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第531話 炸裂!天使の絞首台(ギャロウズ)!!


 最初は断頭台にしようと思ったんですけどねぇ…。


「マニィさんッ!!」


 現れた人物の名を僕は叫んだ。た、助けに来てくれたんだ…そう思うとなんだか心がジーンとしてくる。…と、そこへさらにやってくる人の声が…。


「あ〜、待ってよぉ〜マニィちゃ〜ん…」


 とてとてとて…と可愛らしい足音でもさせそうな足取りでやってきたのはこれまた冒険者ギルドの受付嬢フェミさんである。その彼女が踏み越えられて路地の両端に割れた暴漢たちの真ん中を縫って駆けてくる。さらにフェミさんの後ろにはたくさんの冒険者たちの姿が…、見知った顔が見えている。


「おせーよ、フェミ。だけど、半分残しておいてやったぜ!」


 くい、と親指を立ててマニィさんがフェミさんに指し示す。その先には先程蹴飛ばされて地面をバウンドした男が今度は路地に面した石壁に強く当たって跳ね返り無防備に空中を舞っている。それに向かってフェミさんも跳んだ。


「ゲンタさんを狙うなんてぇ〜」


 がしっ!がしぃっ!!


 足を天に、頭を地に向けて宙に浮いていた暴漢に左半身を密着させるようにして組みつきフェミさんが素早く体勢を整えていく。両足を閉じさせ締め付けるように…電信柱を横から抱えるように両腕でロック、さらに片足を…左足のすねを暴漢の首元に添えてそのまま落下していく。身動きしにくい空中でああもガッチリめられたら逃れる術はない。


「も〜、許さないんだからね〜!!」


「ゲエェェーッ!!あの体勢はアーッ!!?」


 技をかけていく光景を見てナジナさんが叫んだ。


「普段、優しく柔らかな雰囲気のフェミが怒った時には容赦なく首を仕止めるところからッ…」


 ゴギャアアァァンッッッ!!!


 断頭台ギロチンの刃のように喉元にあてがわれていたフェミさんの左脛、暴漢の後頭部から頸部にかけてが真っ逆さまに地面に叩きつけられた。鈍い音ではなく意外と甲高い音、きっとこれは途中で折れたり砕けたりしなかった骨が備長炭を打ち合わせた時のように澄んだ音がなるのだろう。素人目にも分かる、あれで無事な訳がない。


「天使の絞首台ギャロウズと名付けられているゥゥッ!!パオオォォンッッッ!!!」


 興奮のあまり口調がおかしくなっているナジナさん。そう言っている間にフェミさんは技を極めた暴漢から離れた。暴漢は首から後頭部にかけてを地面につけて地面に刺した棒の様に垂直に立っていたがやがてバランスが崩れパタリと倒れた。


「逃すなァ!」


「坊やを狙ってタダで済むと思うな!!」


「な、なんだ、コイツら!!」


「ぼ、冒険者だァ!!うわあああ…」


 見れば路地の先でやってきた冒険者の皆さんが暴漢たちをボコボコと袋叩きにしているのが見えた。



 たくさんの人が争い始めた。一方は布袋をかぶって僕たちを襲ってきた襲撃者、そしてもう一方は駆けつけた冒険者たち。その数の差は圧倒的で冒険者側がものすごく多い。ギルドに所属しているほぼ全てが来ているのではないだろうか?


「ほぉーら、クーゴ!その悪いコちゃんがかぶっている袋を取っちゃって」


 そう相棒のクーゴさんに声をかけているのはオネエさん系冒険者のイッフォーさん。愛用の片刃で反りのある小剣ショートソードを手に賊の一人をクーゴさんと協力してあっさりと捕らえた。そして今は男が身動きできないようにクーゴさんが羽交締めにしている。


 羽交締めにしたままクーゴさんが器用に男の布袋を剥ぎ取ると中からはそれなりに整った顔立ちが現れる。


「あーら!ちょっと、やだぁ!なかなか可愛いおカオじゃなぁい!ねえねえアナタ、ちょっとアタシと遊んでみない?」


 手にした片刃の小剣の刀身、そのみねの部分を使って捕らえた男の股間のあたりを擦るようにしながらそんな声をかけている。まさに恵比寿えびす顔…、これ以上ないくらいのニコニコ顔だ。しかし、それを見て周りの男性冒険者たちは若干引き気味である。


「お、おい…」


「また始まったぞ、イッフォーの悪いクセが…」


 引いているのは冒険者だけではない。それをやられている当人もである。必死になって首をブンブンと左右に振り嫌悪感を露わにする。


「ヒ、ヒイッ!!や、やめろォ、オカマ!!」


 ぷちんっ!!


