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第434話 即答できないゲンタとそこに現れた来訪者


 ダアンジャブのイメージはアジャコングさんとダンプ松本さんです。


「これは…。まさに変幻自在」


「こりゃ良いよ!こっちが葡萄酒(ワイン)かと思えばあっちは甘酸っぱい味、その他のヤツも飲んだ事のない味さね。全部良い、気に入ったよ!あははは…」


 焼酎のストレート、他にウーロンハイやレモンハイなど様々な酎ハイを試飲させたところファバローマ夫妻はご満悦のようだ。特に奥さんであるダアンジャブは一口飲んでからずっと笑顔だ。


「混ぜる物を変えるだけで様々な顔を見せる。この『しょうちゅう』という酒、水のように透明でありながら酒精強く面白さを感じたが…」


「ああ、水のよう…か。そうさね、アンタの言う通りだよ。酒精が強いのにクセが無いんだよ。だから葡萄酒のようにしても他の色んな味にもなれるんだ。こりゃ気に入ったよ、良い物に出会えたモンだよ!」


 うーん、日本の商品凄い。ついに魔族の人の心も掴んじゃったよ。


「おや…?昼から酒盛りかい?」


「ウォズマさん!」


「よう、ウォズマ」


 そこにウォズマさんがやってきた、アリスちゃんも一緒だ。いつもと違うのは鎧は身につけておらず、その腰にいつもの愛剣はない。代わりに短剣(ダガー)を一本、身につけている。


「へえ…、アンタがウチの人と良いケンカをしたって男かい。…うん、なかなかのツラ構えじゃないのさ。強そうだよ」


 ダアンジャブがウォズマさんをそう評した。


「うむ、まさに有意義であった。闘争こそ最上の美酒よ、我にとってはな。だが、ここで飲んだ酒はそれに並ぶ物だ…」


 ファバローマは顎のあたりをさすりながら呟くように言う。そして次の瞬間、僕をまっすぐに視界に捉え言葉を続けた。


「坊や…、いやゲンタ…。うぬこそ我が求めていた者であろう…様々な品を扱う噂の商人、この酒の出所でどころ…違いあるまい?」


「う…」


 まさか自分がファバローマからまっすぐに見られるなどとは思っていなかったので僕は思わずたじろいだ。それを見てファバローマはフ…と口元を緩めた。


「うぬをどうこうしようというつもりは無い。だが、うぬは商人であろう?」


「あ…。は…、はい」


「ならば話は簡単だ、我はうぬと取引がしたい。なあに、うぬは品を用意し我は対価を払う…。どうだ、簡単であろう?」


「そ、それは…」


 魔族の住む国と人間の住む国、その外交関係とか商取引はここナタダ子爵領としてはどんな扱いなんだろう?僕はそのへんが分からず即答できないのであった。すると…、そこに複数の馬のいななきや馬蹄ばていの音が近づいてくる。乗っているのは統一された形と色の甲冑に身を包んだ騎士たち…、彼らはマオンさん宅の前の通りに馬を止めると数名は騎乗したまま…そして数名は下馬して辺りを固めた。その動きはこちらに攻め入るようなものではなく、これから来る貴人を出迎え警護するような感じがした。


「ほう…?何者かが訪ねてくるとみえる…」


 ファバローマが小さく呟く。


 そしてガラガラと木製の車輪と金属製の車軸が擦れるような音…。その音の発生源となるシックだけれど格調高い馬車がマオンさん宅の前で止まる…。馬車を縁取るように飾る紋様は献上品の鏡にも刻んだ…」


「の…、野薔薇…。じゃあ中には…?」


 馭者さんがすぐに地面に降り、洗練された動きで馬車の戸を開ける。中から最初に降りたのはシルフィさん、今日は細剣レイピアも身に着けていてさながら護衛につく女性剣士のようだ。


 シルフィさんは音も無く馬車から地面に降り立つと油断なく辺りに視線を走らせる。続いて降りたのはモネ様。だが、モネ様は馬車を降りたは良いものの不思議そうに辺りをキョロキョロしている。


 そんな中、シルフィさんが何やら呟くとモネ様はこちらを見てハッとした表情に…。


「師父様!」


 モネ様はそう声を上げニ、三歩こちらに駆け出したが、すぐにグッと踏み止まる。するとさらに一人馬車から降りる人の姿が…。


「ようこらえた、モネ。そうじゃ、常に人の目を意識せよ。自らの二つの目玉より他人の目の方が多いのじゃ、心せよ」


 理知的な声、そして神秘的な白い肌に黒い髪…。この方がモネ様の母である事を露ほども疑う余地も無い二人揃っての美貌…。


「あ…。し、しばらくぶりにございます!奥方様!」


 僕は思わず片膝を着いた。


「ふふ…。久しいな…いや…」


 声の主は微笑みを浮かべこちらにやってくる。


「まだそこまで日は経っておらんかったかの?のう…、ゲンタよ」


 やってきたのはここミーンの町を治めるナタダ子爵の夫人、ラ・フォンティーヌ様であった。





 次回でいよいよ17章本格スタートです。


 

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