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第530話 救援!急援!


「武器が無いから、鎧が無いから戦えない…?そんな事は理由にならない。武器が無いなら無いで素手でも戦えるすべを持つ…、それが冒険者というものさ」


 白馬の騎士…、そんな言葉が似合うウォズマさん。そんな彼が素手で暴漢を圧倒し容易たやすく無力化するとそんな言葉を投げかける。…が、何かに気付いたようでさらに付け加えた。


「…っと、説明は無意味だったかな?気絶している人に対しては…」


 苦笑混じりにそんな呟きを洩らすあたりもキマっている、イケメンって良いなあ。


「あ…、確かに。倒れてピクリとも動いてませんもんね。袋をかぶってるから顔がよく分からないけど…」


 今まさに戦闘の真っ最中だというのに僕は思わず反応してしまった。ナジナさんとウォズマさん、ふたりの強さに緊急時なんだけど不思議と安心感がある。だが、敵はいなくなった訳ではない。出鼻をくじかれたとは言えまだまだ数がいる。前にも後ろにもそれぞれざっと十人前後がいるようだ。


「まあ、数だけは揃えたみてえだな、…っと?ありゃあ…」


 ナジナさんが何かを呟く。その間にうきあしだっいた敵も少しは落ち着き一気に襲いかかるのではなく武器を手にジリジリと間合いを詰めてくる。


「おい、ウォズマ。ここはしっかり踏ん張るぞ、…それと分かってるな?」


「ああ。まずは二人を守りつつ…そうだな、こいつらに戦いの機微とやらを手ほどきしてやるとしようか。そのくらいで丁度良さそうだ」


「ぬぐぐ…、ナメやがって…」


 二人の余裕ある素振りに敵の一人が怒りを滲ませた。


「おい、野郎ども!ヤツらは素手だ、こっちは武器を使って間合いの外からやンぞ!!二人がかり、三人がかり…なんでも良い!ツブしゃあ良いンだ!!」


「そ、そうだ!ちょっとずつ袋叩きにすりゃあ…」


「そーだぁ!!いたぶってやろーぜぇ、二つ名持ちの冒険者をボコったとなりゃあ俺たちにもハクが付くぜぇ!!」


 周りの暴漢たちの士気が再び高まっていく。


「へー、俺たちの事を知っているのか。まあ、良いや」


 一方でナジナさんたちも迎え撃つ姿勢、再び戦闘が始まった。


……………。


………。


…。


「くっ!?このおッ!!」


 ブンッ!!


 暴漢が振り回す棒切れをウォズマさんが素早く避け、お返しと言わんばかりに突き出すような軽い前蹴りを食らわせた。もっとも、この前蹴りは打撃ダメージを与える為のものではなく間合いを離す為のもの。食らった暴漢は当然痛みを感じず躍起になってウォズマさんに攻撃を仕掛けるが当たらない。


「クソッ、クソッ!!当たれ、当たれッ!!」


「フッ…。そんなに叫んだって当たらないものは当たらない、それで当たるくらいならオレだってそうしている」


「な、なんだとぉ!このッ!このッ!!」


 ウォズマさんの挑発ともとれる物言いに男はさらにいきり立つ、攻撃はさらに大振りになっていき周りの連中との連携など考えられないようなものとなっていく。


「お、おいっ…」


「ば、馬鹿ッ!こっちに当たンだろーがッ」


 後方の敵の連携は取れていない、前蹴りをもらった男がブンブンと振り回す大振りな攻撃がそれを妨げているのだ。一方でナジナさんの方は…。


 がしいっ!!


 プロレス技のアイアンクローの要領で襲いかかってきた暴漢の一人の顔面を片手で掴む。


「や、野郎ッ!?仲間をッ!」


 そこに他の暴漢が掴まれた男を助けようと手にした棒でナジナさんに打ちかかる。それに対しナジナさんは


「あ〜らよっと」


 なんとナジナさんは掴んでいる男を盾に使い、敵からの攻撃を掴んだ男に身代わりさせる。


 ぼこおっ!!


「ぐわっ!!」


「あっ!?」


 掴まれた男の背中に力任せの一撃が入った、その状況に敵が一瞬戸惑う。


「ホレ、返すぜ!大事な仲間なんだろ」

 

 無造作なスリークォーター気味のフォームでナジナさんが掴んでいた男を投げ離す。その先には仲間を打ち据えて戸惑いを見せていた暴漢がいた。


「うわ!?」


 投げつけられた男に巻き込まれ二人揃って地面を転がった。それを見た周りの暴漢たちが焦り始める。


「ちくしょう、なんてザマだ!たった二人の冒険者にッ…」


「へっ…、二人じゃねえぜ」


「なんだと、ここにいるのはお前らだけじゃねえか!」


 ナジナさんに向かい男が指を差して突っかかる。


「フフッ、来たようだな」


「なんだとっ!?来たってなんだ!?」


 驚く男が声を荒らげる。そして僕たちから見て進行方向、ナジナさん側の暴漢たちの後方から軽い悲鳴が上がる。


「ぎゃっ!!」


「わっ!?」


 なんと暴漢たちの頭や肩を飛び石を次々とジャンプして渡るように迫る人影、赤い髪をした…。


「なんだァッ!どうしたあ!」


「あ、あなたはァッ…!!」


 男が悲鳴の上がった方に振り向く、同時に僕も叫んでいた。その時には後方の踏み台にされた暴漢たちは路地の両端に転んだりバランスを崩すなりして醜態を晒している。そして迫るのは暴漢たちを踏み越え空中に舞う…。


「そっらああああアアッ!!!!」


「ぐふぅアアアッッッ!!!!」


 サッカーのジャンピングボレーのように体を横に捻りながらの強烈な蹴り。まさに蹴られたボールのように振り向いた男が吹っ飛んで地面に叩きつけられバウンドする…、同時に男を蹴飛ばした人物が地面へと着地した。その横顔を見て僕はその人の名を叫んだ。


「マニィさんッ!!」


 



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