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第405話 吹っ飛んだフィロスさんが帰ってきた


 ずどおおおぉぉぉんっ!!!


 シルフィさんが凄い魔法を使ってフィロスさんを吹っ飛ばしてしばらくするととんでもない轟音と共に激しい振動に見舞われる。


「な、なんだっ!?」


「あ、戻ってきた」


 戸惑う僕をよそにロヒューメさんが平然と言った。


「戻ってきた?」


「うん、吹っ飛んだお姉ちゃんが戻ってきたんだよ。…世界を一周して」


「え…?」


……………。


………。


…。


 塔から出てみるとすぐ近くに大きなクレーターが出来ていた。そこには…。


「ふう…。とっさにいつかくる結婚式のために50年前から用意していた花嫁用ベールをかぶらなかったら即死だった…」


 なぜか花嫁姿になったフィロスさんがクレーターの底、ど真ん中で呟いている。


「お姉ちゃん、相手もまだ決まってないのにもう用意してたんだ…」


「それも50年前から…」


「能力は申し分ないし、経済力もあるし」


「容姿だって良いのに…」


「それでいまだに独身とは、いささか気になりますねえ」


 セフィラさんたちが小さく呟いている。


「…あの」


「なんですか、ゲンタさん?」


「どうしてみなさん、そんなに冷静なんです?フィロスさん、世界一周も吹っ飛んだのに…」


「ああ、フィロスお姉ちゃんならなんとかすると思って」


「へ?」


「お姉ちゃんの魔法技術があれば滅多な事にはならないと思ったの」


「おそらくあの花嫁衣装に封じていた魔法の力を解き放ったのでしょう。それで全くの無傷に…」


「それはシルフィちゃんも一緒ね。ずっと使わないでいた精霊の力を解き放ったんだから。…そうでなかったら私は吹っ飛んでないですよ、それなりに魔法に対する抵抗力がありますから」


 よっこらしょ、フィロスさんがクレーターからよじ登りながら言った。


「この花嫁衣装には五十年かけて魔法を付与してきました。それで世界一周(ひとまわり)しても無事だったんです。衝撃防御に風圧耐性、もちろん単純な防御力も…、私には傑出した精霊魔法の才能はありませんが古代魔法なら自信があります。その一系統である付与魔法(エンチャント)の力を解放したのです」


「一瞬で解放?それってどういう事なんですか?」


 僕の質問にロヒューメさんが応じた。


「えーと、本来なら魔法の力が込められた品物は壊れない限りずっと使えるでしょ?」


「あ、はい」


「でね、フィロスお姉ちゃんは自分で魔力をこめた効果を長い間発揮する代わりに一瞬でその力を解き放たせたの。だから効力は短時間しか()たないけど凄い力を発揮したの」


「そうなんですね」


「あとシルフィお姉ちゃんも似たような感じで…。精霊魔法を使える術師は親愛精霊といって特に相性の良い精霊がいる場合があるの。シルフィお姉ちゃんなら光と風ね。精霊魔法の使い手であるお姉ちゃんは日頃から魔力をその二人の精霊に魔力を預けていたの。そうするといざという時に精霊は本来の実力以上に力を増すの。だから世界一周分吹っ飛ばすような凄い威力になったの」


「へ、へえ…」


 せ、世界一周吹っ飛ばすって…普通死んじゃうんじゃない?死体も残らないんじゃ…。


「浮気したらダメだよ、ゲンタさん。シルフィお姉ちゃん、きっと怒るから…」


「は、はい」


 ロヒューメさんの言葉に軽い戦慄を覚えながら僕は頷くのだった。




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