第562話 我に加護を(2)
こんにちは。
私がPS3を買ったのはダンジョン&ドラゴンズをする為です。
皆さんは◯◯をする為にこのハードを買ったというのはありますか?
あと…、最近無性にコナミワイワイワールドをやってみたいなあ…
「や…、やったか…?」
眩んでいた目が落ち着いて来て戻りつつある視力、僕は前方に視線を向けてみると…。
ォォォォ…、マブ…ィ…。ゥゥラメェェ…シィ…。
ブド・ライアーは怯んだような姿勢になっていたが、それ以外は先程とさほど変わりはない。そして曲がらない間接による独特のぎこちない歩きをしてこちらに近づいてこようとする。
「だ、駄目…。土に還らなかった…、私に力が無いから…」
「し、しまった!!こういう時、一番言ってはいけないNGワード第一位を言ってしまったから…」
「「えっ!?」」
僕とミアリスは互いに顔を見合わせた。
「ど、どういう事?お兄ちゃん?」
「あ、いや、特に意味は…」
フラグとか言ってもしょうがないし…。だけど、僕にはもうひとつ気になる事があった。
「ね、ねえ?ミア、そのターンアンデット(屍人還し)の術…。そ、その呪文みたいなのって…」
僕は思わず尋ねていた。ターンアンデットの術…、なんか昔の…古き良き時代のベルトスクロールアクションに登場するやつみたいだ。鎚矛と盾を手に鎖鎧で身を固めた聖職者が使ってたっけ…。あと…、なぜかあのメーカーのメイスを使う人は頭髪が薄いというか…そういう割合が多いような気がする。そんな僕の懐ゲー回想をしている中、ミアリスが応じた。
「う、うん。今日、初めて使ってみたんだけど…。言葉の意味はよくは分からないんだ…。で、でも、どこからか伝わってきてアンデットになったものを土に還す効果があるんだって…。幸い魔力を通じて精神力を振り絞る訳じゃないから何度でも出来るけど…」
「言葉の意味は分からない…」
ミアリスの落胆した様子で呟いた言葉、しかし僕にはピンと来るものがあった。。…言葉の意味は分からない…か、でも…間違いない!今のは日本語だった、異世界の言語じゃなかった。…そして、魔力とかは関係ないのなら…
「僕にも…出来る…かも…?」
幸いブド・ライアー(ゾンビ)の動きは遅い逃げようと思えばいくらでも逃げられそうだ、試す価値はある…。
「ミア、僕もやってみる…。魔力がなくても出来るなら…、試すだけ試してみる」
「え?お、お兄ちゃん…?」
えっと…、確かあのゲームでは…。僕はレトロなラインナップを誇る地元ゲームセンターの画面で見た聖職者キャラクターを思い出す。言葉と…その動きを…。
「…(ゥ)ワレニカゴヲ(ゥ)ーッ!!」
ちょっと胡散臭いカタコトっぽい発声、そして開いた手を天にかざした。光が溢れる、それはミアリスが体全体が放った光より方向は限られるけど強いものだった。
「オオォォンッ!!…ア、ァァ…アツゥイ!イタァイ!」
効果はあった、見ればブド・ライアーがこちらに伸ばしている腕の肘くらいまでが薄い紙が焼け落ちて灰になったかのようにサラサラと地面に落ちていく…。
「き、効いて…る…」
ミアリスが呟く。
「い、いける…。いけるぞ…ミア、僕と同じようにやってみて」
「で、でも…。私はお兄ちゃんみたいに上手くは…」
彼女はどうやら自信を失い弱気になっているようだ。
「出来るよ、ミアなら…。少なくとも僕はミアが屍人還し(ターンアンデット)をしなかったらコレが出来る事も知らなかった」
僕はそう言ってみたのだがまだミアリスは躊躇いの色が隠せない。僕はそんなミアリスの手を取った。
「あっ…」
「手をつなごう、僕に続いて言ってみて…。ちょっと発音が違っただけなんだ、それと体全体から術の効果を放とうとするのではなく手のひらから出すようなイメージで…」
そう言って僕は自分の腕を前に突き出す。
「…ゥワレニカゴヲゥーッ!!」
先程よりもさらに胡散臭さやカタコトっぽさを意識して術を試みた、先程より強い僕の手から光が放たれる。それはブド・ライアーの伸ばしていた肘から先を失った腕を肩のあたりまでが土に還る。そこにミアリスの術が後を追った、先程はまるで棒読みのような発音だったが今回は若干の胡散臭さを醸し出している。
「…ゥワレニカゴヲーッ!!」
パアアアアッ!!
「あっ、あああああっ!?ひ、光が手から放たれるんじゃなくて…」
ブドライアーの足元から光が吹き出す、それはまるで地面から立ち上る間欠泉のように勢いよく…。僕の術なんかより遥かに強く力強い光…、僕のものとは威力が段違いなのはシスター…聖職者の見習いとして精進してきた事のあらわれだろうか…。
オ…オアァァッ!カ、カラダガ…、アツ…イッ!ト、トケルゥゥゥゥゥゥ…!!コ、コノ…ブド・ライ…ア…ガ…、…ブド…ライ…ブド…。
光を…、屍人還し(ターンアンデット)の術を浴びたブド・ライアーが足元から崩れ森の地面の上に新たな土として積もっていく。身をよじり苦しんでいたがそれも長くは続かない、30秒もしないうちに全身は崩れ去り小さな子供が作る公園の砂場の山ほどの土に還った。
「お、終わっ…たの…かな…」
僕は思わず呟いた。辺りが静かになり、死体となっていたブド・ライアーの肉が腐った悪臭も徐々に薄れていく。
「お、お兄ちゃん…」
ミアリスの声がした。手を繋いでいるミアリスに視線を向けると彼女は目に涙を浮かべてフルフルと震えている。
「こ、怖かった…、怖かったよぉ…。わああぁぁんっ!!」
ミアリスが泣きながら抱きついてきた。
「ミア…」
僕はミアリスをしっかりと受け止めた、不意の事だったけどなんとか対応する事が出来た。わんわん泣きながらミアリスはその体を震わせ続けている。僕はその背中をそっと撫でて彼女が少しでも安心できるようなるべく優しい口調を心がけて言った。
「怖かったんだね…。大丈夫だよ…、もう…大丈夫…」
「ううう…、お兄ちゃん…お兄ちゃん…」
僕らはしばらくそうしていた。ミアリスは泣きじゃくるミアリスは少しずつ落ち着いていき、姿を消していた太陽はだんだんとその姿を元に戻していった…。