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第648話 旅立ち前に後片付け!!しようと思ったら…。


 翌朝…。太陽も上り、あたりがしっかりと明るくなった頃…。異世界の朝は早く町は完全に動き出している、朝食などはとうに済ませて仕事に取りかかり始めている頃合いだ。


 昨夜の襲撃など無かったかのように平穏な朝を迎えた僕は冒険者ギルドの前に僕はいた。いや、僕だけではない。シルフィさんも、そしてセフィラさんたち五人のエルフの姉弟たちにフィロスさんもいる。総勢七人、これからシルフィさんとの結婚する事を報告する為にエルフの里に挨拶に行く…。


「坊や、気をつけて行ってくるんだぜ?」


「うむ。我ら全員、無事の帰りを待っておるのじゃ!」


 猫獣人族の顔役であるゴロナーゴさんに犬獣人族の長老モンゴルマさんが声をかけてくる。他にも顔馴染みの冒険者の皆さんや商売あきないでつながりのある人たちがやってきている。みんな、僕たちを見送りに来てくれている。


「ゲンタが帰ってきたら私と結婚するんだ…」


「なんでそんな変なフラグ立てようとしてるんですか。あと、そんな約束してないですからね」


「気付かれた」


 無表情の兎獣人族のミミさんがさりげなくとんでもない事を言っていたので釘を刺しておく。しかし、彼女は諦めてはない。


「でも、脈ナシじゃない。これから、これから…」


「ずるーい!ミミ、アタシもー!!」


「ほっほ、みんな。ゲンタさんは結婚前の体なんですから。その旅立ち前に困らせてはいけませんよ」


 ミミさんの他にも兎獣人族の女の子たちが声を上げる中、引率の先生のようにヒョイオ・ヒョイさんが声をかける。


「はーい!じゃあ、戻ってきてからにするー!!」


「頭では分かった。でも、体は納得できない。仕方ない、今日は軽い抱擁ハグぐらいにしておく」


「だめー!!ゲンタは私のー!!」


 迫り来るミミさんに割って入るようにアリスちゃんが僕にしがみついて誰も寄せ付けないようにする。そんな騒がしい冒険者ギルドの前には仕事が始まっているような時間にも関わらず少なくない人が集まってくれていた。みんな、僕たちを見送ってくれる為に…。


 だが、その前に決着を付けておきたい。そう、あのロリコン前侯爵と…。そう思った時だった、向こうから奴がやってきた。取り巻きを何人も連れて…。


「ええい、どけどけ!!」


「道を開けぬかァ!!」


 奴の護衛だろうか、ガシャンガシャンと金属鎧の音を立てながらやってくる男たちが集まった人たちを追い立てるようにしてやってくる。


「へーえ?完全武装した騎士みてえだな。奴ら、何を考えてんだろーな?」


「ああ、ここはミーン子爵の領内。そんな事をすれば貴族同士の戦争いくさになるだろうにね」


 そんな切迫した状況の中で歴戦の強者たるナジナさんとウォズマさんには少しの焦りもない。やるならやるよ、そのくらいの構えでいる。そんな騎士たちが踏み込んでくるのに続いて相変わらず肥満した体を揺らしてやってきたのはコーイン・ペドフィリー前侯爵、相変わらず後ろには取り巻きの貴族たちや商人を連れている。


「なぁんか大変だな、貴族サマってのも」


「ホントだねぇ。朝からこんな事に付き合わされるなんて」


「まあ、でもさ…。ヤツに味方するってんなら…」


「そうだねえ…」


 こちらはマニィさんとフェミさん、朝っぱらから愚行に付き合わされている人たちに思うところがあるようだ。そんな僕らにお構いなしに前侯爵が目の前までやってきた。


「おい、下郎げろう!!わしの兵たちをどうしたァ!?昨夜、とうとう戻ってこなかった!どこにやったのだァ!?」


 耳に響く甲高い声、聞いてるだけで不快になってくる。


「ほら、アリスちゃん。そろそろ行くからね」


「いや!離れないもん!」


「アリスちゃん…」


 前侯爵を無視してアリスちゃんと話をしているとさらに前侯爵は憤った。


「わ、わ、わしを無視するなあ!!」


 僕を指差し前侯爵が叫んだ。


「ん、もしかして僕の事ですかぁ?」


 僕は鼻にかかるような声でとぼけながら応じた。


「僕、ゲローなんて名前じゃないもんで。えーと、どちら様でしたっけ?申し訳ありませんね、いやあ…昨夜のモネ様の可憐さに他の事をすっかり忘れてしまったんですよ、ははは…」


「う、うおのれェいっ!!ん?おおォォんッ?」


 僕に睨み殺さんばかりの視線を向けていたペドフィリー前侯爵だがある場所で視線を止めた。そこには僕にしがみつくアリスちゃんがいた。


「んむぉ?そこの金髪の娘!名もなき庶民の娘のようじゃが…ふむ、代わりにはなるか…。こっちにくるのじゃ、貴族の徴集である!」


 いやらしい笑みを浮かべながらペドフィリーはそんな事を言い出した。


「これは異なる事を。いかに貴族とはいえ他の貴族家の領内の人民を徴集はできぬはず、ここはナタダ子爵領内!その命令、お受けいたしかねる!」


 ウォズマさんが毅然とした態度で言い放つ。


「なにおう、わしの命令が聞けぬのか!ええい、者ども!手向かいする輩は打ち果たして構わん!やれェェいッ、切って捨てい!」


「「「おおお!!」」」


 敵の騎士たちが声を上げ剣や戦鎚バトルハンマーなどを振り上げる!一方でこちらも愛娘をよこせと言われたウォズマさんをはじめとして撤退抗戦の構えをとる。


「ぬふふふ、良いのかぁ〜?貴族を相手に歯向はむこうて…。これはナタダ子爵領がわしに仕掛ける抗争ととらえるぞぉ?それでも良いのかあ?」


「ぐ…」


 ペドフィリーが言葉を重ねてくる。たしかペドフィリー侯爵領はナタダ子爵領と国力差は二十倍以上らしい。ここでは勝てるだろう、しかし全面戦争となれば…。僕は多少の面倒事は予想していたがそうなると話は別だ、撃退は出来てもペドフィリー前侯爵自身を処罰は出来ない。それが貴族身分の特権…、それが国許くにもとに戻れば…実際に仕掛けてくるかは分からないが何か違う事をやってくるかも知れない。


「最悪…、アレをやるか…。昨日の兵士どもを使って…」


 僕がそう思った時だった。


「お待ちなさァいッ!!」


 横合いから大きな声が響いた。


 さて、声をかけてきたのは誰でしょう?


 みなさん、予想はつきますでしょうか?

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