 その言葉を聞いて満面の笑みだったイッフォーさんの表情が一変した。


「なんだとコラァ!!!!」


 ごつぅっ!!


 怒り心頭に発する発すとはまさにこの事、イッフォーさんはそれまでの上機嫌で柔らかなオネエ口調から粗暴なものへと変わる。さらには手にした小剣の柄尻グリップエンドで捕らえている男の顔面を痛烈に強打する。


「うぶあァァァァッ!!!」


 鼻の辺りを殴られ鼻血と悲鳴を撒き散らす男、しかしイッフォーさんのお仕置きは止まらない。ごつっ、ごつっ、殴りつける音が何度も続く。


「アタシがッ!!なんだって!!何言ナンつったのかって!!聞いてンだッ!!答えろよッ!!このタマ無しがッ!!ゴラァ!!」


 短く言い切る度にごつ、ごつと男を殴りつけるイッフォーさん。これはマズい、怒りで完全に我を忘れている。男の顔面はもはや見る影もない、美男なのかそうでないのか…原型を思い出せそうになくなるぐらいに…。


「イ、イッフォー…さん?」


「はっ…!?」


 僕がおそるおそる声をかけるとイッフォーさんが我に返った。そして男の胸ぐらを掴んで滅多撃ちにしている自分を自覚すると慌てて男から手を離した。


「ゲ、ゲンタ…ちゃん?キャッ!!や、やだぁ!?ア、アタシ、何やっちゃってんのォ!サイテーッ!!もう、アタシのバカァ!」


 体をクネクネさせながら自分の頭に左手でコツン、なんなら片目を瞑り舌をペロリと出すような雰囲気である。うーむ…ナヨナヨした雰囲気とバイオレンスな雰囲気が行ったり来たり、バイクに乗ったら性格がコロッと変わる有名な某交通機動隊員みたいだ。


「その…、だ、大丈夫…ですか?」


「え、ええ。アタシ、大丈夫よ。うん、大丈夫…大丈夫…」


 すー、はーと深呼吸しながらイッフォーさんが応じる。と、とりあえず逆上している状態は脱したのかな?そして周りを見回せば襲撃してきた奴らは駆けつけてきた冒険者たちによってすっかり鎮圧されようとしていた。


「よーし、これで全部かァ!?」


 冒険者の一人が声を上げると周りの冒険者たちがそうみたいだと応じている。だけど僕は見た、ひとりコソコソと逃げ出そうとする奴の後ろ姿を…。


 どこにいたのかは分からないが一人の男が首元の紐をほどこうと手を伸ばすと同時にこの場から離れようとしているのが見えた。冒険者の数は多く他の町からの出入りもある、全員が顔見知りという訳ではない、だから覆面代わりの袋を脱げば見分けがつかなくてもおかしくはない。


「あ!あそこに一人、逃げ出そうとしている奴がッ!?」


「チッ!!?」


 僕の声に反応して男が一目散に逃げ出そうとする。冒険者の皆さんは少し離れていた為か反応が遅れた。


「野郎ッ!?逃すなあ!」


 そんな声が上がるが距離が離れていた、あれでは追いつけそうにない。そう思った時だった。


「やぁ〜〜〜んぅ〜すぅ〜ッッッ!!!!」


「うわあっ!?」


 どかあっ!!


 逃げようとした男に頭から突っ込んできた人がいた。バランスを崩しぶつかった二人が地面に転がる。


「ベ、ベヤン君ッ!?」


「へ、へへへ、助けに来た…でやんすよ。ゲンタ君」


 地面に転げたベヤン君が呟いていた。



 次回、『悪党狩り』。


 コンビと言えばナジナ&ウォズマ、マニィ&フェミだけじゃない。あの二人も参戦だ!!さて、皆さんが考えるこの作中でのコンビと言えば誰でしょうか?ご意見、お待ちしております。

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