第368話 反射炉。
「姫様、これは反射炉と申しまして…」
僕はモネ様に説明を始めた。朝から始めた建設はガントンさんたちドワーフの皆さんが鍛治を行うマオンさん宅の地下から伸びる煙突であった。しかし、それは内から外に煙を排出し、外から内へ燃焼に必要な酸素を取り込むただの煙突としての機能だけではない。
「鉄をはじめとして鉱石から金属を産出する為には凄まじい熱を要します。その為、効率的に熱を得る事が肝要となります」
「そこで坊やが考案したのがコレという訳なのじゃ。地下には既に鉱石から金属を得る為の炉はあるんじゃがの、それを改良する為にこれを新たに加えたんじゃい」
「コイツはスゴイんだべ!中で熱が反射して炉の中をより高温にするだ!すると鉄よりも融かすのに高い火力サ必要になる金属も労せずして出来るだ!」
ガントンさんゴントンさんがその有用性を力説する。
「もっとも僕が話したのはあくまで構造の入り口に過ぎません。実際の中身に関してはドワーフ族の皆さんが小型の模型を作り、試行錯誤してこの構造に行き着いたのでございます。最も効率良くさらには高温にも耐え得る素材も考えて…」
僕は男性アイドルが無人島で色々と開拓するテレビ番組で見た反射炉をこの異世界でも導入出来ないかと提案したところ、ドワーフの皆さんが面白いと食いついてきたのだ。
「これなら高い火力を出せる石炭を使わずとも木炭の火力だけでも鉄を産する事も可能じゃ。石炭は産出れる場所が限られておるからの。だが、これなら高温を出しやすい多少の脂っ気を含む木炭を使えば十分に鉄を精錬出来る。幸いこの町の周りにはそんな樹木が多い森林が広がっておる。燃料には事欠くまい」
「それだけじゃないんですネェ、実はゲンタ氏は鉄を融かす為に産んだ熱を他の用途にも使えるように工夫したんですヨ!」
機巧を扱うのを好むハカセさんが話に加わる。
「他にも何かあるんですか?」
モネ様が問いかけた。
「いやあ、あんな発想があるなんて…。ゲンタ氏には毎回驚かされますヨ。あれならきっと腐女子…じゃなかった婦女子の皆さんに喜ばれるんじゃないですかネェ…」
「そ、それは一体…?」
「うーん、それなら試運転といきますか」
僕はモネ様にそう声をかけ席から立ち上がる。
「実際にはガントンさんたちが炉に火を入れるようになってからと思いましたが…、構いませんか?」
「構わんぞい、模型では上手く行ったが実際にどうなるかこの目で見てみたいからの」
ガントンさんも頷いている。
「ありがとうございます。では、やってみましょう。ホムラ、セラ、ちょっと力を貸して」
僕は火と水、二人の精霊に声をかけた。
炉を高火力が出るように改良したゲンタ。しかし、それだけではなくさらに工夫があるらしい。果たしてその工夫とは?
次回、異世界産物記。
『エネルギーを余すところなく』
次回の話も…御奉仕、御奉仕ィィ!