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第378話 本妻?


 ミミさんたちとのデートの翌日…。


 冒険者ギルド内、早朝のパン販売を終えた僕たちはいつものように販売後の朝食を摂っていた。


「そう言えば…、ゲンタさん。また新しくゲンタさんの護衛に名乗りを上げた人たちがいますよぉ」


「新しく名乗りを上げた人ですか?誰だろう」


 フェミさんとは向かい合う形でテーブルについていた僕、手を伸ばしてそれを受け取る。依頼票代わりにも使われる薄い木の板を僕に手渡しながらフェミさんが声をかけてきた。文字を書く紙は非常に高価である。羊皮紙(ようひし)なんて物もあるが、これは文字通り羊の…あるいはその他の動物の皮を使う。


 もっともこの羊皮紙、とても硬い。少なくともレポート用紙みたいな柔らかい物ではない。動物の皮を防腐処理して(ノリ)のようなものを付け、専門の器具を使い引き伸ばす。その為、とても袖を通せないバリバリに糊が効き過ぎたワイシャツのような感じになる。


 しかし、動物などの皮を使う事になるのでこれもまた高価。そこで出番が来るのが木材。その切り落としと言うか、端材(はざい)を適当な大きさにしたのがこの薄い木版(もくはん)。これを何か書く際に使う。僕はその木板に書かれた内容に目を通していく。


「えーと、なになに…」


 僕の護衛に名乗りを上げたのはナタダ子爵家で働く女官の方たちであった。最低限の自衛手段くらいは心得ているらしい。だが、いつ何時危険が発生するか分からない中でそれでは少々心許ない。だが、特筆すべきはそこではない。得意とする活動内容である。


「貴族家で仕える女官として身の回りのお世話には自信があります。いわゆる家事一般をお任せいただく事が出来ます…と。お声がかかった際にはその日が非番の者が参りますが、お気に召したものがいれば指名していただければ出仕を交代して参ります」


 うーん、これはあれか。出張家事サービスと言うヤツだな。


「なお、報酬といたしましては金銭ではなく入浴と『しゃんぷー』と『ぼでぃそーぷ』を提供していただければと思います」


「あ〜、分かりますぅ〜」


 フェミさんが何やら頷いている。


「先日、奥方様がマオンさんのお家でお風呂から出てきたら凄くお美しくなってて…。自分もそうなりたいって女官の人たちが思ったんだろうねぇ〜」


「そうだろうねえ。髪がツヤツヤ、肌もツルツル。こんな良い物は女ならほっとかないよ」


 フェミさんの言葉にマオンさんも頷いている。なるほどねえ、そういうものなんだ。


「えっと、まだ続きがある…。追伸、ゲンタさんが入浴する際に御用命とあればお背中をお流しいたします」


「かあ〜っ!!こりゃアレだぜ、ダンナ!風呂で背中を流す事にかこつけてダンナを狙っていやがるんだ。なにしろダンナは稼いでる、それに色々凄い物を扱う商人。そこに食い込みたいんだぜ!」


 今朝は僕の隣に座っているマニィさんが木板を覗き込みながら言った。


 ヴゥンッ!!


 その時、空気が揺れた。


 とん…。


 優しく僕の左肩に手が置かれた。そして今度は後ろから右手が伸びてきて読んでいた木板に触れた。


「必要ありません」


「ッ!!?し、シルフィさんッ!?」


 僕のすぐ横でシルフィさんの声、そしてかすかに右耳に何かがかする程度に触れた。それがシルフィさんのエルフ族特有の長い耳である事を理解するのに時間はかからなかった。


「ゲンタさん」


 僕の耳のすぐ横にシルフィさんの顔がある、そう思うと心臓が高鳴る。同時にプレッシャーのようなものも感じて鼓動をより早くする。


「は、はいッ!!シルフィさん!」


 咄嗟に僕は木板から手を離したが木板は落下しない。既にシルフィさんが掴んでいる。


「これは…受付でお預かりします。身の回りのお世話…、必要とあらば私が…」


 そう言うとシルフィさんは僕から離れ受付に歩いていく…。


「軽く…キレてンな。シルフィの姉御…」


 マニィさんが呟く。


「だよね〜、エルフは千年とも言われる寿命があって〜。エルフ同士の結婚だと他に妻を娶らない一組だけの結婚で何百年って愛し続ける事もあるんでしょ?だから…」


「こりゃダンナが軽い気持ちで浮気なんかしたら…」


 フェミさんに応じて何だか怖い事を言い出したマニィさん。


「八つ裂きじゃ足りないかも…」


「フィロスさん!?」


 いつの間にかシルフィさんたちのお姉さん格であるフィロスさん(317歳)が近くにいた。


「ねえ、ゲンタさん?やっぱり私と最初に結婚を…。そうすればエルフの二人目の妻は一人目より若ければ良いからシルフィちゃんとも結婚出来るから…。ね?だから私と結婚…」


 ヴゥンッ!!


「駄目です。私が最初です」


「うわあああん!」


 うーん、フィロスさんには強く生きて欲しい…。


「コホン…。ゲンタさん」


「はい」


「今日、どうしましょうか?」


「また森に散策に行きましょう」


 そう、今日はシルフィさんとのデートの日。


 森の民とも言われるエルフ族のシルフィさん。デートにはピクニックみたいな感じが良いかなと考えたのだ。


「ダンナ。今日は暑くなりそうだから森の中ってのは良いかも知れねーな」


 お、それは良い。新作の手作りスイーツを試すには絶好の機会かも知れないぞ…、僕はそう思いながらこれからの事を考えるのだった。




 いかがでしたでしょうか?


 作者のモチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどを感想にお寄せいただけたら嬉しいです。レビューもお待ちしています。よろしくお願いします。


 モチベーションアップの為、いいねや評価、応援メッセージなどいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。


 □ □ □ □  □ □ □ □  □ □ □ □


 次回予告。


 □ □ □ □  □ □ □ □  □ □ □ □


 ゲンタはシルフィと森へ…。


 そしてゲンタは凍りつくような体験を…?


 次回、異世界産物記。


 『フリーズ・ガール』


 お楽しみに。

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― 新着の感想 ―
[一言] 続きが読みたいです。更新を楽しみにしてます。
[良い点] 更新お疲れ様です(*´艸`)
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