難しい…」


「ああ、それは瓦を焼く時の火加減が上手くいったからだね。フォルジュのおかげだよ」


「いやいやいや!それは火の番をしてくれたホムラ殿のおかげで…」


「それもあるかも知れないけど火を均一に通すには全ての瓦を形や厚さをムラなく作る必要があるでしょう?それをやってくれたのは間違いなくフォルジュなんだから…」


「先生…、恐縮です…」


「もっと、こう…やってやったぜ!…っていうくらいでも良いんだよ。それだけフォルジュのやってくれた事は凄いんだから…」


 試作品といった感じでいくつか持ってきてくれた瓦、それはまさにホームセンターど見るかのような形が揃った見事な物だった。そのまま売りに出したって良いくらいに思える。


「先生のお言葉、しかと胸に留め置きます。されど慢心せぬように精進を続けまする!!」


「う、うん。でも、ほどほどにね…」


「はい!では、私はより良い物が出来るようもう少し研究を…」


「あ、そういえば粘土を焼く温度を変えると赤い瓦が出来るとか…」


「なんですと!それは是非とも教えていただかねば!」


 グッとフォルジュが身を乗り出す。


「こりゃ!フォルジュ!!お前はそうやって知りたい事があると前のめりになり過ぎるのじゃ。まずは坊やの屋根を見事に作り上げる事、まずはそれからじゃ!」


 僕らのやりとりを聞いていたのかガントンさんがやってきてフォルジュを嗜めていた。



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