表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

395/750

第392話 閑話 グビグビグビグビグビッグビ♪


 タイトルなんですが、


 アニメ一休さんのオープニングテーマをイメージして口ずさんでいただければ幸いです(笑)


 ナタダ子爵邸で開かれる夜会(パーティ)の前夜…。


 ミーンの町にある一番高級な宿に泊まる者がいた。ルーグランカスター伯爵家令嬢アザレア、その人である。


「ゲエップゥゥ…」


 肉の匂いたっぷりの大きなゲップを吐いてアザレアはテーブルの上のすっかり綺麗になった皿の上にナイフとフォークを置いた。


「ブフゥゥ、森鹿(フォレストディアー)が手に入らなかったからせめて巨大猪(ジャイアントボア)を…と思ったのですがそれも手に入りませんでしたわね…」


 ナプキンで口元を(ぬぐ)いながらアザレアは残念ですわと呟く。代わりに…と肉質柔らかく匂いも薄い(ワイルドボア)の幼いものを手に入れて宿の厨房の者に丸焼きにさせた。お付きの執事と侍女に毒味をさせた後、残った全てを腹に収めた。肉、肉、パン、肉、肉、肉、肉、パン、肉…思い出したようにたまにパンを食べる以外は肉だけ食べ続けた。


 テーブルの端の皿とは違う器にはアザレアが(むさぼ)り食べた猪の骨が無造作に置かれている。これもまた幼いとは言え猪一頭をほとんど一人で完食した証であった。


「姫様、いよいよ明晩はナタダ子爵邸での夜会にござりますれば…。そろそろアレのご準備を…」


 遠慮がちに執事が声をかけてきた。


「ブッフゥ?まだ良いんではなくって?このまま満腹の喜びに浸っていたくってよ…。ブッフゥ…、ブワァァァ〜…」


 アザレアは満足そうな様子で目を細め、一つ大きな欠伸(あくび)をした。


「あ、あ、あ!姫様、またそうやって!以前そのまま眠ってしまわれて痩身(スリム)ポーションを飲み忘れた事があったではありませんか」


 そのまま眠ってしまいそうなアザレアに侍女が慌てた様子で声をかけた。


「そうだったかしら、ブフゥゥ?」


「はい、それで痩身するのに間に合わず泣く泣く夜会(パーティ)に参加するのを諦めたではありませんか…。ほら、商都(カミガタ)のマンタウロ商会の時に…」


「ブッフゥ!?思い出しましたわ!たしかトサッポンの魚を丸々干したものを(きょう)じた…」


「左様にございます。生ではない、かと言ってカチカチになった干魚(ほしざかな)でもない…、頭から尻尾まで丸ごと食べられると話題になった…」


「そうでしたわ!ナイフもフォークも使わず両手に持ってかぶりつく者が続出したという…、それを聞いた時には参加出来なかった事をあれほど悔やんだ事はありませんでしたわッ!」


此度(こたび)山間(やまあい)の子爵領にてどれほどのものが出せるかは存じませんが、味はともかく見た事がないものが出るやも知れませぬぞ。…さあさあ姫様、ご準備を」


 そう言って執事は五十本は軽く超えるであろうかという呪いの…、痩身(スリム)ポーションと呼んでいるそれをテーブルに置いていく。先程まであった猪を平らげた食器はいつの間にか侍女の手によって片付けられていた。次から次へとアザレアが料理を平らげるゆえ身についた流れるような配膳の技術であった。


「五十本…いえ六十ほどですわね…ブフッ!!半刻(はんとき)(約一時間)ほどで飲み干してやりますわ。いざ!」


 アザレアは両手にポーションビンを持って次から次へと一気飲み。


 グビグビ、かちゃん…、グビグビ、かちゃん…。


 飲み干す(たび)に鳴らす喉の音、空になったポーション瓶を置く音が交互に響く。アザレアの手は止まらない。


 宣言通り半刻もしないうちにアザレアは全ての衰弱剤(ポーション・オブ・エナジードレインを)を飲み干した。まさに見事な飲みっぷりであった。


「ふう…、やってやりましたわ。どうかしら?」


 アザレアは椅子から立ち上がり、その姿を執事や侍女に見せた。ブカブカになった…、まるで幼児が大人の服を着たかのように不釣り合いな様相である。しかしながら…。


「お美しい、お美しゅうございますぞ、姫様!」

「はい、まさに大輪の花のようでございます!」


 執事と侍女がアザレアを褒めちぎる。だがそれは決して言い過ぎには当たらない。そこには見事な巻髪の…華やかな令嬢そのものが立っていた。


「当然ですわ!わたくし地位(ステータス)(ウェルス)美貌(ビューティ)、全て備えておりますのよ!完璧、まさに完璧なのがわたくしですの!」


 自信満々の口調、さらには手の甲を口元に当て高笑い、…ある意味で完璧に仕上がったキャラクターだった。


「さぁて、明日はどうなりますかしら?まぁた、わたくしが主役になってしまうんではなくって?まあせいぜい踏み台になっていただきますわよ、モネさん」


 アザレアはニヤリと笑った。


「それでは姫様、続けてお(ぐし)を整えておきましょう」


「明日で良いのではなくて?そろそろ横になりたいですわ。寝ながら焼菓子(クッキー)でも食べませんと…、馬車から一樽(ひとたる)持ってきて頂戴(ちょうだい)


「姫様、それでは明日の朝には元通りにございますぞ…」


 執事がため息を押し殺しながら諫め、侍女は何も言わずアザレアの髪に櫛を入れる。夜会はあと一つ寝ると訪れる、静かな夜であった。


 いかがでしたでしょうか?


 作者のモチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどを感想にお寄せいただけたら嬉しいです。レビューもお待ちしています。よろしくお願いします。


 モチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。


 □ □ □ □  □ □ □ □  □ □ □ □


 次回予告。


 □ □ □ □  □ □ □ □  □ □ □ □


 次回、ゲンタは決意を新たに…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] タイトルを一休さんのオープニングで口ずさむ、思わずやってしまいました。しかし一休さんのオープニングを口ずさめるだけで年がバレますね。次が楽しみですし、此れからも投稿頑張って下さい。
[一言] めちゃくちゃデブが一挙に痩せるとかやせ薬やばすぎですね。 それにしても、もしも存在したらこんな薬は欲しいですな。きっと女性とか太り気味の男性とか欲しがる人が沢山いそうですな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