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第640話 立ち塞がるのは中ボスだけとは限らない。いや…、ラスボスか?


「ア、アリス…ちゃん…?」


「……………」


 ぷっくー!!


 マオンさん宅の前、待ち構えたのは可愛らしく頬を膨らませご機嫌斜めの美少女アリスちゃん。一生懸命に話しかけるが取り付く島もない。その一方で盛り上がってる人たちがいる、ツッパ君たち、ツッパリ風の若手冒険者四人組だ。


「ゲンタ君が嫁を取るってのは町中の噂になってンからなァ、コラ!」


「おうおう、それも一気に三人も…だよ、コラ!」


「町で知らねえ奴を探すのが難しいくらいだぜ」


「つーか、町の女の中にはアタシが四人目になりたいっ…てのもいるからなー。ゲンタ君さー、町で手ェ振られたり声かけられたりしてない?」


「う、うん…、実は…」


 ぎゅうっ!!


「い、いたたたたっ!!」


 手の甲をつねられる、僕は思わず声を上げた。


「ア、アリスちゃん、離してッ!」


「しらないっ!!」


 アリスちゃんが怒りの声を上げた。


「私じゃない人、私じゃない人をお嫁さんにしちゃうゲンタなんかしらないっ!」


「そ、そんな…」


「離して欲しかったら私をお嫁さんにしてっ!!」


「い、いや、アリスちゃんはまだ成人おとなになってないからお嫁さんには…」


「………ッ!!」


 ぎゅううっ!!


「い、いたたたたっ!!」


 アリスちゃんの追撃がくる。


「こりゃあ、なんとかしねえといけねえな」


 どこからやってきたのかは知らないが腕組みしながらナジナさんが言った。


「そ、そんな!見てないで助けて下さいよ!」


「そうは言ってもなァ…。兄ちゃんがアリスの嬢ちゃんを嫁に迎えたら済む話じゃねえのか?」


「だ、駄目ですよ!アリスちゃんは最近7歳になったばかりですよ!そんな幼い子を…」


「な、7歳ィィーッ!!!?わ、私より三百十さ…コホンッ、じゅ…十歳も若い子がお嫁に行くなんて…。ダ、タメよ〜、ダメダ…」


「はーい、フィロスお姉ちゃんまで入っていったら収拾がつかなくなっちゃうから…」


「離してッ!!ここは僭越せんえつながら十七歳の私が代わりに嫁に行く事で…」


「駄目ですよ、エルフの娘が嫁いだ人の新たな嫁になる者は最初に嫁いだ人より若くなきゃいけないしきたりがあるんだから…」


「い、いやァァ…!こ、ここしかないの、ここしか…!このドサクサに紛れて結婚しちゃうしかないって私の直感が告げてるのぉ…!あああ…、結婚…」


 ズルズルズル…。


 僕たちの話に突入してきたフィロスさんがロヒューメさんやセフィラさんたちに引きずられて退場していった。


「だけどよォ…、なんとかしなくちゃな」


 ナジナさんがしみじみと言った。そしてフゥと一息つくと言葉を続けた。


「兄ちゃん、ここは腹ァくくってのぞまねえといけねえぞ」


「ど、どういう事です?」


 手の甲をつねられたまま僕はナジナさんに応じた。


「いいか?兄ちゃんは今回、一気に三人も嫁を取った。でも、考えてみろよ。シルフィ嬢たちからすりゃあダンナは兄ちゃん一人だけだ、だけど兄ちゃんは三人の嫁を相手にしなきゃなんねえ。そしたらどうしたって三人全員を同時に相手できねえ時だってあるだろうよ」


「そりゃ、まあ…」


 確かに僕の体はひとつ、対して妻となるシルフィさんたちは三人だ。完璧な対応なんて出来そうもない。


「だからこそ…だ。意見が合わねえ時とか…、そういう時とかどうするかを手探りで学ぶ為にもな。自分に向けられた気持ちにどうやって向かい合っていくのか…って事を含めてな」


「な、なるほど」


「さすがのウォズマも娘にゃあ甘え、そりゃあもうとことん甘え。ここは兄ちゃんが一人で頑張らねえとな、こっから先も嫁が増えそうだしよう」


「よ、嫁が増える?」


 ぎゅうううっ!!


「い、いたたたっ!?ア、アリスちゃんっ!?」


「しらないっ!」


「ホレ、兄ちゃん。こういう時こそ…」


「ア、アリスちゃん。ぼ、僕とお話しようか。こ、これからの事について…」


「これからのこと…?」


 僕はご機嫌斜めのお姫様を説得するべく話し始める。それにしても…、新たな目的地に向かって旅立とうとする時に立ち塞がるのって中ボスだよな…。いや、年齢から考えたら結婚するにしても最年少な訳だから最後になるよな…。と、なるとラスボスかな?


 なんて言うか、カグヤにしてもそうだけどアリスちゃんにしても姿は少女なんだけど心はまさに大人の女の人のそれと遜色ない。きっと手強いよなあ…、僕はどうしようかなと考えているとカツカツと馬の蹄の音が近づいてくる。


「ゲンタ殿はおられるか!ナタダ子爵家所属、騎士スネイルが参った。急ぎ話したい、これあり!」


 やってきたのは父の後を継ぎ騎士となった二代目トゥリィ・スネイルさんであった。


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