第411話 町騒然!魔族の大軍が押し寄せる
「た、たいへんだ、たいへんだァ!!ま、魔族が町にやってくるぞぉ!大軍だあ!!」
町の住人だろうか、マオンさんの家の前の通りを大声で叫びながら走り去っていった。
「まぞ…く?…魔族って?」
僕は魔族がこの異世界においてどういった存在なのか分からず思わず疑問を口にしていた。
「兄ちゃん、魔族を知らないのか?」
ナジナさんがこちらに問いかけてくる。
「は、はい」
「そうか、何かと広い知識がある兄ちゃんだが知らない事もあるんだな」
「ゲンタや。魔族と言うのはね、いわゆる種族の総称なんだよ。例えば鳶職のゴロナーゴ親分は猫獣人族、社交場で働くミミは兎獣人族…、個々の呼び方はあれど大きなくくりで言えば獣人族だ。それは分かるね?」
「はい、マオンさん」
「それと同じように魔族と言うのは種族の大きなくくりなんだよ。だけど、なんだろうね?魔族の大軍とは…」
「大勢やってきた、というならまだ分かるが…。大軍というのは気になるね」
「ああ、大勢なら数が多いだけだからな。大軍となると武装をしてるのか?ちっと気になるな」
「ええ、正直ここミーンは内陸にある町…。ここがいきなり攻められるのは腑に落ちませんね。攻められるならもっと魔族の国と境を接するような地域からでしょうし…」
シルフィさんも疑問を投げかける。
「まあ、いずれにせよアレだな。様子を見に行くとするか、本当に物騒な話なら町に入れる訳にはいかねえ」
ナジナさんの言葉に戦えるウォズマさんとシルフィさん、そしてガントンさんらドワーフのみんなも頷いた。
「そうと決まれば…行くとするか。どっちから来てるのかは野次馬が集まる方に行けば良いからな」
ナジナさんが立ち上がる。
「ならば大剣よ、鎧を着込んでおるお主たちは先に行くが良いぞ。もし戦となれば武装をしとらんと足手まといになる」
「んだ、俺たちも武装して追いかけるだ!。お前たずもそれで良いな!?」
ガントンさん、ゴントンさんの二人の棟梁が四人のお弟子さんである四人のドワーフも『おう』と声を上げて応じた。ガントンさんを初めとして彼らは職人として仕事をしていたから今は武装をしていない。いったん家の中に戻り鎧や武器を身に着けるのだろう。すぐに家の中に向かった。
「よし、行くぞ」
「ああ」
ナジナさんの声に相棒のウォズマさんが応じた。彼らはいつものように鎧に武器を身に着けている。
「私も鎧を着てきましょう…、ゲンタさんから頂いたブラァタの鎧を…」
「それが良いだろうね。もし戦となれば鎧の有無が生死を分かつかも知れない。何よりあの鎧は軽いが、その堅牢さは鉄にも劣らない。何よりシルフィ嬢は剣だけてなく魔法も使える、あらゆる場面で対応出来るだろうからな。しっかり身を固めて来てくれればこれほど心強い存在はない」
ウォズマさんがシルフィさんの考えに同意した。
「ゲンタさん…」
シルフィさんがこちらを振り向いて僕の名を呼んだ。
「すぐに戻ります、あなたの隣に。どうか…、御無事で」
彼女は冒険者ギルドの職員、しかし同時に現役冒険者でもある。それも『迅雷』の二つ名を持つ凄腕の…。有事の際には戦う必要が有るのかも知れない。
「分かりました。待ってます」
まだ話したい事がある、シルフィさんはそんな様子をしていた。それは僕も同じ。だが、行かなきゃいけないんだろう…戦いに。だから僕が引き止める訳にはいかない。応じた僕をシルフィさんは強く見つめ…、次の瞬間にはその姿を消した。短距離瞬間移動を使ってギルドに向かったのだろう。
「そうと決まれば俺たちは急ごうぜ。相手が何者か詳しい事は分からんが町が急襲されるかも知れねえ。そうなったら面倒だ、町に入れないように持ちこたえてガントンたちが来るのを待とう」
「カタリナ、アリス、行ってくるよ。帰りを待っていてくれ」
そう言うとナジナさんとウォズマさんが駆け出した。
「マオンさん、僕はナジナさんたちを追います」
僕にはカグヤたち四人の精霊もいてくれる。力になってくれるかも知れない。
「分かったよ、こっちの事は儂に任せな。カタリナ、アリスの嬢ちゃんはここにお残り。この家はガントンたちドワーフやゴロナーゴ親分たちの手で作られた家だ、頑丈だよ。ここでみんなが無事に帰ってくるのを待とうじゃないか。さあ、こっちへ…」
そう言ってマオンさんは二人を家に招き入れる。それを横目に僕は駆け出した。
「ゲンタ!」
声がかけられ僕は駆け出した足を止めた、声の主はアリスちゃんだ。僕は思わず足を止めた。
「行ってくるね」
僕はそう応じて小さくなりつつあるナジナさん、ウォズマさんの背中を追い始めた。
いかがでしたでしょうか?
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次回予告。
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ミーンの町に魔族がやってくる。
その意図は?ナジナたちを追いかけゲンタがそこで見たものとは…。
次回、『騎士たちの悪手』。
お楽しみに。




