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第490話 あの二人は今?


「ホンマ、エエ話を聞かせてもろたわあ。こういうのをまさに値千金っちゅうんやろな!面白い…、面白いでゲンタはんっ!宿屋は旅人が泊まるだけやない、こんな使い方もあるんやなあ…」


 別室の…、より小さな個室に手招きされた僕はゴクキョウさんにいわゆる日本で行われている結婚披露宴の事を話していた。ドラマや漫画を見て一般的な知識として知っている事、それと僕が高校生の時に従兄弟のお姉ちゃんが結婚するにあたり実際に出席した結婚式&披露宴で見聞きした事…。その話をするたびにゴクキョウさんは『ふんふん、ほんでほんで?』とか『こりゃあゼニになりまっせ!!』とか言っている。すっかり商売人の顔だ。そんなゴクキョウさんだがひと通りの話を聞いた後、テーブルの紅茶をゴクリと飲んで一息つくと笑顔になって口を開いた。


「宿泊の為のモンやけどこないな使い方があるんやな…。せやけど考えてみたら合理的や!仮に大貴族が婚姻するとして招待客もまた貴族はんたたてやろからな、王都なり任地なりいろんなトコにおるはずや。そんなら遠くから来たその人たちやって何処かに泊まらなアカン。そしたら会場にもなる宿屋に泊まってもろたらエエんや!」


「そうですね。それに泊まるとなれば夕刻から翌朝までが稼ぎ時…、昼間はその準備だけに充てる事になります」


「せやな、つまり昼の間はゼニが落ちひん準備だけの時間になる。それやから、こういう催しをやれば…ぐふふ。またゼニを生むやないか!当然、その間は客室も空くんやから…」


「昼間の時間は従来通り、清掃などに充てる事もできますね」


「ウム、ウムウム!!せやせや、その通りや!」


「そうなるとそういう催しの時に働き手も必要になります、そこでひとつお願いが…」


「ほう…、なんやろ?よろしい、他ならぬゲンタはんの言葉なら聞かへんワケにはいかん。言ってみてや」


「実は以前に僕が開いた催しで所帯を持つおふたりがおりまして…」



「エングさん、ラクスさん、お久しぶりですね。あの恋のイベント以来ですね」


 ヒョイさんが営む社交場サロン、ここに僕は人を招いた。やってきたお目当ての人物たちを出迎える。それは町の住人であるエングさんとラクスさん、色々あったせいかなんだかとても久々に会ったような気がする。もっとも、実際にはそんなには経っていないのだけれど…。


「あの時はどうも…、その…俺たち…」


「一緒になる事になりまして…」


 照れながら二人が僕に近況を話す、噂通り二人はいわゆる結婚をするようだ。あのイベントが二人の幸せのきっかけとなったのなら僕としても嬉しい限りだ。


「はい、お噂は聞いてますよ。このたびは誠におめでとうございます。さあ、まずは夕飯時ですから食事でもしながら…」


 そう言って僕はウェイターさんに目配せする、すると間髪入れずに食前酒がテーブルに供される。乾杯し口を付けている間に皿が運ばれてくる。


「さあ、まずは冷める前にいただいちゃいましょう。お話はそれから…」


 運ばれてきたのは薄切りにした肉などを挟んだサンドイッチのような物、さらには具材多めのスープに缶詰から出した桃のシロップ漬け。日本で考えられているディナーと比べるとかなり質素にも思えるが異世界基準ならかなり豪華と言える。もっとも貴族の人が食べる物を用意しようと思えば用意できるけどあれはテーブルマナーみたいなものがうるさい。僕も含めてただの町衆なんかには面倒な食器カトラリーの扱いなんてまっぴらだ。だから気軽に食べられる物を選んだのだ。


「…ところで、お二人をお招きしましたのは…」


 そう言って僕は話を切り出した。今回、所帯を持つ…いわゆる結婚をする二人に披露宴をやってもらいたいという事、その準備や費用はこちらが持つ事などを伝えていく。


「ふええ…、そんな貴族様みたいな事を…」


 エングさんが呆けたような声を洩らした。


「そんなに畏まって考えなくても良いですよ。よくある所帯を持つ人たちを祝って行うお酒を飲んだりして賑やかにやる…それがちょっと大きくなったようなもんです」


「は、はあ…」


「と、言っても少し儀式ばった…貴族の人がやるものをすごく簡単にしたような事もやります。まあ、かかる時間は一刻いっとき(約二時間)か一刻半くらいですかね。んで、その時にやる事なんですか…この婚姻が祝福されたものになるように手伝ってもらう人たちがいます。おふたりには直接の面識が無い人も参加する事になったりしますがそれでも良ければ…という事になります。それで手伝ってもらうのは…」


 僕は結婚披露宴の流れを簡単に伝えていく、それを聞いた上で二人は無事に承諾してくれた。場所はゴクキョウさんが建設を始めた宿屋の敷地の一角、そこに先行して作る結婚式場である。これが上手く行ったならゴクキョウさんはこれを本格的に取り入れる手筈となっている。


「これが上手く行けば…、今の生活がもっと変わる…」


 僕はそう呟きながらとある人物の顔を思い浮かべていた。


 次回予告。


 ゲンタが思い浮かべた人物とは…?


 第491話『働く人たち』


 お楽しみに。

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