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第708話 彼女たちの同居意識も三人三色?


 次回は…


 『スープの冷めない(至近)距離』


 お楽しみに。


「これから住む所かぁ…、考えた事もなかったぜ…」


「うん、マニィちゃんとはこれからも一緒なんだろうなあ…とは思ってたけどぉ…」


 結婚をするにあたりこれから住む所をどうするか、それを尋ねてみたところ最初に返ってきたのはマニィさんとフェミさんのそんな言葉であった。


 孤児院で育った同い年のふたり、姉妹のように育ち冒険者となった。いつも一緒に助け合って育ってきたふたりは結婚の事はともかく、さらに誰かを加えて三人で暮らすというのはまだあまり実感がないらしい。一方でシルフィさんは一緒にいられるのならどこででも…といった感じのようだ。ただし、あまり騒がしくない…林とか草木が周りに多い所が良いとの事。


 ちなみに結婚後の同居願望みたいなものに関してだがシルフィさんたち三人にも微妙な差がある。シルフィさんは同居に強い意欲があり、マオンさんやミアリスとの同居にも特に考えるところはない。と、いうのもエルフ族は家族という範囲を僕が考えているよりもはるかに大きな単位で捉えている。


「そうだよなあ、セフィラさんたちはシルフィさんにお姉さんとして接しているもんなあ。住んでいる里の里長さとおさや長老たちを頂点…、つまりはお爺さんとかお婆さんみたいにして親世代を両親とか伯父とか叔母みたいに考える。そして近い世代…って言っても数十年とか百年やそこらくらい離れてるけど…、それを兄弟姉妹といった感じでとらえている。おそらくひとつの里や集落単位で家族みたいに考えてるんだろうな…」


 シルフィさんたちとは結婚後の住まいについて今後考えていこうという事になり僕はギルドを後にする事にした。ちなみにギルドを後にする事にした時に受付の見習いを始めたミケさんがコッソリと近づいてきて僕の手首のあたりにその尻尾をシュルシュルと絡ませながら耳打ちをしてきた。


「アタシは一緒に住もうとか言わないからさ…、気が向いた時に…」


「おい、泥棒猫!人の旦那に色目使ってんじゃねーよ!」


 すかさずマニィさんが飛び込んでくる。


「な、なんだよ!人付き合いは人の自由だろ、坊やだってやりたい事あるかも知れないしさ」


「ダメダメダメー!」


 そこにフェミさんが…、シルフィさんも加わって騒がしい事になっていく。変に巻き込まれるのは怖い。…ち、近づかないようにしよう。そう考えた僕は立ち去る挨拶もそこそこにギルドを後にする、触らぬ神にたたりなしのことわざじゃないけどナジナさんとウォズマさんもそそくさとその場を離れる。切ったったの荒事あらごとにめっぽう強い凄腕冒険者の二人であってもこういう時には逃げるのが一番良いという事だろうか。まだお嫁さんを迎えた訳じゃないけど僕はひとつ賢くなったような気がしたのだった。


……………。


………。


…。


 ギルドで突如巻き起こった騒がしさから逃げ出した僕たちはマオンさん宅への帰途につく。その道中の話題はやはり先程の騒動とシルフィさんたちを迎えた後の事だ。


「うーん、まだ一緒に暮らしてる訳じゃないのに早くも色々起こるとはねえ…。こりゃ、これからが大変だよ。嫁さん三人…、幸せも三倍だが騒がしいのも三倍になるかも知れない。ゲンタ、頑張るんだよ」


 歩きながらマオンさんがそんな声をかけてくる。


「は、はは…」


 力無く僕は乾いた笑いを浮かべる僕。


「大丈夫だよ、お兄ちゃん。マオンのお婆ちゃんの事は心配しないで。私も家の事をするから」


 血こそつながっていないが実の祖母と孫娘のような関係を築いているミアリスが安心させるように僕に言った。


「ゲンタが家を離れたら寂しくなるねえ。でも、まあゲンタが幸せになれるならそれが一番良いよ。それに嫁取りしたばかりの時はなんやかんやでいつも一緒にいたいもんさね。わしの見たところ、シルフィの嬢ちゃんなんて特にそうなんじゃないかねえ。片時だって離れてたくない…、なんて思ってんじゃないかい?」


「ええっ!?まさか、あの冷静なシルフィさんがですか?」


 それはないだろう。常に冷静で知的、肩のあたりでキッチリと切り揃えられた金髪と眼鏡が似合う文字通りのクールビューティ。剣と魔法と弓まで巧みに扱う凄腕冒険者であるだけでなく、冒険者ギルドの事務方をしっかりと取り仕切っているような文武両道を絵に描いたようなシルフィさんがそんなにベタベタになるかなあ…。そう思った僕はマオンさんに感想をそのまま告げた。するとマオンさんはいやいやと首を振った。


「分かってないねえ、ゲンタは…。そのへんが女心ってモンさ。…ん、おや…?どうやらウチの周りがなんだか騒がしいねえ…、何かあったのかねえ…?」


 もうすぐマオンさん宅…、といった辺りに差し掛かった所でなにやらザワザワとした声と人がバタバタと行き来する様子が見てとれた。


「とにかく行ってみましょう」


「そうだね、そうしよう」


 頷き合う僕とマオンさん、するとウォズマさんが前に進み出ながら口を開いた。


「何か良くない事があったのかも知れねえ、安全の為にも俺が前を行く。ウォズマは後ろを固めてくれ」


「ああ、任せてくれ」


 ナジナさんとウォズマさんが前後を固め、僕たち三人を真ん中にした隊列が組まれる。僕の服のポケットや頭の上、リュックの中など思い思いの場所にいたサクヤたち精霊も周囲に布陣するように浮遊する。それを見て確認に行く準備が出来たといったとばかりに僕たちはマオンさん宅の方に向かうのだった。





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