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第586話 殺し合いの中での一息


 当初、パジャソは気味の悪い老魔術師でマッドサイエンティストなキャラクターにしようと思っていたのですが書いてるうちに逆の幼児性がある悪役キャラになってきました。


「ウィンドカッター!!」


 シルフィもまた魔法を放っていた。わずか数メートルを挟んでの対峙、敵から放たれた闇の刃に対抗する。


「ひょひょ!!無駄ァ!ダークマジックシールドは魔法も防ぐと言ったろォ」


 パジャソと名乗った仮面の魔道士が勝ち誇ったように笑う。


「キミの魔法は当たらない、だけどボクの魔法は当たっちゃうよォー!!」


「狙ったのはお前ではない」


 ばちぃィィンッ!!


「ひょっ!!ボクの魔法がぁ!わひゃああああッ!!」


 闇の刃と風の刃、二つの魔法がぶつかり合い弾けた、その余波で激しい風が巻き起こる。その余波をモロにくらいパジャソは地面を転げた。一方のシルフィは魔法をぶつけ合った事で生まれる瞬間的な魔力の爆発を予測していた。ふわりと身をわずかに浮かせその爆風に逆らわずに乗った。その勢いを利用して一気に十数メートルほど後退する。敵に絶対的な防御魔法がある以上、近距離でやり合うのは得策ではない。どうしたってかわせないものが出てきてしまう。それゆえ距離を取った。


「ひょ…。か、なんでだ!ボクのお得意のダークカッターだぞォ!」


 起き上がりながらパジャソがその短い杖を振り回し不満気に叫んだ。


「私も風の属性を得意としている。風が斬撃カッター系の魔法を得意とするのを知らないか」


「あ…!お、おにょれえェェ…」


 風魔法の得意な攻撃法を敵は思い出したようで間の抜けたような声を上げて納得したようだ。


(やはり実戦の経験は少ない…。だが、魔法の威力は高い…。なぜ…?)


 シルフィは頭に疑問符を浮かべた。実戦経験は少ないと見受けられるのに威力はと言えば老練の腕が立つ魔術師のようだ。それに言動も妙だ。最初のうちは気味の悪い老人かと思ったが今その姿を現したのを見ていると癇癪を起こした子供のようだ。


(全てがちぐはぐだわ…、色々とおかしなところがある。だけどそこに何かある、この違和感に…)


 シルフィは敵に視線を向ける、地面を転がされたのが相当頭にきているらしく絶対殺してやるからななどと口走りながら新たな魔法を唱え始めようとしている。


(まずは時間を稼ぐ…、敵のダークマジックシールドの効果時間が切れるまで…。そしてその切れ目に仕掛ける…、その為にはどんな手を使っても足止めを…時間稼ぎをしなくてはならないけど)


 難しいな…、シルフィはそう思った。これだけの魔道士、ひとつの魔法から身をかわすだけでもなかなかの難事。苦労することは間違いない、だがそれでも敵の集中力がわずかでも削がれるのなら…そんな軽い気持ちでとりあえずシルフィはパジャソに声をかける事にした。


「良いの?そんな格好で…」


「ダークカッ…、なに?そんな格好って?」


「……………!?」


 まさかである、パジャソが呪文を中断し会話に乗ってきた。思わずシルフィは言葉を失った。だが、すぐに気を取り直し会話を続行する。


 すっ…。


 シルフィは無言でパジャソの膝小僧のあたりを指差した。


「さっき地面を転げた時に付いたんでしょうね、膝のあたり

も腰のあたりも泥で汚れているわ」


「あっ!?本当だ!!泥だらけだっ!ちょ、ちょっと待ってろ!!」


 ぱんぱんっ!ぱたぱたっ!!


 パジャソは膝や太ももの辺りを手で叩き土埃を払っている。


「取れた?」


 なんと事もあろうに汚れが取れたかどうか敵であるシルフィに尋ねてくる始末だ。


「え、ええ…」


「ふう、良かった。これは陛下からいただいたローブだからさあ、汚したら大変なんだ。…じゃあ、殺しちゃおっかなー!」


「お尻の方も汚れているわよ」


「えっ!本当ッ?やだなー、早く言ってよ!殺しちゃってたら気づかなかったよ。危ない危ない、ひょひょひょ…」


「……………」


 殺し合いの中で何をやっているんだろう…、シルフィがふとそう思った時だった。


 ぶちっ!


「ッ!?」


 シルフィの首元で嫌な音が鳴った。元太と二人で編み上げたお守りを結んだ三つ編みの紐…。


「に、二本目の紐が切れた…!?ゲ、ゲンタさんの身に何か?」


 シルフィの顔に焦りの色が浮かんでいた。


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